鳥類標識調査とは?

○どのような調査か?
 カスミ網などによって鳥類を捕獲し、個体識別用の金属リングを装着したのち放鳥する調査。リングを装着した個体が再捕獲されることによって移動の経路、生存日数などが明らかにさます。また、リング装着の際、捕獲した鳥を手にとって間近で見ることが出来るため、詳密な個体情報(「繁殖を始めているか」「換羽が始まっているか」「若鳥なのか成鳥なのか」など)を得ることも出来ます。
 なお、標識調査を行うには「(財)山階鳥類研究所」認定のライセンスおよび環境省の鳥獣捕獲許可証が必要です(カスミ網の所持、使用は法律により禁じられていますが、調査目的の場合は特別に許可されます)。

←捕獲した鳥に装着するリング。
個体番号と国名および管轄機関の名称が刻印されている(日本では"KANKYOSHO JAPAN")。
捕獲されたムギマキ♀→
(福井県丹生郡織田町織田山1級鳥類観測ステーション)。カスミ網で捕獲する対象は、このような小鳥であることが多い。

○日本における標識調査の経緯
 日本での標識調査は1924年に農商務省畜産局鳥獣調査室によって実施されたのが始まり。その後、1943年まで続けられ、計31万7千羽が放鳥されています。
 その後、戦争により中断されていましたが、1961年に再開、1971年の環境庁発足とともに、1972年、所轄も農林省から環境庁に移り、調査の規模も拡大され、全国各地に鳥類観測ステーションが設置されました。
 現在全国に60ヶ所のステーションがあり、年間約20万羽が標識、放鳥されています。福井県丹生郡織田町にある「織田山1級鳥類観測ステーション」もその一つで、ここでは春と秋に渡り鳥の調査が行われており、年間約3000羽が標識放鳥されています。

○標識調査で判ること
 標識された個体が、ある期間をおいて、またはある距離を隔てて再び捕獲される(「回収」と言います)ことによって…
☆渡りの経路やその移動時間
☆ 寿命や繁殖の開始年齢
などを解明するデータが蓄積されます。
 あるいは、捕獲し間近で見ることによって…
☆ 目視観察では識別しにくい種、あるいは観察されにくい種の確認(前者ではジシギ類、後者ではセンニュウ類など)
☆ 羽衣の詳細や各部位の計測値から、識別しにくい種や、性別・年令の識別データの集積
などが可能です。

 移動経路や寿命なんかは個体識別しないと判りえないことですよね。金属リングだけでなく、カラーリングや発信機を用いて再捕獲せずに個体識別を行い、渡りなどの調査が行われている種もあります。
 また、長期間定量的に継続すれば、年変動や季節的な変動も把握することが可能です(例えば、織田山一級ステーションにおける約20年間の調査結果が「平成8年度鳥類標識調査報告書および平成9年度鳥類標識調査報告書(山階鳥類研究所 1996および1997)に報告されおり、季節変動、年変動、種構成、年齢構成等が詳細に述べられています)。

以下に、標識調査で判ったことの例を少し。
≪長期経過後回収の例≫
オオヨシキリで11年
オオジュリンで10年
アオジで8年…などの記録がある。(渡り鳥アトラス(スズメ目編)より)
☆ちなみに大野市の神明山での標識結果では、
ヤマガラ 1991/12/19→2001/3/11(9年以上!)
シジュウカラ 1991/11/5→1995/12/28(約5年)
コゲラ 1994/7/5→1999/11/14(約5年半)…などの記録がある。

≪国内放鳥国外回収の例≫
マミチャジナイ 1994/10/25織田山→1997/1/10(報告日)フィリピン・ベンギット州(狩猟) (平成9年度の鳥類標識調査報告書より)
≪国内放鳥国内回収の例≫
アオジ 96/10/25新潟→96/10/31織田山
    96/10/29織田山→97/1/10広島  (平成8年度および9年度の鳥類標識調査報告書より)

○調査風景


これが足環を付けるための道具なのだ。
足環のほか、専用プライヤーやスケールが見える。

こんな感じで足環を装着。手が汚い・・・
装着された足環

記録用紙。これにデータを記入して、年末に山階鳥類研究所に提出する。
全国のデータは一括して同研究所の標識センターで管理される。

直線上に配置

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