2003年、千葉県・茨城県におけるコアジサシの繁殖状況

桑原和之・箕輪義隆・田邊以久雄・奴賀俊光・方波見守一・佐藤達夫・早川雅晴・茂田良光

コアジサシの繁殖地やそのコロニーの大きさは、年により異なる。コアジサシの繁殖地が長期にわたり継続している地域は、予想以上に少ない。環境省が発行したレッドデータブック(環境省2002)に記述されている以上に、種の存続が厳しい条件下にあるといえる。繁殖地の位置もコロニーサイズも毎年のように変化しており、正確に個体数がまとめられ報告されていない。したがって、国内への飛来数は不明といってもよい。2003年に、福島県から関東にかける海岸で繁殖期に調査を行ったので報告する。
繁殖期である4月から8月にかけ海岸で10日に1度、現地調査を行うように心がけ、7月上旬の繁殖の確認を行った。また、現地調査をしなかった調査地からは、観察記録を提供していただき、その記録を私信としてまとめた。調査の際には、調査者の繁殖に対する悪影響をさけるため、1コロニーの調査を1時間以内で終了するようにした。したがって、営巣数や雛数が確認できなかったコロニーでは、抱卵している成鳥と雛の個体数を数えた。また、幼羽、第1回冬羽など齢を羽色により識別できる個体は、できる限り識別して個別に数えた。
最も北のコロニーは、いわき市夏井川河口の砂浜で、鹿島灘では、砂浜で3箇所、埋立地では4箇所にコロニーが確認された。鹿島灘の最も北のコロニーは、常陸那珂港埋立地で、約200羽のコアジサシが確認された。鹿島港でも繁殖しており、幼羽の個体が観察された。波崎町利根川河口からやや内陸の利根川周辺、茨城県潮来市潮来の造成地でもコロニーが確認された。千葉県九十九里海岸では、砂浜海岸の車両乗り入れ規制による保護対策の効果が現れ、小規模なコロニーが各地で観察された。飯岡漁港地先埋立地と白子町剃金海岸のコロニーの規模が大きかった。剃金海岸での繁殖数は国内の自然海岸で最大規模であったが、その繁殖の実態は把握できなかった。
東京湾岸では、1,000羽以上が年繁殖する場所は少なく、大田区森ケ崎水処理センターの1カ所だけであった。2003年に東京湾岸で確認された営巣地は、営巣数は少なく、小規模のコロニーであった。中央防波堤近くの埋立地では、約100巣が繁殖期に確認されている(田久保 私信)。千葉市内では美浜区検見川の浜、美浜区若葉の2カ所、中央区日石三菱千葉油槽所跡地、中央区新浜リサイクルセンター地先千葉市の鳥コアジサシ暫定繁殖地の5カ所で営巣した。営巣地のうち幼鳥が確認されたコロニーは、検見川の浜だけであった。このコロニーは、人の立ち入りが簡単にできるため、千葉市が簡単な立ち入り禁止区域を設け、繁殖期間、本種を積極的に行政が保護した。検見川の浜、中央区日石跡地、美浜区豊砂などでは、塒が形成された。中央区新浜リサイクルセンター、若葉で産卵は確認されたが、幼鳥にまで育たなかった。浦安市明海埋立地でも、雛が記録されただけにすぎなかった。
千葉市内でのコロニーの規模は、年を追うごとに小規模化していた。繁殖地であった地面の基底面などの物理的な環境に大きな変化がみられなかったとしても、1巣も確認されなかったこともあった。効果的にコアジサシのコロニーの繁殖地をどのように確保したらよいのであろうか?効果的な保護対策を策定するためにも調査が必要である。

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