特集: Magic の今と未来
 プレミアイベントについて 
 

○ 現状をどう見るか

 現在 Magic の世界で行われているプレミアイベントですが、私個人の率直な印象は「かなり限定された範囲ではあるが、その中ではプレイヤーの獲得にある程度の成果を挙げている。ただしそれを外の世界の人達に堂々と自慢できるかというと、ちょっと疑わしい部分がありそうだ。」という感じでしょうか。

 そもそも私が現状のプレミアイベントを好意的に捉えているか否かは、過去に書いたドキュメントをお読みいただければ想像が付くだろうと思います(笑)。元々競技と名が付くイベントは、間違っても万人受けする代物とは言えないだろうと思います。それは Magic とて例外ではありません。競技イベントに参加するためには、それなりに高額の出費が必要な量のカードを準備して、そこからやはりデッキを練り込むのにそれなりに十分な時間が必要だからです。また周囲にそういうデッキとスパーリングをしてくれる環境も必要でしょうし、限定戦の練習となると更に資金と時間を同時に費やす必要があります。ただ1つのゲームの世界に万単位の人が集まれば、当然その中には“他人に勝ちたい人達”あるいは“ゲームの勝利に意義を感じる人達”というのは少なからず現れます。そういう方々が思い切りガチ勝負のできる環境として、やはりこの手の競技イベントにはある程度の必要性があるのだと思います。

 ただ、じゃあ現状のプレミアイベントが、本来メーカーやユーザーが求めている、あるいは期待している機能を十分に果たしているかというと、私個人は疑問に思う部分が多々あります。本来この手のイベントには“話題の発信”“コミュニケーションの場”“プレイヤーのレベル向上”といった目的もあると思われるのですが、そういう点に置いて現状のプレミアイベントは、決して満足できる状況にはないと思われるからです。世界的なイベントで日本人が優勝しても話題にならない。トレードやフリー対戦用の十分なスペースが確保されていないケースが少なくない。競技プレイヤー以外のユーザーが会場に出掛ける理由が乏しい。そしてイベント開催の度に不正行為があったという噂が絶えない。そういった問題がかなり以前から指摘されていて、しかし改善されている様子はあまり見られません。ですから「参加費を払ってくれる奇特なプレイヤーをとにかく会場に詰め込んで、集めた参加費から一定額を賞金としてお支払いしてさようなら。」そういう印象が私には少なからずあるのです。

 あとこういう簡単な試算もできます。現在日本国内で1年間に開催されるグランプリは数回程度という感じでしょうか。仮に6回として1回当たりの参加者を1000人とすると、その参加総数はのべ6000人になります。あと日本選手権の予選参加者ですが、のべ3000人とか言っておけば多分実状を大きく下回る事はないですよね。ここにFinals辺りの予選参加者数を加えても、その合計はのべにして1万人に届くか届かないかです。プロツアー予選とかプレリリーストーナメントを加えても、現状を見る限り多分のべ2万人を越えることはないでしょう。しかし確か日本国内には Magic プレイヤーって約130万人いるんじゃなかったでしたっけ。となると、プレミアイベントという販促手法は、日本国内にいる Magic ユーザーの2%もカバーできていないのです。現実にはプレミアイベントには同じ選手が繰り返しエントリーしている訳で、実際にその恩恵(!?)を受ける比率は更に少ないでしょう。これはマンガやアニメのように、すべてのユーザーが公平に受けられるサービスとは程遠い訳です。しかもプレミアイベントは招待枠以外は大部分が有料な上に、その参加費もそんなに安いとは言えません。 Magic は認定トーナメントを“公正さを大事にして”開催しているというのですが、私に言わせるとその内容は公正でも何でもないです。極端な話、カードだけでなくイベントにも金を払う気があるユーザーのみを相手に商売をしている。そう言い切って多分間違いはないと思います。これは手放しで“ Magic の販促の一環”とは呼べる内容ではないでしょう。

 「じゃあお前も恩恵を授かりにプレミアイベントに来ればいいだろう」とか言われそうですが、でも実際問題として今くらいの参加者をなんとかギリギリで収容できる程度の会場で開かれているプレミアイベントが、一般の Magic ユーザーすべてに開かれたサービスの場だというのはかなり説得力に欠けます。バイヤーブースの廃止(あるいはアーティストのサイン会が突如中止になる)などで、競技に参加しない人が会場に行く理由もいよいよ無くなっていますから、遠征の費用を負担してまで行く価値があるとも思えません。実はHJが自社主催のプレミアイベントからバイヤーを閉め出した際、あるバイヤーさんから「最近はグランプリに出店しても収支が合わなかった。今までは常連さんへの義理とかいった理由で何とか行っていたのだが、これで行かない事に踏ん切りが付けられる。」というご意見が出たと伺っています。実状はそんな物なのです。

 プレミアイベントが今程度の内容になっているから、世界的にも Magic は今程度しか売れない。実はそう言い切っても構わないのではないかと私個人は考えています。だって Magic って実質的に、満足な販促活動と呼べる物って競技イベントしかないのですから。言い換えると今のプレミアイベントって、それこそ Magic の近況を映し出す鏡なんじゃないでしょうか。だとすれば、逆にプレミアイベントが今の何倍も魅力のある物に変われば、それがそのまま Magic に映し出されて活況を呈するようになる。そう考えることもできるのです。プレミアイベントが今のようにほんの一握りの Magic ユーザーのための物ではなく、より多くのユーザーの関心を集めてサービスに貢献すれば、そこから Magic そのものも活性化できる可能性はあるのです。

○ サボりの口実なんていくらでもある

 プレミアイベントの質を問う論議の課程で話題に出るのが“プレミアイベントは黒字か否か”という問題です。あれだけの会場を借りて大勢のスタッフで運営しているのだから、あの程度の参加費では到底黒字になっている訳がない。だからプレミアイベントは今程度の参加費を取っていいし、従来のやり方や今程度の賞金で運営されて当然だし、WoCやHJはよく頑張っている。そういうご意見は少なからずあるはずです。これはプレミアイベント内で開かれるサイドイベントにしても同じ事が言われます。それに対して私が言ってきた意見は「なんでプレミアイベントで収入を得なきゃいけないの?」という物です(笑)。私は以前にブロッコリーが開いたアクエリアンエイジの中部地区予選に参加させていただいた事があるのですが、定員が参加者数の倍以上ある広い会場を借り、参加賞や十分な量の賞品を出して、それで参加費は無料でした。当然会場内でのバイヤー行為に制限がかかっているなんて話もありません。なんでこれと同様の事が Magic にはできない、あるいはやろうとしないのか。私は別に実現の可能性が全くない絵空事を提案している訳ではないのです。(これについては更に最新の情報を後ほどご紹介します。)

 私に言わせると、これって要するに“ Magic が世界規模で売られている事のデメリット”なのです。欧米はどうか分かりませんが、少なくとも日本には Magic と競合関係にあるTCGがごまんとある訳です。それなのに Magic が“競合対策”を全くと言っていいほどしていない。これは商売の世界での常識に照らしてもおかしいです。全国チェーンに属する店が、同じ地域にある他の競合店での価格に独自の判断で売価を合わせるとか、競合店が実施しているサービスに対抗措置を取るとか、そんなのは当たり前のようにやっています。ところが Magic にはどうもそういう発想がないのです。WoCがやっていない事はHJ単独ではできない。だからそれを口実にHJは何もしない。そしてそのやり方を一部の擁護派が声高に支持する。これが多分現状でしょう。でも商売を成功させるという視点から言ってしまうと、そんなの単なる言い訳だし甘えだしサボりなんですよ。むしろ本来やるべきは全く逆で、HJが自発的に「他の国産TCGはこんなサービスをしている。我々もこれに追従して市場を開拓すべきだ。」という提案をWoCに上げる。あるいは率先して改善策を実行して成功させ、それをWoCにフィードバックするべきだったのです。もうそれこそWoCのスタッフが煙たがる位にです。それこそが真の“ Magic のローカライズ”につながり、日本で Magic が定着して発展する原動力になったはずなのです。

 あと「遊戯王OCGだってそんなに言うほどユーザーサポートはしていない。」というのも、実は結果として今程度の Magic のユーザーサポートが肯定されてきた際の重要な論拠になっています。確かに遊戯王OCGには賞金がかかったプレミアイベントは無かったかも知れません。しかしはっきり言いますが、それで勝ったのは果たしてどちらだったでしょうか。 Magic が行ってきた認定トーナメントによるユーザーサポートが、果たしてTCGの販促という視点で見た時に正しかったのかどうか。こういう結果になってみると我々はかなり疑ってかかってもいいんじゃないかと思います。何よりも今やWoC自身が、その遊戯王OCGの販売システムの優秀さを認め、自社製品の販促にそれを応用しているのです。そして Magic はそのデュエル・マスターズに、1年目にして日本国内でのシェアを大きく抜かれ、2年目は世界的な比較でもシェアを抜かれた可能性が高いのです。(少なくとも販売数量の点では、今や Magic はデュエル・マスターズに遠く及ばないでしょう。)日本での販売元がコナミ傘下のタカラであっても、従来の Magic のシステムが優秀であると自負できるのであれば、WoCは Magic のシステムでデュエル・マスターズを売らせればよかったのです。でも現実はそうなっていない。そしてそれでデュエル・マスターズは成功した。これが何よりすべてを物語っています。

 商品のクオリティが他よりも抜き出ている訳でもない。知名度や話題性はむしろ他より劣っている。それで販促までが他と横並びかそれ未満では、どう考えても Magic が立ち行く可能性はないだろうと思います。別にサイドイベントの限定戦で使うパック(カード)まで完全無料にしろとは言いません。ただ今や Magic 唯一の販促の柱であるプレミアイベントに、どうも私個人は“お得感”みたいな物を全くと言っていい程感じないのです。WoCやHJがプレミアイベントを“商品”として考え、有料で販売していると言うなら取りあえず納得しましょう。じゃあそれなら Magic は一体どこでユーザーにサービスをしているのか・・・実は全くないんですよ。だったらそれこそ「同時にマンガ連載やアニメ放映くらいやったらどうだ?」とか言いたくもなります。

○ 縁の下には誰がいる?

 あと私としては“プレミアイベントを支える方々”についても考え直すべきだと感じています。

 例えば私が、知り合いが経営するあるお店の販売を手伝いに行ったとします。例えそこで私が1円のギャラももらっていなかったとしても、店員の顔をして店頭に立った瞬間から、そこで私は言うまでもなくお客さんから店員という扱いを受けます。つまりその時点で私は店の顔になった訳です。ですから当然私の言動は店として責任を負うべき対象となり、その心証は店の風評や売上に少なからず影響を及ぼすでしょう。もし私にそういう形で責任を負わせるのが嫌であれば、それこそ私を裏方に回らせて接客をさせないようにするか、あるいはある程度の報酬を与える事で然るべき責任を分担させるかのいずれかになります。それが世の中の常識という物です。

 プレミアイベントのスタッフにもこれと全く同じ事が言えるはずです。少なくともプレミアイベントが数千円単位の参加費を徴収している以上、それはごく一般の人達の目には“営利目的による開催”と判断されます。つまりイベントを売っているのです。(それがHJから見て黒字だろうが赤字だろうが関係ありません。)従ってそこにサポートに入ったボランティアは、例え自身への報酬の有無はどうであれ“店員”になるのです。もし自分がそういう無報酬の状態で店員としての責務を負いたくないのであれば、あなたは雇い主にそれ相応の報酬を求めるか、店頭には出ず裏方に回らせてもらうか、あるいはイベントを無料開催にさせるか、そのいずれかのアプローチを取るべきでしょう。そして結果として店頭に立ってしまったら、あなたは店員として相応しい振る舞いをすべく全力を尽くすべきなのです。

 それとやはり“裏方を育てない Magic のやり方”には問題があるだろうと思います。プレミアイベントでは運営スタッフの問題が時々取り上げられます。中には「こんなヤツがスタッフをしているから・・・」という意見を口にされる方もいらっしゃると思います。じゃあお伺いしますが、その人がスタッフをしてくれなくなったとして、その代わりにあなた自身がスタッフを引き受ける気がありますか。あるいは他の誰かがスタッフをしてくれるという具体的な当てがありますか。多分ないですよね。ひょっとするとその人がスタッフを引き受けてくれなかったら、本気で1人たりとも代わりの人が現れないかも知れないのです。だって Magic はそれだけのスタッフを育ててきてないですもん。そういうWoCやHJのサボりを棚に上げて、未熟でも頑張ってプレミアイベントを盛り上げようという志のある人を揚げ足取りで叩く。これじゃあいよいよ誰もスタッフなんか引き受けなくなるでしょう。ちなみにこれは地方でのローカルイベント開催にしても事情は全く同じです。

 スタッフ諸氏が例え1円でも主催者側から報酬を得ているとしたら、やはり“プロ”としての意識を持って働くべきでしょう。しかし同時に、彼らがジャッジや運営スタッフとして腕を磨くための環境整備にWoCやHJがコミットしていない以上、それで起こった運営上の問題をスタッフ本人だけのせいにするのは間違っていると思います。そもそも雇用された担当者のミスは、雇用した組織の責任でもあるのです。要するにこういう事です。 Magic のプレミアイベントではいつまで経ってもゴタゴタが終息しない。これじゃあ他のゲームのイベントと比較された時に引け目を感じるから、とにかく誰かに文句は言いたい。ただそれをWoCやHJのせいにしちゃうとイベントそのものの品位に関わるし、そういう組織に文句を言うのは自分が不利益を受けそうで怖い。 (^^; だから自分自身のストレス解消も兼ねて、叩いても自分に何のデメリットもないであろうスタッフ個人を叩く。でもそんなの単なる弱い者いじめでしかないし、それじゃあ問題の根本部分が全く改善されないのです。例えば未だに無くなる気配を見せない不正行為の問題にしても、そもそもプレミアイベントに手弁当で馳せ参じるファンが今の何倍もいれば、監視の目が厳しくなってかなり改善されるんじゃないでしょうか。でも現実は今や試合を観ているギャラリーすら満足にいないと思われる。これじゃあ不正行為を防ぐのは難しいというか無理なんじゃないかと素人ながらに思ってしまうのですが。

 ・・・あ、ちょっと熱くなりそうなので方向転換します。 (^^; (この辺の話は機会があれば書いておきたかった内容なもので。)これは競技プレイヤーにしても同じだと思うのですが、要するに競技は“やる人”と“支える人”を同時に増やして育てる。これが何より大事なのだと私は考えています。そうすれば自然とレベルは向上するし、イベント参加者が増えることで待遇だって上げられるのです。プレミアイベントを今のように Magic の商品の一部と考えるのであれば、それこそそれ単独でユーザーを満足させ、なおかつ黒字を出す体質を目指す必要はあるでしょう。しかしそれにはスタッフの育成は欠かせないはずです。競技は人を育てるためにある。こんなの常識です。でも Magic ではそういう一般常識が通用しない部分が少なくない。だから一般受けしなくて人気が出ない。私はそういう単純な図式で物事を考えてもいいだろうと思っています。

○ 他TCGとの比較

 前回のエッセイにも書きましたが、やはり Magic って誰かのデュエルを見て万人がワイワイ盛り上がれる遊びではない訳です。じゃあより多くの人達に Magic のデュエルを見て楽しんでもらうにはどうすればいいかというと、簡単に言うと“ Magic を有名にする”とか“ Magic を知ってる人を増やす”事が必須になります。つまりプレミアイベントを本当の意味で Magic 拡販の戦力にするためには、やはりその前段階として Magic ユーザーの拡大や育成が必要不可欠になるのです。

 実はこれに関して、アクエリアンエイジの方で興味深い動きが起こっているようです。まず2004年3月末に「アクエリアンエイジ ビギナーズ インストラクター」というフリーソフトが公開されました。これはパソコンで動く無料ソフトを使って、アクエリを試せるという試みです。それと「アクエリアンショップ キング・オブ・キングス」という全国大会の開催です。全国128店舗で半年に渡る予選を開催し、最終的にショップ代表決定戦を勝ち抜いた128名全員に交通費を支給して全国大会に招待するそうです。アクエリの市場規模って、私個人の試算ではメーカー出荷額ベースで3億円に届かないと思われるのですが、それでもこれだけの企画を打ってくるんですね。128名分の交通費というと、ひょっとすると Magic でいうFinals辺りの賞金総額に匹敵する、あるいはそれを上回るかも知れません。この大会でブロッコリーは参加費収入を得る訳ではないので、それだけの負担をアクエリは100%自己負担で出そうと言っている訳です。

 どうも最近の様子を見ていると、 Magic とアクエリは全く正反対の問題を抱えているように見受けられます。競技に指向してトレカとしての魅力や需要を失った Magic と、トレカとしての販促手法が災いしてカードゲームとして遊ばれなくなったアクエリ。図式としてはそういう感じです。ただ少なくともアクエリは「そういうアンバランスな状態は好ましくない。」という認識の元に対策を講じているように見えるのですが、しかしどうも Magic には相変わらずそういう素振りが見られません。日本国内のみの市場規模で見ても Magic はそれでもアクエリの数倍ある訳ですが、しかし代理店が利益を出せていないという緊急事態の割には暢気だよなあ・・・という感じです。 (^^; それが良いのか悪いのか私には分かりませんが。

 あと遊戯王OCGも去年から、北米で開催する世界選手権を中核に据えたイベント体制を打ち出しています。でも遊戯王OCGで世界戦に出るためには、まずお店が主催する大会で勝ち上がり、国内ランキングで上位100位までに入る必要があるそうです。( Magic のオープン予選のような飛び込みのエントリーも一切できないようです。)つまりその基本はあくまで“お客さんにお店に来てもらう事”な訳です。しかし Magic はそうなっていなくて、極端に言えばプレミアイベントのみの参戦で勝ち上がることが可能なシステムになっていますよね。これに加えて一般の認定トーナメントに対するサポート(賞品提供に関する考え方など)の違い。それはつまり「誰のためにイベントを開くのか」あるいは「イベントで誰を儲けさせたいのか」という発想がそのままシステムに反映されていると私は考えています。

 ただ Magic では現状のシステムが認知され定着してしまったことで、結果として今や日本国内の流通で Magic を買うユーザーが減っていると思われる。なんとも皮肉な話ですが、しかしこれはある意味“ Magic のシステムが仕様通りに機能した結果”なのです。これは私の恩師の言葉なのですが、プログラムは“意図した通りに動く”のではなく“作った通りに動く”物です。これはイベント企画や販促も同じなのです。現状の Magic のシステムは、基本的にはユーザーに並行輸入の安いパック購入、あるいはシングルカードによる無駄のないカード入手を押し進め、そして情報を集めて無駄(遊び)のないデッキ構築をさせるようにシステムができています。それ故窒息して Magic を離れるユーザーを大量に発生させてしまった。これも実は Magic のシステムに取っては仕様通りの動作だろうと思います。しかもこれだけ問題が深刻化していても、この期に及んでパッチがリリースされる気配は見られません。後日リリースした別のシステムではちゃんとその辺が対策されているにも関わらず・・・です。

 それでも Magic が変わる気配がない。多分多くの方々はそれをWoCの自信の現れだと解釈し、それ故私のようにそれに異議を唱える人間を疎ましく思ってきたのだろうと思います。しかし現実にはそのWoC自身も、今や Magic のシステムでは(少なくとも)子供達にはTCGを遊ばせる事ができない事に気が付いているのです。言い換えるとリアルカードの Magic ユーザーは取り残されつつあります。時代の流れからも、人々の関心からも、そして何よりWoC自身の意図や将来展望からもね。私は随分前にその危機感を感じて、一連の意見を書き始めています。そしてさすがに皆さんも、そろそろ自分が遊んでいる Magic がそうなっている事に気が付き始めたんじゃないですか。

○ 提案

 さて、では以上のお話を踏まえて Magic のプレミアイベントに関する私なりの提案を。

 掲示板でもご紹介した通り、つい先日、予選で参加費を集めてそこから本戦で賞金を出すという形式の麻雀大会が、公安当局から「待った」がかかって中止されたという事例があったそうです。しかも記事の内容をよく読んでみると、その大会は参加者数や参加費の設定が Magic のグランプリやFinals辺りとかなり似通っているのです。つまり「同じ理由でプレミアイベント開催にケチが付かないという保証はない。」と言ってもいいかと思います。一応「参加費がすべて運営費に充てられ、賞金が別に準備されている場合は問題ない。」という事らしいですが、ただWoCが賞金を出していると言われる日本選手権やグランプリはともかく、HJが主催しているFinals辺りがこの要件を満たしていない可能性はかなりある気がします。少なくとも私が以前から言ってきたプレミアイベントに対する印象(=胴元が参加費を集めて上位入賞者に渡す博打)を何らかの形で払拭しない限り、現状のプレミアイベントを堂々と一般に紹介、あるいは自慢するのは難しそうです。

 では、こういう状況を乗り越えて、プレミアイベントを Magic 拡販の大きな柱として発展させるにはどうすればいいのでしょうか。それには幾つか方法があると思いますが、具体的には大きく2つの路線が考えられます。1つは現状のような賞金提供を合法的に存続する。もう1つは賞金の廃止(すべて賞品に)という路線に切り替える。この2つです。前者の場合 Magic は“イベント収支の透明性確保”“ Magic の売上アップによる賞金捻出手段の健全化”という形で、プレミアイベントから賭博性を払拭しなければいけないでしょう。ただ後者は今となっては反対意見も多いでしょうから、実現性という点でかなり疑問があります。日本にも Magic で飯を食っている方は少なからずいらっしゃる訳で、この措置はそういう方々の懐を直撃しますから。

 つまり結局のところ、プレミアイベントの成否という視点から切り込んでも、やはり今の Magic に求められるのは“ユーザー数の拡大による売上アップ(市場の拡大)”になるのです。ところが残念な事に現状のプレミアイベントには、そういう視点に立った施策がほとんど見られません。しかしもはやそれではダメなのです。じゃあ、具体的にどうすればいいのか。これは私も以前から言ってきた意見なのですが、やはり Magic は“多角化”を目指すべきでしょう。プレミアイベントには競技指向が強い参加希望者しか集まらない。そういう状況にはやはり色々と問題があるのです。何よりも Magic は“参加費なんか取らなくても今程度かそれ以上のプレミアイベントが開催できるだけの市場規模”を実現すべく動き出すべきでしょう。色々な趣向を持ったユーザーを Magic に定着させ、そういう人達が興味を持って遊びに来るプレミアイベントを開く。そういう遊びとして極めて当たり前の事をやっていかない限り、やはり Magic は生き残れないのです。イベントに人が大勢集まれば、そこから収入を得る方法なんていくらでもあるのです。

 タバコが健康に悪影響を与える事が随分と前に言われながら、なかなか禁煙や分煙の気運が盛り上がらなかった。それは“タバコを吸う人間が世の中の仕組みを決めていたから”という部分がかなりあるだろうと思います。どうもプレミアイベントに代表される Magic の競技指向、あるいは競技偏重も同じではないかという気がします。別にプレミアイベントをやめろとは言いませんし、むしろやるなら今よりもド派手にやってほしい位です。ただそれだけしかない状態には色々と問題があるし、一歩間違うと博打と勘違いされる現状は改める必要があるのです。そしてどうせ金をかけるならより大きな成果を挙げて欲しいし、それこそ一般のマスコミに取り上げられる位の知名度を獲得して欲しい。この辺が今回のお話の結論になるでしょうか。

○ 補足

 直接プレミアイベントの話題とは無関係になるのですが、そろそろ Magic は本気で“女性プレイヤーの獲得”を目指した施策を打ち出してもいいんじゃないでしょうか。女性が遊べる Magic というのは、イコール多くの人が遊べる Magic という事になると思います。世の中には自分が遊ぶ趣味の世界にヲタクがいる事を疎ましく思う人は大勢いますが、しかし女性が多い事を疎ましいと思う人はほとんどいないはずです(笑)。しかも女性は男性に比べて世の中にブームを生み出すパワーを持っており、やはり味方に付ける事には何かとメリットが多いのです。ちなみに先日のPT神戸で開催された女性限定トーナメントですが、ある方の日記によると参加者=12名で無事開催されたそうです。 (^^; 私も成否に関してはちょっと気になっていたもので。(12名というと、確かかなり以前にグランプリの会場で開かれた、ポータル三國志トーナメントの参加者と同程度ではないかと思われますが。 (^^; )

 しかし実は女性が Magic を遊ぶようになるために最も必要な物、それは何と言っても“女性プレイヤー”だと思われます(爆)。少し前から Magic にはコレクターという人種がいなくなり始めました。結局コレクターって他のコレクターを頼りに自分のコレクションを増やしたり、コレクションを見せて話題を広げたりします。こういう点で非常に申し訳ないのですが、私の経験上競技プレイヤーというのはほとんど戦力になりません。 (^^; それと同じ事が女性プレイヤーの獲得にも当てはまります。ある男性が料理の講習を受けに行って、自分以外の参加者が全員女性だった。多分大部分の人はその時点でもう講習には行かなくなるでしょう。しかしそこに2〜3人でも男性の受講者がいれば、その方達との交流を楽しみに講習に通う事が可能になるはずです。それと理屈は全く同じなのです。じゃあ、その“始めの一歩”になる女性プレイヤーはどうやって獲得するのか。私が存じている Magic の女性プレイヤーというのはそんなに多くはないですが、多くの方が共通しておっしゃったのは「自分はカードのイラストを見てデッキを作っている。」というご意見です。女性は男性ほど勝利至上主義ではないと思われ、男性のようにゲームで勝てればいいという単純な動機でゲームに手を出してはもらえないようです。言い換えるとある意味男性の何倍も獲得が難しいのです。

 ちょっとこの部分はどう書こうか迷いながら進めているのですが、要するに「 Magic に女性が大勢手を出してくれるようにすれば、結果的に Magic はより多くの人達に遊ばれて大成できる。」という事です。以前ある小学校の先生が調べたところ、その小学校の高学年の男子児童は、当時ほぼ100%が遊戯王OCGを遊んでおり、しかも女子児童を加えてもその比率は90%を越えていたそうです。つまり少なくとも遊戯王OCGは“女の子にも遊べるゲーム”なのです。具体的にどこがどう面白くて遊んでいたかは分かりませんが、しかしそういう点において遊戯王OCGはちゃんとブーム化のための仕組みは持っていたのです。それに対して Magic が「女性プレイヤーか、珍しいな。」と言われる世界である以上、 Magic が多くのプレイヤーを獲得して大成する事はあり得ないと思います。ただ、そういう視点で一度 Magic という遊びの環境を客観的に見渡してみると、まあ現実がいかに厳しいかも痛感すると思いますけど。そして Magic というゲームは、知らない間にそういう“取っつきにくい”“居心地が悪い”という印象を、女性だけでなく多くの趣味・趣向を持つ人達に与えてしまっているのです。でもさすがにコレクターにまでそういう印象を与えて逃げられる“トレーディング・カードゲーム”は終わってる訳で (^^; そりゃあ廃れて当然という気がします。

 現状のプレミアイベントにどういう趣向の人達がどの位出入りしているか。それを冷静に分析して将来予測を立てると、実は Magic というゲームの現状や未来はかなり正確に把握できるはずなのです。そして少なくともWoCは Magic がこういう形で販売不振に陥ることに、かなり以前に気が付いていたはずなのです。恐らくそれに対するWoCの答えがMTGOだったのでしょう。でもそれってちょっと淋しすぎるんですよ。あまつさえそれに対してHJは、結果として「俺達が開くプレミアイベントには、参加費を払って来てくれる競技プレイヤー以外は不要だ。だから会場もギリギリの広さしか借りてないし、バイヤーも閉め出してやったぜ!」と豪語し、それを実践してきた訳です。 (^^; そういう仕様で作ったシステムを動かしたから、期待通りに競技プレイヤー以外は Magic からいなくなった。要はたったそれだけのことなのです。ただしそれ故「HJ経由の高額なパックなんて買えないよなあ。」と言い出す人が増えてパックが売れなくなった。これもまた見事なまでにシステムの仕様通りなのですが(爆)。

   

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