№14 煙草盆
煙草は『貞丈雑記』に「寛永年中(1624~44)、南蛮国より渡りしと也」とあり、最初に煙草盆を茶道具として用いたのは宗旦の時代となっています。
以前、茶会の会記に利休形煙草盆と書いてあるのを見ましたが利休形の煙草盆というものは年代的に考えても存在しません。
正式の茶事では、寄付・腰掛け・薄茶席に各々の品質や形状の異なったものを使用します。
現在では実際には使用しませんが正客の位置を示す役割もあります。
唐物には蒟醤(きんま)・青貝・漆器・篭、また和物は唐木・漆器・木地・一閑張・篭などがあります。形もさまざまで、大別して手付きと手無しとに分けられます。
煙草盆の好み物は大名茶人に多く、遠州・石州・宗和・不昧等の好みが多く遺っており、茶人好みとしては簡素な木地物が多い。
大名好みに飾り金具、塗蒔絵、透し彫り、唐木彫り等手の込んだ細工物が多いのに対して茶人好みは桐や桑等の木地で形も簡単なものが多いのも好対照です。
◎ 手付き煙草盆
① 宗旦好 ~一閑釣瓶煙草盆。一閑手付き。一閑丸煙草盆。木瓜形。椋煙草盆。
② 如心斎好~蝋色塗の鯨手で火入は染付・雲草・水玉・冠手などに限る。
田楽箱煙草盆。
③ 碌々斎好~桶に手を付けたような杉木地丸形。
④ 仙叟好 ~底が二重の桑煙草盆。 手付き山道。
⑤ 常叟好 ~引き出しが煙草入れになっている掻合引き出し付き。
⑥ 六閑斎好~溜塗は松煙草盆。
⑦ 又ミョウ斎好~桐木地のツボツボ透しで藤蔓の手付き。
⑧ 玄々斎好~七宝透し桑鯨手。
⑨ 薮内家 ~唐物籐組篭。
⑩ 宗全好 ~一閑茶筅箱・片木目小判形で竹手付き。
⑪ 堀内仙鶴好~朱塗で内黒の鯨手付きで引き出し付き。
◎ 手無し煙草盆
① 宗旦好 ~行李蓋莨盆・舟形は行李蓋に類似し、真塗のほかに、縁を黒、底を溜塗・松木地長煙草盆。
② 六閑斎好~くるみ足付き行李蓋。
③ 玄々斎・淡々斎好~松木地長煙草盆。
④ 薮内家 ~唐物籐組篭。
⑤ 石州好 ~櫛形莨盆は、粒足付きの一閑。
⑥ 光悦好 ~底の四方を斜めに切り落とした長煙草盆。
⑦ 松花堂好~玉林院形は細長く簡素なもの。
種箱煙草盆は、側面が四つ間格子になっている。
⑧ 不昧好 ~桐木地曲煙草盆。 身の左右の透しが瓢透しのもの。
⑨ 覚々斎好~一閑潤み朱塗は、上下に糸巻きの透しで左右の繰りがない。
⑩ 如心斎好~真塗。 青漆爪紅。
⑪ 惺斎好 ~秋田春慶で仕上げ、寸法は覚々斎好と同じ。
⑫ 石州好 ~桑木地に雲錦透し。 桐木地に七宝透し、竹縁を付けたもの。
⑬ 遠州好 ~桑木地。 七宝透し。
⑭ 不昧好 ~左右に瓢の透しを有する。
◎ 手付きと手無しの中間
① 薮内家 ~唐銅の壷形火入が約束の鞍形煙草盆。
② 不白好 ~青漆爪紅で長方形の左右に香狭間風の透しのある。
③ 松花堂好~不白の好みと同形で溜塗。
☆鯨…鯨の鬚で、歯のないナガスクジラ・セミクジラ等の口の中に生える櫛のような繊維
質の角質板である。
参考文献
『角川茶道大事典』 角川書店
千宗左 著「茶の湯表千家」 主婦の友社
野村瑞典 著「茶道具の基礎知識」光村推古書院
堀内宗完 著 『茶の湯聚話』 講談社
《原色茶道大辞典》 淡交社
「喫茶去」表紙に戻る