2003年のコアジサシの個体数変動
桑原和之(千葉県立中央博物館)・箕輪義隆(日本鳥類保護連盟)・田邊以久雄(千葉市在住)・奴賀俊光(千葉大学海洋バイオシステム研究センター)・茂田良光(山階鳥類研究所)
水辺の鳥を守るには1.繁殖地,2.渡りの中継地,3.越冬地の保護が必要である。1.2.3の保護を促進するためにも、個体数の推定、渡りの中継地や越冬地の特定の科学的な調査が必要である。コアジサシを保護するための基礎調査として、鹿島灘から九十九里浜、利根川、東京湾岸約50カ所で個体数の調査を行なった。調査では、成鳥、幼羽、第1回冬羽など齢を羽色により識別できる個体は、できる限り識別して個別に計数した。これらの2003年の結果、特に千葉市内のコアジサシの個体数変動について報告する。
2003年に東京湾岸で確認された営巣地は、営巣数は少なく、小規模のコロニーで個体数も多くなかった。千葉市内で確認されたコロニーの中で、美浜区検見川の浜、中央区日石三菱千葉油槽所跡地の2カ所で幼鳥が確認された。中央区新浜リサイクルセンター、若葉で産卵は確認されたが、幼鳥にまで育たなかった。
千葉市美浜区検見川の浜で5月26日に産卵が確認された。コロニー保護のため、千葉県自然保護課、千葉県港湾事務所と千葉市環境局自然保護係・斉藤久芳氏が協議をした。そして、簡単な立ち入り禁止区域を設置した。簡単な立ち入り禁止区域の表示を行い、立ち入り制限のロープ柵を設置した効果があり、個体数が次第に増加した。それでも検見川の浜では、7月1日には、約150羽が記録されたにすぎなかったが、7月中旬から塒が形成され個体数が増加した。7月中旬には、2500羽から3000羽近くのコアジサシが塒をとり、最も多いときには6000羽近く、最大5,800羽が7月23日に記録された。さらに、検見川の浜では、飯岡町飯岡漁港埋立地で捕獲し脚に青色レッグフラッグを標識し放鳥された幼鳥が,7月に数回観察された。7月3日に1羽、9日に6羽、19日に4羽がみられ、8月1日にみられた1羽が青色レッグフラッグ標識個体の終認となった。
日石三菱千葉油槽所跡地では,約7000羽が7月24日に、豊砂では約4380羽が8月12日に、幕張メッセ大駐車場では,約6000羽が8月29日に塒をとった。幕張メッセ大駐車場では,36羽が9月18日22:30に塒をとったという観察が、終認となった。このように、隣接した塒でも検見川の浜、中央区日石跡地、美浜区豊砂などでは、個体数のピークは異なっていた。2003年は、東京湾岸では9月になると、どの地域でも個体数が大きく減少した。コアジサシに変わり、アジサシの個体数が増加した。印旛沼では、9月になり大きく個体数が増加した。北部調整地で6月19日に17羽、7月25日に59羽、8月30日に326羽、9月6日には、489羽のコアジサシが確認された。
コアジサシは、営巣置のコロニーを塒として使うようになる。この群れがさらにどのように移動したかは確認できなかったが、秋の渡りの時期にはコアジサシが東京湾に次第に集まってくることは例年のように観察された。現在、三番瀬や小櫃川河口などの大きな干潟の近くに1,000羽以上のコアジサシが集まることは、確認されているが、どの地域に集まるかは年によって異なっている。他のコロニーから移動してきた個体が、東京湾岸に渡り、中継地として利用されたことも確認された。千葉市内の海岸部が渡りの中継地として極めて重要な地域であると結論できた。
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