十住毘婆沙論 (じゅうじゅうびばしゃろん )  関連語句 十地。易行道。難行道。 
 十七巻。竜樹(150〜250頃)の著と伝えられる。後秦の鳩摩羅什訳。十住は十地の古い訳語で、毘婆沙とは注釈の意。
 『華厳経』十地品(十地経)に説かれている菩薩の十地のうち、初地(歓喜地)と二地(離垢地)を注解したもの。三十五品からなり、序品は総論にあたり、十地の意義や三乗の区別などが説かれている。入初地品第二から略行品第二十七までに初地が釈され、初地の内容と能入のための願行などが明かされている。分別二地業道品第二十八からは第二地が釈され、菩薩の十善道や戒行について述べられている。『十地経』および十地説の注釈としては未完成で重視されないが、第九の易行品に難易二行の立て分けが示されており、曇鸞が「浄土論注」にその文を引用してから、易行道を重んじる浄土教者に重要視されるようになった。
 『大田殿女房御返事』〔28353〕などに記名されて、その文が引かれている。