88 名物裂
1.金襴・銀欄
金・銀箔糸を織り入れて、金色に輝く文様を織りあげた金襴は、その豪奢な特色から多様な名物裂の中で最も尊ばれ最高の位置にある。
中国では織金とよばれ、ほぼ宋代に織り始められたと考えられ日本へは禅僧の伝法衣として渡来し、名品の数々が伝えられています。
2.緞子
緞子は金襴に次いで注目される裂地で金襴とは対照的に深く沈む、落ちついた風合いと優しくやわらかな趣きが尊ばれる。
先染めされた経糸(たていと)・緯糸(ぬきいと)を用い、本来は繻子組織での、表・裏組織によって文様を織ります。
3.錦
錦は複数の色目の経・緯糸で文様を織りあらわしたもので、金襴とは異質の重厚な豪奢さで、また織物の代表ともされる。
古く漢代には経糸で文様をあらわし(経錦)、ほぼ唐代には緯糸で文様を織る方法(緯錦)が西域より伝えられて今日に至っている。
4.風通
風通は二重織に分類される。 例えば、経糸に白、紺を交互に並べ、緯糸も同様に白、紺を交互とし、白経は白緯と、紺経は紺緯とのみ組織する。
表に白が表れているときには裏に紺の模様が見えるという、表裏で全く色替わりとなる織物。
5.間道
名物裂で、縞・段・格子などの特色ある文様の裂地を間道とよび、広東・漢東、その他各種の字をあてる。
その産地については諸説があります。
6.モール
インド、ペルシャ渡来の特色ある織物。 いわゆるモール糸が用いられている。
モール糸は絹糸を芯として、金銀の薄板を細く裁った截金(きりかね)を、全く自由に巻きつけたもの。
なおモールは、インド、ムガール王朝が訛って「モール」になったと考えられている。
7.更紗
インド、東南アジア渡来の文様染裂を更紗とよぶ。
蝋防染を駆使した藍や茜の、時には金を加えた華やかな裂地が、日本でも大いに好まれ、むしろ日本から意匠の好みを注文した場合もあったと考えられている。
参考
「名物裂」 切畑健 著 京都書院美術双書 日本の染織19