ミユビシギの渡り
中川 富男(日本鳥類標識協会)
高松海岸(石川県羽咋郡押水町大海川河口と河北郡内灘町大根布河北潟放水路間 約8km)は古くより石川県最大のシギ・チドリ類の渡来地である。1997年環境庁(現環境省)シギ・チドリ類渡来湿地目録で重要渡来地の抽出基準を満たした渡来地に選ばれている。(全国12ヶ所)
高松海岸でミユビシギは8月から翌年5月にかけて観察することができ,夏,早い個体は7月下旬に渡って来ることもある。冬期も400〜500羽が越冬している。1997年頃より,オレンジ色のフラッグを付けたミユビシギが毎年観察されるようになり,2001年9月29日オーストラリアのリング,フラッグ付きのミユビシギを捕獲した。2001年3月25日オーストラリア・ビクトリア州で放鳥されたものだった。また,2001年9月25日高松海岸で放鳥したミユビシギ成鳥が2002年2月16日オーストラリア・ビクトリア州で再捕獲されている。
捕獲したミユビシギ成鳥の初列風切は,換羽中の個体と換羽の見られない個体に分かれており,換羽中の個体は越冬,換羽無しの個体がオーストラリアへ渡ると考えられる。
近年,高松海岸では日中ミユビシギは観察できず,南へ約30km離れた手取川河口周辺で休息し,夜間高松海岸で採食する姿が観察されている。
高松海岸には甲殻類のイシカワナミノリソコエビ(ヨコエビ目)が多く生息し,多いところでは1uあたり10万尾(体長2〜9o)を超えることもある。波打ち際に生息する甲殻類は,シギ・チドリ類の重要な餌となって,シギ・チドリ類を支えている