新潟市関屋海岸におけるウグイスの渡りの様相

小松吉蔵・゚佐藤 弘・藤沢幹子・千葉 晃(日本標識協会にいがたグループ)

【はじめに】日本列島に広く分布するウグイスは身近な小鳥として古くから親しまれ、季節的移動を行うこともよく知られている。これまで日本各地で得られた標識調査の結果は本種の季節的移動性を裏付けているがまだ断片的で、渡りの全容解明には至っていない。そこで、今後の研究に資するため、1987年以来新潟市の海岸林で行なってきた14年間の標識データの中から本種に関するものを抽出・整理し、概要を報告する。これらが本州中部日本海沿岸および我が国における本種の渡りの実態を解明する一助になれば幸いである。
【調査地と方法】調査地(約100m×150m)は新潟市西海岸公園の一画(野鳥の森:北緯37°55′東経139°01′)を成すクロマツ林内にあり、ニセアカシアやエノキなどの広葉樹が混交し、人工池を伴なっている。この池の周囲にカスミ網12枚を設置し、録音テープで複数の小鳥の声を流し鳥を誘引した。悪天候の日を除き、ほぼ連日早朝から日没まで調査を行なった。便宜上、調査結果を春季(4月1日〜5月15日:45日間)および秋季(10月5日〜11月18日:45日間)に大分し、捕獲数を雌雄毎に整理・比較した。また、雄または雌が捕獲された日について、1日当たりの雄または雌の捕獲数をDCI(daily catch index)として求め、この数値を指標にして移動時期の性差を分析した。

↑調査地の新潟野鳥の森公園。周りはフェンスに囲まれている。 ↑調査網場。画面右手に12uほどの人工池があり、この池を中心に常時10〜12枚の網を開き調査している。

【結果】1988年〜2001年(14年間)の調査結果は以下のように纏められる。
春の渡りでは総計1959羽のウグイスが捕獲され、そのうち雄は810羽、雌は1149羽であった。
春の渡りでは性比が雌に偏る傾向(平均58.6 ± 6.1 %)が見られ、一方、移動時期は雄が雌より早い傾向が認められた。すなわち、雄の移動盛期は4月上旬〜下旬、雌のそれは4月中旬〜5月中旬であった。
(3)秋の渡りでは、春の数より約4倍多い総計7860羽(雄4201羽、雌3659羽)が捕獲され、移動の盛期は10月下旬から11月上旬であった。
秋の渡りでは、春に見られたような性比の偏りや移動時期の性差は認められなかった。
(5)関屋海岸に関する国内回収記録は11例あり、本種の渡りにおいて新潟海岸が北海道と近畿ないし山陰を結ぶ中継地として利用されていることが示唆された。

(写真提供:佐藤弘)

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