なぜ日本人は英語を学ぶのか? 
 
 我々日本人の母国である日本には、元来日本語という母国語が存在します・・・こんなの当たり前ですよね(笑)。そして我々は日常生活においては日本語で話し日本語で読み書きをし、それで困る事は多分ほとんど無いはずです。ところが日本の学校ではなぜか義務教育の段階から英語を教えますし、日本人の中にも「英語を知らないと大人になってから色々と困る事がある。」と言う人が少なからずいます。日本語は基本的には1億2千万人程の日本国民が話す言語です。しかし英語圏といわれる地域には10億人以上の人達が住んでいるようで、英語が通じる国も含めるとその人口は更に膨れ上がります。従って日本語だけが話せるよりも、英語も話せるようになった方がより多くの人達とコミュニケーションが取れる。しかも世界を動かしている中心的な国や地域では英語が日常的に使われている。だから英語を学びなさい。簡単に言うとそういう事のようです。

 じゃあ日本語と英語を単純に言語学的に比較した場合、果たして日本語はそんなに英語に劣る言語なのでしょうか。その答えは多分「No」だろうと思います。英語はアルファベット26文字と幾つかの記号だけで意志の疎通が可能ですが、日本語は膨大な数の仮名や漢字を使用します。外国人が漢字をTシャツ等にプリントして身に付けるのを見ても明らかなように (^^; 漢字という文化は決してレベルが低い下等な物ではないのです。そして日本語独自の文法や言い回しから生まれた様々な文学も数多くあります。日本語は決して英語に劣る言語ではないのです。ところが実際問題として、今現在全世界で言語が理解できる人口を比較すると、まあ間違いなく英語人口は日本語人口を圧倒的に上回っているはずです。それはなぜなのか。要するに“英語の方が必要だから”なのです。ちょっとひいき目に見て日本語が英語よりも言語学的に優れている面が多かったとしても、その事が日本語人口を増やす直接的な理由というか引き金にはなっていないのです。日本語を知るよりも英語を知った方がより多くの人達とコミュニケーションが取れる。そもそも言語とはコミュニケーションの道具な訳で、より人口が多くて利用価値が高い方を学ぶ方が理にかなっている。それは間違いないのです。

 ・・・さて、私がこの後どういう話を書こうとしているのか、勘の良い皆様はもう既に気が付かれたかと思います(笑)。そう、実はゲームの世界にも全く同じ事が言えるのです。

 例えばトレーディング・カードゲームの事例で考えてみましょう。確かに世界的に見たTCGというゲームの元祖は MAGIC:the Gathering だったかも知れません。そしてその Magic というゲームの内容は、ひょっとすると今でも昔と変わらないだけのクオリティの高さや面白さを維持している・・・のかも知れません。 (^^; じゃあ実際問題として、その Magic は今でも世界一売れているのでしょうか。今やどうも答えは「No」のようです。既に日本では幾つかの国産TCGにシェアを抜かれているようですし、世界的に見ても遊戯王OCGという新参者にトップの座を明け渡したと思われます。というか、今や Magic は母国というか本場と言われる欧米でですら衰退の噂が聞こえるに至っています。ところがその反面、日本生まれの Pok?mon や遊戯王OCGが北米で大ヒットして Magic の市場を脅かしてすらいます。あまつさえ日本の Magic プレイヤーの多くが忌み嫌う“日本の萌えTCG(あるいはトレカ)”を、欧米の多くのTCGプレイヤーが熱心に欲しているという事実すらあるのです。 (^^; 

 じゃあ、なぜそうなったのでしょうか。その理由は幾つかありますが、何よりも「今や Magic がTCGプレイヤーのコミュニケーション・ツールではなくなってしまった。」という事があるだろうと思います。はっきり言いますが、少なくとも日本では Magic よりも遊戯王OCGやデュエル・マスターズの方が、それを母国語とするあるいは言語を理解できる人口が多いのです。そしてTCGというゲームが仲間や対戦相手とのコミュニケーション・ツールである以上、やはり単純にその言語を話せる人口が多い方がその言語への需要が高いのです。例えばあなたがクラスメイト40人程のあるクラスにいて、クラス内でのプレー人口が2〜3人の Magic と10名オーバーの遊戯王OCGのどちらに関心を持つか、という事です。遊戯王OCGに比べて Magic はゲームの奥が深い。ルールの整備がしっかりしている。600万円を越える賞金がかかった競技イベントがある。そんなの関係ありません。普通は大抵がまず遊戯王OCGに興味を示し、そして多くがカードを買うでしょう。しかも日本ですと、今や Magic は遊戯王OCGやデュエル・マスターズの後になって、ようやく選択肢の1つに加えられる・・・いや、何も遊びなんて別にTCGだけじゃありません。それこそ携帯ゲーム機や家庭用ゲーム機、更にアウトドアでみんなで遊ぶ野球やサッカー、そういう遊びのずっとずっと後になって、ようやく「なんか他の遊びに飽きたんで、あそこの少数グループが面白いと言い張ってる Magic でも始めてみるか?」になるのです。しかしそうなったらなったで、今後は高額なパックや競技偏重による劣悪な環境がデュエリストの Magic 定着を妨げる。これで Magic が日本で遊ばれるはずがないのです。

 それともう1つ、その言語が純粋に好きか嫌いかという問題があります。最近の Magic のような売られ方ですと、プレイヤーがその言語に愛着を持ちづらいのです。だって“競技プレイヤー並にBOX買いすれば面白さが分かる”ゲームなんて、本当に面白さを理解できる人間はごくごく少数派でしょう。それでなくても人前で話す機会が乏しくて、一般の場で話せば多くの人達に怪訝な目で見られる。 (^^; そんな言語を覚えたり話し続けるなんてのは、まあ“愛情や愛着”以外ではなかなか説明が付きません。あるゲームが多くのプレイヤーに母国語として選ばれる。そのために必要な要素は結局のところゲームへのニーズであり愛着や愛情なのです。このゲームは絶対に面白いから遊んでくれ。そんな受け身な姿勢ではダメなのです。むしろあるゲームの話題性を高めてブームにしたり、プレイヤーのニーズを徹底的に掴んでゲームに反映し、それこそプレイヤーに「君がそんなにこれを遊びたいなら遊ばせてあげよう(じゃあ取りあえずこれを買いなさい)。」位の事が言えるようにならなければいけないのです。実際に世の中でブームになったゲームの大部分が、そういう売り方に成功しているのです。

 どれだけ日本語が言語としてのクオリティを高めても、日本語を話すニーズを増やしたり日本語を話す事を格好いいと思わせるイメージ戦略が成功しない限り、日本語が世界の共通語とか言われて広まる事はあり得ません。ゲームもそれと同じなのです。そして日本でも地方の方言がどんどん消えて無くなりつつあるように、ゲームもある一定以上の市場を維持できない限り、例えどんなに優秀なシステムのゲームであっても衰退あるいは消滅という運命からは逃れられないのです。それは多くの皆さんがゲームシステム的な視点から優位性を主張する Magic にしても例外ではありません。昔日本ではセガサターンとプレイステーションというゲーム機がシェアを競った時代がありました。私に言わせるとハードウェアのスペックでSSはPSの敵ではありませんでした。(ちょっと表現が分かりにくいですが「SSの方が幾つかの点で優れていた」という事です。この辺説明し始めると長くなるので、今回は割愛します。)実際にほんの一時期SSがシェアでPSを上回った時期もあったのですが、でも結局競争に勝って生き残ったのはPSだったでしょう?

あいせんの“本音の部分”

 さてその日本語ですが、最近になって外国で日本語を学ぼうという気運が強くなっているようです。日本の事をもっと知りたい。できれば一度でいいから日本に行ってみたい。そういう外国人が増えてるとかいないとか。じゃあ、そういう日本あるいは日本語への関心はどうやって生まれたのでしょうか。それは今まで行ってきた外国への経済協力や日本への関心を高めるキャンペーンが、地道に実を結び始めているのだろうと私は思います。

  Magic といったマイナー落ちしたゲームに必要な発想はまさにこれだ。私はそう断言してもいいだろうと思います。外国人向けにホテルや観光施設をいくら整備しても、そもそも外国人が訪ねて来てくれなければ意味がない。失敗した多くのゲームにはそういう視点が無いんですよ。今まで Magic という遊びは、例えると「過去に日本に来た事がある外国人に、せっせと『日本を宜しく』とダイレクトメールを送る。」という感じなのです。確かにそれでリピーターは確保できるかも知れませんが、でも恐らくいつまで経っても更なる知名度のアップとかブーム化は無理でしょう。しかも Magic の場合、一度日本に来て日本語をちょっとでも話した人間に、それこそすぐにでも日本に帰化できる程の高い日本語の知識を求めたりしますし。 (^^; でもそうじゃないと今の Magic ってちょっとした国内観光すらままならないんですよね。

 じゃあ、どうすればいいのか。それは一般の人達にできるだけ多く Magic といったゲームの存在やその様子を見てもらい、できるだけ多くの人達にまずは関心だけでも持ってもらう事です。日本における遊びの成功例達は、そういう知名度アップの課程でマンガやアニメを駆使し、それこそ爆発的に世の関心や興味を集めるのに成功しただけなのです。でも Magic 辺りはそういう工夫をほとんどやっていなくて、それで何か言われると「こんな面白いゲームを知らない(遊ばない)なんて、君達は人生を損してるよ。」とでも言いたげに殿様商売を続けているのです。さすがにユーザーは文句を言ってもいいだろうと思います。そのおかげで今や Magic は、それこそ数少ないプレイヤーが遊び続けるために必要な最低限のインフラすら失おうとしているのですから。

 もしそんなにプレイヤー諸氏が Magic というゲームに絶対の自信をお持ちなのであれば、一度ご自身でその普及のために動いてみるといいと思います。ただ、そうやってみると多分皆さん感じるだろうと思います。「ああ、なんで Magic って競技イベント以外に、ゲームの知名度をアップさせるための販促をやらないのだろう。」ってね。日本という国がどれだけ外国人にとって訪れやすい魅力のある国であったとしても、そもそも外国人が日本の存在を知らないのでは訪れようもないのです。ましてやその日本の内情は物価は高いわ治安は悪いわ、あまつさえ外国人に対する差別や偏見バリバリで閉鎖的。とてもじゃないけど外国人に来訪を勧められる状態じゃないのですが。 (^^; 

   

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