待ち人来たらず・・・ならば 
 

 こちらから出向いてやろうじゃないの、というお話です。

  Magic の世界では、もう随分と以前から“DCI公認ではない気楽に取り組めるフォーマット”の推進が言われていて、しかし実際問題としてそれは実現していません。 Magic 日本総代理店であるHJがそれこそ自社出版物を挙げて取り組んだ Japan Classic ですら、結果的にはちょっとだけ一過性の話題を集めた程度で既に姿を消しています。まあ Japan Classic には、それ以前に生い立ちとか経緯に色々と問題があったのも事実のようですが。 (^^; 

 なぜそういうフォーマットが定着しないのか。その理由そのものはそんなに難しい話ではありません。ゲームという物がプレイヤー同士のコミュニケーション・ツールである以上、少数派しか遊ばないローカルルールや約束事というのは、それ自身が余程の魅力やゲームバランスの秀逸さを持っていない限りは定着しづらいのです。例えばDCI公認の Type-I.5 というフォーマットがあります。このフォーマットはパワーナインに代表される絶版カードを使いたい古参デュエリストには評判が悪く、なおかつ Standard をメインに遊んでいる最近のデュエリストにとっても決して間口が広いフォーマットとは言えません。従ってその辺りのカード資産をある程度所有していて、なおかつ Type-I ではなくあえて Type-I.5 を遊ぶ事の趣旨やメリットを理解できる人達でないと定着できないのです。実際にはこういう問題はそれこそ Standard を含むすべてのフォーマットに存在するのですが、しかし Standard や Limited はプレミアイベントや販売店開催のイベント等で話題性を確保し、どうにかプレイヤー人口を確保&維持している。言ってしまうとそういう感じです。ですから例えばそういったイベント数が今の半分とか1/3なんて開催頻度になったら、まあそれこそ数ヶ月程度でそのコミュニティはものの見事に崩壊するでしょう。間違っても Standard なんて、WoCやHJが言うような“初心者にも取っつきやすい気軽なフォーマット”なんかじゃないですから。

 でも Magic というゲームの市場を今の何倍も大きな成功市場、あるいはブームと呼べるような規模にしようと思ったら、まあ間違いなく Magic で取り組むべきフォーマットは Standard ではなく、多分基本セット限定とかブロック構築になるかと思います。それも1パックの値段を200円あるいはそれ未満に下げ、現状の何倍もの販売店を巻き込んだ初心者向けのイベントを多数企画・開催し、なおかつマンガやアニメで話題性を高める工夫をしない限り不可能だと思われます。じゃあ Magic はなぜそれをしないのか。それは多分WoC自身が今程度の Magic の市場に既に満足してしまっている。そしてリアルカードによる Magic の普及・発展を既に諦め、今はオンラインでの巻き返しを図っている。そう考えるのが多分自然です。だとすると、我々がこういう場でいくら“DCI公認ではない気楽に取り組めるフォーマット”の設立や普及を訴えても、既にそういう要求が通る可能性はほとんど無くなっている。そう考えてもそんなに発想が飛躍しているとは私には思えません。実際にここ数年 Magic には大きなフォーマットの変革が起きていないし、その部分的な変更はどんどん古いカードを使い捨てさせる方向性に進んでいる。この事がそれをまさに象徴しています。つまりもはやWoC/DCIには何も期待できない、そういう事です。いや、HJなんて今さら言うまでもないですし。 (^^; 

 じゃあ、どうすればいいのか。そこで以前から多くの方々が独自フォーマットを提唱し、実際にイベントを開いて普及に努力しています。そしてそういう動きは今もなお続いています。しかし実際問題として、それの明確な形での成功例って日本に未だ一例たりとも無いんですよ。私は過去にいくつもの独自フォーマットのイベントをやってきているのですが、結局のところ多くのデュエリストには“自分が一番”という発想しかないみたいです。僕はインベイジョンサイクルから Magic を始めたから、インベイジョンサイクル以降のカードだけが使えるフォーマットを立ち上げよう。でもあのカードは過去にひどい目に遭ってるから禁止カードにしちゃえ。もうその時点でそのフォーマットは“主催側が一番参加しやすい”という主観でしか物を見ていません。そして世の中の大部分の独自フォーマットがそういう視点からルールを決められているのです。これで多くの賛同者が得られるのか・・・まあ無理でしょうね。それと実は参加者側にも同じ事が言えます。このフォーマットは僕のカード資産ではあまり有利に戦えない。あのカードが禁止になっている、あるいは逆に禁止になっていないから嫌だ。あと自分はその世代のカードは知らないから参加しても不利だ。そういう理由だけでそのフォーマットそのものに無関心になってしまう。文句ばかりブーブー言って結局イベントには来ない。そんな人ばっかりなんですよ、特にここ最近の Magic は。それだったらせめて、その同じ口で現状の(特に初心者には極めて敷居が高いと思われる) Standard への文句をなぜ言わないのでしょうか。そんなに皆さん Standard ラブラブなんですか? (^^; 

 先日ちょっと調べてみたのですが、実は今年度の上半期に日本国内で開催されたDCI公認トーナメント数は、去年の同期の実績をかなり上回っているようです。でもどうやらこれは販売店で Magic が盛り上がって・・・という単純な、あるいは喜ばしい理由ではどうも無さそうです。それこそかなり無理な“公認トーナメント偏重”とも言うべき乱発で稼ぎ出した数字である。現状を見るとむしろそう考える方が自然な気がします。ただし少なくとも数字的には、日本のデュエリストはDCI公認トーナメントを大いに有り難がっていて、それ以外のユーザーサポートは必要としていない。そうとすら受け取れるのです。でもその反面日本での Magic の売り上げは、それこそ前年度比の半分位じゃないかと思われる程の落ち込みようが伝えられています。これが何を意味するのか。我々はDCI公認トーナメントという Magic を遊ぶ上でのほぼ唯一の支えを、ある日突然失う可能性がある、という事です。そしてこれは既に多くのデュエリスト達が経験している事です。ある日突然近所のお店が無くなった。あるいは Magic を扱わなくなった。行き付けのショップの Magic イベントが減って国産TCGのプレイヤーがデュエルルームを占領した。そういう事例は既に過去にも数多く存在しますが、今後更に増える可能性がかなり高いのです。もしそうなってあなた自身が Magic を人に勧めて自分の地域の Magic コミュニティを維持せざるを得なくなったとしたら、あなたは Magic 未経験者に自信を持って Standard を勧められますか。でもあなた自身が過去に Standard 以外のフォーマットを経験していなければ、おのずと人に勧める時にだって Standard 以外のフォーマットの紹介なんてできないですよね。

 まず何よりも自分が本当に好きなカードで Magic を遊ぶ。そしてその遊び方を自信を持って人にも勧められる。更にその勧めた相手が求めたら、できる限りのカード資産や情報を提供してサポートをする。少なくとも私の周囲のデュエリストは、そこまでの覚悟と準備を持って Magic を遊んでいます。はっきり言いますが、最近の Magic って他の流行り物のゲームみたいに、何も考えずにナアナアで取り組めるような甘い代物じゃないですよ。自分が盛り上げないと近所に Magic を売るお店が無くなるかも知れない。自分のちょっとした不用意な言動で自分の地域の Magic コミュニティを崩壊させてしまう危険性がある。今やそういう危機感を持って取り組まざるを得ない遊びなんです。 Standard に拘るならそれでもいいんです。ただそういう Magic への取り組み方が、自分に取って本当に心の底から楽しめる物なのか。 Standard 以外のフォーマットにも手を出す、あるいはいつも使ってるカードとは別のカードを使ってみる事で、更に自分に取っての Magic が面白くなる可能性はないのか。そういう視点は常に持ち続けるべきだと思います。例えば自分の手持ちの人気レアカードをすべて牛姉に両替(!?)する事で、逆に見えてくる Magic の世界というのも実はあるんですよ(爆)。我々が進めている DarkMagic というフォーマットは、そういう“ Magic に残された可能性の1つ”だというのが私個人の意見です。そりゃあ私自身は牛姉が気兼ねなく使えるフォーマットの方がいいに決まっています。 (^^; でも Magic を純粋にゲームの面白さで楽しもうと思った時に、我々には「どうも Fallen Empires 以降のカードは入れない方がいい気がするぞ。カード資産的には厳しいけどこれでやってみよう。」と思えたのです。まあ実際に遊んでみると、どうもそれが1つの正解であった事は間違いないみたいですし。

  Standard をメインとした Magic には未来はない。これは既に歴史が証明している歴とした事実です。もし Standard というフォーマットに Magic を成功させる、より多くの人達に遊んでもらいブーム化できるパワーがあるとしたら、もうとうの昔に Magic はブームになっているはずです。しかし実際には全く逆で、むしろ世界的に Magic が Standard に偏重すればするほど、それこそ世界的に Magic はその勢いを失っているのです。そして今や Magic は若年齢層デュエリストを遊戯王OCGやデュエル・マスターズに奪われ、大学生や社会人のコアユーザーは次々とオンラインに流れ始めています。しかしWoCもHJもそれに対する対策を打つ気はない。だとしたらリアルカードによる Magic を遊び続けたいと欲するデュエリストが自分で自衛するしかありません。私はそこで皆さんに DarkMagic を無理強いする気は全くありません。それじゃあ Standard 偏重で Magic を潰したWoCやHJとやってる事が変わらなくなってしまいますから。ただ「より広い世界を見て、自分の中の選択肢を増やして欲しい。」とは思います。もちろんあなた自身が現状の日本の Magic に100%満足しているのであれば、今後も Standard だけを遊び続け、2年前に買ったカードを毎年11月には押し入れに封印し、自身のプロフィールでGAMEぎゃざを愛読書の筆頭にあげる、そんな生活を続けたって一向に構わないのですから(笑)。


   

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