“お客”のお話 | ||
前から書こうと思っていた“お客”についての話です・・・と書くと、何かここのテーマとは場違いな感じもしますが、もし宜しければお付き合い下さい。 m(__)m (ちなみに書き終えてから気が付いたのですが、このエッセイは以前に書いた“お店のお話”との直接の関連性はありません。 (^^; ただ内容的には一部被ってるかと思いますが《ぉ。)
私は物販の仕事に従事している経験が長いのですが、そこで実に様々なお客(さん)と出会いましたし、今後も出会うと思います。(要するに私は今もそういう仕事をしている、という事なのですが。)この際なのではっきり言ってしまいますが、お客にも“良いお客”と“悪いお客”があります。これはあくまで私個人の見方ですが、この2つを大まかに分類してみると・・・
良いお客
- 自分が利用しているお店の販売価格にはちゃんと注意を払っている。(妥当性があると思えば買うし、無いと思えば買わない。)
- 値段/サービス/利便性等を総合的に評価してお店を選ぶ。
- 商品に対する疑問やクレームは購入時に解決する。
- 自分が利用して良かったお店/悪かったお店の情報をバランス良く周囲にフィードバックする。
- 「お客とお店は同格」という付き合い方ができている。(店員が気持ちよく接する事ができる。)
悪いお客
・・・とまあ、こんな感じでしょうか。はっきり言いますが、もし日本国内で物を買うお客がこの“悪いお客”ばかりだったら、間違いなく日本にあるお店の店員は大部分がノイローゼになって廃業してますね(爆)。あとやはり自分で物を売っている人は、基本的には良いお客である場合が多いです。ただし最近のろくな教育も受けずに店頭に出ているコンビニの店員なんかは流石に論外ですが。 :-P
- 買う気も無い癖に、口を開けば「まけろ(値引きしろ)!」しか言わない。しかも他店の値段を見て比較していない(そういう手間が面倒だから取りあえず飛び込んだ店で1円でも安く買いたいという発想しかない)場合が多い。
- 値段でしか店を評価しない。(ただしそのお店に出掛ける往復時間や交通費等はほとんど見ていない。)しかも買う際には「この店を選んでやった事に感謝しろ!(だからもう少し値引きしやがれ!)」的な横柄な態度を取る。
- 買って随分経ってからクレームを付けてくる。しかも買った時点で説明を求めていなかったり、店員が説明した内容をろくに聞いていない場合が少なくない。(要するにバカ《ぉ。)
- 自分が気に入らない対応をされたお店の悪口しか人に言わない。(こういうお客はクレームの内容が単なる我が儘や勘違いである場合が多い。)
- 「お客はお店より格が上」だと思い込んでいる。(店員から見てめっちゃムカツク。はっきり言って自分のお店に来て欲しくないお客の最たる例。)
この良いお客と悪いお客の差を一言で言い表すと“お店の利益を考えているか否か”の違いです。要するに悪いお客というのは自分の事しか見ていないのです。とにかく自分が安く物を買えればいい訳ですから、極端な話「お前達(=お店側)が仕入れている原価で俺に商品を売りやがれ!」なのです。(まさかと思われるかも知れませんが、実際にそういうお客はこの世に存在します。 (^^; )また店員を怒鳴って不愉快にしてでも値引きさせる事に固執したり、とにかく自分に頭を下げさせる事に満足感を得ようとしたりします。これに対して良いお客というのは、自分が利用しているお店が育って、そのお店に自分が良いお客だと認識されなければ本当の意味での良好なサービスが受けられない事を知っているのです。ですからお店や店員とはあくまで対等に接しようとしますし、あまり無茶な要求も出しません。それと何よりも良いお客は良いお客を招きます。お店に少なからぬ利益をもたらしてくれて、しかも新しいお客をどんどん呼び込んでくれる。こんなお客をお店が大事にしないはずがない訳で、結果的にそういうお客は自らも得をするのです。
※ あ、勘違いしないで欲しいのですが、一般的にはお店とお客の関係は間違いなくお客の方が上です。ただそういう発想は本来お店側だけが持っていれば済む話で、それをお客側が振りかざして何かを要求しても世の中はうまく行かない、という事です。お客はお店から物を買うから偉いのではなく、お店に利益をもたらしてくれるから偉いのです。でもその辺が分かっていないお客って案外少なくないのですが。
さて、では「なぜ今回“ゲーム”に関するエッセイのコーナーでこういう話題を取り上げたのか?」という主題に入っていきます。上の章に書いた“良いお客”の内容を、例えばあるゲームを遊んでいるユーザーの多くが実践してくれるとどうなるでしょう。間違いなくその業界は活性化するはずです。ユーザーは自分が商品を買うお店には常に注意を払っていて、ある程度の及第点を取れるお店しか利用しない。でも遊んで面白かったゲームはどんどん周囲の人達に勧めてくれて、その時「このゲームはあそこのお店で買うと良いよ。」と自店の宣伝までしてくれる。するとそこに商品とお金、そしてサービスの好循環が生まれます。物は売れるしお金は動く。そしてお客もお店も心底満足できる環境が生まれるのです。
しかし例えばTVゲーム業界の現状を見ると、そういう環境を生み出す事がいかに難しいかが分かります。昔のTVゲームはおもちゃ屋で買うのが当たり前でした。活気のあるおもちゃ屋には店員や常連達との会話があって、それがゲームを更に面白くしてくれた(=ゲームに付加価値を与えてくれた)訳です。時にはそういったコミュニティが発展して、1本のゲームを何ヶ月あるいは何年にも渡って遊び続けられるような環境まで生まれていたのです。しかし最近一部のゲーマーは量販店やコンビニでゲームを買います。するとそのゲームがある程度の面白さを持つ物でも話題が膨らまない(=結果的にゲームの価値が下がっている)のです。1回クリアしたらそのゲームの寿命は終わり。そんな事を繰り返しているうちに、我々はいつしか心のどこかで「TVゲームってつまんねえ。」と思うようになっていったのです。ですから私個人は「最近のTVゲーム業界に元気が無い理由の1つは、ゲームがコンビニで売られるようになった(=売り手がゲームユーザーに対するアフターケアを放棄した)からだ。」という持論を持っています。
ただどうでしょう。私が言うような状況で本当にTVゲームが面白くなくなったとして、それは果たして流通側の責任なのでしょうか?。多分違います。本当に悪いのはお店をちゃんと選ばなかった、あるいは良いお店を育てようとしなかった消費者なのです。量販店やコンビニでゲームを買って遊んでも面白くない。だったらそういうお店ではゲームを買わなければ良かったのです。ただ実際には多くのユーザーがそういう現状に満足できないようで、そのため例えばインターネット上の匿名板なんかがもてはやされる訳です。しかも中には量販店やコンビニで買ったゲームの話題を誰かと話すために、自分がゲームを買ってもいないおもちゃ屋に出入りする人すらいて、しかもその事に対して何らの罪悪感も持たない人が少なくない。これでは良いお店が育つ訳がありません。あまつさえ自分がそのお店に出入りしているというだけで“お客”を名乗り、お店側に他の(ちゃんとそのお店でゲームを買っている)お客に対するのと同じサービスやサポートを平気で求めるのです。はっきり言いますがそんなお客はお客じゃないですし、そんな似非お客にサービスをするお店はアホです。 (^^;;;
多分これはすべての業界に言える話だと思うのですが、お店に活気がある業界は栄えるのです。しかし例えばTVゲームのお店は、必ずしも恵まれた環境で商売をしているとは言えません。元々TVゲーム業界はお店の立場が弱く、メーカーや問屋に言い様にこき使われているのが現状です。ソフトの掛け率(=定価に対する仕入れ原価の割合)は85%辺りが普通で、超人気ソフトになると100%(つまり売っても利益が1円も無い)なんて事もあったり、他のゲーム(=問屋が抱える不良在庫)との抱き合わせでないと仕入れができなかったりします。またおもちゃ屋は1度仕入れたゲームソフトは問屋やメーカーに返品できません。(デジキューブ経由で仕入れるコンビニはなぜか出来るらしいのにねえ。 :-P )あと皆さんご存知かどうか分かりませんが、最近のTVゲーム機って本体を売ってもお店にはほとんど利益が無いです。「クレジットカードで決済すると手数料で利益が吹っ飛ぶ。」という状況です。(「こんな何万円もするゲーム機を買ってやったんだから感謝しろよ。」という感覚を持っているお客って少なくないのですが、おもちゃ屋に言わせるとゲーム機本体を買ってもらう事にはほとんど有難味はないのです。)そこまで厳しい環境で商売をしているのに、日頃買うゲームは値引きのある量販店で買われ、品薄の超人気ゲームが出た時だけ「いつものよしみで1本回してよ。『常連』なんだからさ。」と言われる。こんな商売誰がやってられますかって(溜息)。あ、この話を嘘あるいは眉唾物だと思うなら、試しにこの部分をプリントアウトして知り合いのおもちゃ屋の店長に読ませてみて下さい。どういう返事をするにしろ、少なくとも「こんな話は大嘘だ!」という反応は出ないと思いますよ。
さて、では我々はどういうお客になるべきなのでしょうか?。言い方を変えると「自分が楽しんでいる趣味を更に盛り上げるために、自分がお客としてできる事は何なのか?」という事になるでしょうか。この問題に対する私なりの結論を簡単に言うと「自店の利益をお客に還元する志を持った、やる気のあるお店を見つけて儲けさせる。」という事です。これに関してはいつものようにTCGを例に話をするのが簡単でしょう。例えばブースターパック1つを¥500で売るお店と¥400で売るお店があったとします。この両店が同じように全く何のサービスもサポートもしていないとすれば、我々がどちらのお店を選ぶべきかは容易に判断できます。当然ですが迷う事無く¥400のお店に行けばいいでしょう。では¥500で売っているお店がデュエルスペースを開設してくれている、あるいは月に1〜2回イベントを開いてくれる(でも¥400のお店は何もしていない)としたらどうでしょうか。これはかなり判断に迷うところですが、そのサービスの内容が¥100という価格差に見合うと判断されれば、やはり我々は¥500のパックも買うべきなのです。ただし私に言わせると、これだけでは完全な正解とは言えません。私なら¥500で売っているお店と顔見知りになって「他店はこの位で売ってるから、もうちょっと値下げできない?(英語版の安い仕入れルートなら紹介できるけど。)」とお伺いを立ててみる。あるいは逆に¥400で売っているお店に「あっちはイベントなんか開いてるけど、こっちではやる気無いの?(やるなら手伝うけど。)」と持ちかけてみる。そしてその両者の対応を見比べて、最終的に自分が通うお店をどちらかに決める。私に言わせると我々はここまでやるべきなのです。(少なくとも私個人はそうやって今付き合っているお店を選びました。)ただしこの方法は適用できるお店がかなり限られると思いますが。
我々お客がやってはいけないのは“¥400のお店でカードを買って¥500のお店に常連面して出入りする”という事です。こんなお客はどのお店からも大事にはされないでしょう。それは¥400でカードを売っている(今はそれなりに儲かっている)お店から見ても同じです。こういうお客は値段しか見ていない訳ですから、別の所に¥390で売るお店が出来たらそっちに流れてしまうと思われてしまうのです。ですからお店はそういうお客を“常連”とは認識しない(故にサービスやサポートをしてまで定着させようとは思わない)のです。またそういうお店は自店で何かサービスやサポートをしたくて、でも具体的な方法が分からなくて手が出せない場合も少なくありません。そういう時に「協賛してくれるならイベントやっても良いよ。(私はこのお店を大事に思っていて、もっと儲けさせたいと思っています。)」と申し出てくれるお客は、やはりお店としては常連の中でも別格として扱うのです。
私が福井で進めた Magic やTCGのイベントは、まさにこの“やる気のあるお店とのパイプ作り”を1つの目的としてやって来ました。確かにお店(特に店長)に恵まれないといけないといった条件はあるのですが、しかし私は福井市という田舎でその試みを成功させています。今福井市では一番安く Magic を売っているお店が、一番のサービスやサポートを我々に提供してくれています。それはやはりお客が自分達だけでなくお店側の利益も考慮した建設的な提案をし、そしてそれを実現するために力を貸す事なのです。福井みたいな田舎でうまく行くのですから、ましてや競争相手が多くお店側のやる気が高いであろう大都市圏でうまく行かない訳がない。私はそう思っているのですが。
私がよく“日本で遊びをブームにし損ねた失敗例”として挙げる格ゲーとTCGですが (^^; これに関して私個人は「売り手側の責任と同じ位買い手側の責任が大きかった。」と感じています。要するにその世界にいるユーザーの多くに、自分が良いお客になって業界を育てようという自覚が無かったのです。上にも書いたのですが、良いお客というのは別に自分が損をしてまでその業界に貢献しようというお客ではありません。むしろ逆で“他のどのお客よりも利益を得ているお客”なのです。例えば1回¥100のゲームあるいは1パック¥500のブースターパック(笑)を、良いお客というのは他の誰よりも楽しんでいるはずです。しかし誰しもがそういうお客になれる訳ではありません。例えば自分が通っているお店で初心者の面倒を見てあげたり、その遊びが盛り上がるようにちょっとした貢献をする。そういう積み重ねをお店側はちゃんと見ているのです。ただし当然ですがその逆もお店はちゃんと見てますが。(例えば対戦相手を罵倒したりとか、初心者を騙してシャークしたりとか。)
要するに格ゲーとかTCGのお客というのは、とにかく目先にある利益しか見ていなくて、自分が本当の意味での最大級の利益を得られるような環境(お店)を育てようとしなかったのです。例えば格ゲーで言うと初心者に親切で変な常連がいない楽しい対戦環境を持つゲーセンを誰も作ろうとしなかった。 Magic で言うと自分が1パック¥300でフレッシュパックが買えればそれで良くて、だから近所にある1パック¥450なり¥500のお店には目もくれなかった。そういう事です。そして何か言われると「対戦なんて手段を選ばず勝ちゃあいい(勝てない下手な奴が悪い)。」「だってあの店高いもん(自分は安く買えてるから別にそれでいい)。」「自分がやらなくても別の誰かがやればいい(やるだろう)。」で済ませてしまっていたのです。これに対して私は以前から「勝敗に拘りすぎたゲームは自滅する。」あるいは「日本の流通で販売される Magic の定価を下げろ!(一般の販売店も並行輸入の英語版を売るべきだ。)」等と書いてきた訳です。でも本来そういう提案は、それこそすべてのゲーマーが自分が住む地元のお店に対して行うべきだったのです。そうしなければその業界は育たないし、良いお店も良いお客も生まれないのです。
あなたが自分の趣味を地元や日本国内で流行らせてもっと賑やかにしたい。そう思うのであればまず何よりも“自分が近所のお店の良いお客になる”事を目指すべきです。あなたが自分の趣味をとことん楽しみ、その過程でお付き合いしているお店から感謝されて多大な恩恵を受けている。そういう様子を周囲の人達は見ていて、その楽しげな様子に引かれて興味を持つのです。確かに格ゲーやTCGは売り手やマスコミのヘッポコ振りがやたら目立つのですが (^^;;; しかしそんな中でも自分ができる事をやっていく。そういう積み重ねが大事なのです。少なくとも私は自分なりにそういう取り組みを今までしてきましたから、それがそんなに簡単ではない事は知っています。でも今までの経験で皆さんも分かったんじゃないですか?。「救世主なんて者はいくら願っても現れない。だから自分が救世主になるしかない。」ってね。
いつもはここで“本音の部分”を書くのですが、今回はテーマがテーマなので、より具体的に「自分が出入りしている店から“良いお客”だと思われるためには?」という話を取り上げてみます。ただ実際にこれを実践するのはかなり大変なので、ここではその初歩編として“自分が悪いお客としてお店に認知されないためのワンポイントアドバイス”を書いてみます。 ・・・とまあ、基本編としてはこんな所かな。要するにこういう話って「自分が店員になった時に、どういうお客が来てくれると嬉しいと思うか?」という視点を持つと容易に気が付ける部分なのです。そして現実にはそういう視点から物を見ないお客が世の中にはあまりにも多いのです。自分が日頃店員に対して無礼な接し方をしていて、ある日それと同じ事を(今度は自分が店員の立場になって)お客にされる。でもそれで自分の日頃の言動に気が付いて、それを改めようという人が多くない。これで物を売る(買う)事が楽しくなるはずがない訳で、それ故その業界に活気が出ないのです。 |