女神達の憂鬱 
 
 今回は“アクエリアンエイジ”に関するお話です。

第一部:アクエリの現状

 アクエリは今や、間違いなく日本国内での勢いが衰えているように見受けられます。ただ逆に言うと、文字通り全盛期のアクエリを知る人ですと、やはり「アクエリには短いなり、それなりに1つの時代があった。」という印象は大なり小なり持たれているのではないかとも思います。じゃあ実際にアクエリは昔はどうで、最近はどういう状況になっているのか、それを確認するためにブロッコリーの決算資料を調べてみました。残念ながらアクエリ個別の状況は不明だったのですが、ブロッコリーが取り扱っているトレーディングカード(TC)全体の市場動向に関しては資料が見つかりました。
☆★☆ ブロッコリーのTC部門の推移 ★☆★
会計年度製造額(原価換算)販売額(卸売+小売)
2002年2月期11.21億円18.82億円
2003年2月期5.34億円9.85億円
2004年2月期4.02億円7.71億円
※ ブロッコリーの決算資料より抜粋    
 今までTCユーザーは、多くが「トレカなんて商品は印刷物と同じで、原版の制作を除いて原価はあって無いようなものじゃないか。」という認識を持っていたかと思います。ただこの決算資料を見る限り、TCって意外と売上に対する原価比率が高いんですね。この辺は発行数量が遊戯王OCGとかデュエル・マスターズのクラスになると、また事情が変わってきそうですが。

 で、本題。ブロッコリー・ブランドのTCの中でも、やはりその主力はアクエリだろうと思います。従ってこの生産や売上の推移が、そのままアクエリの栄枯盛衰を現している、そう考えることにはそんなに大きな飛躍はないだろうと思います。じゃあ現在のアクエリはどういう状況になっているのか。これに対する1つの見方として「アクエリは既に2002年度の段階で衰退期に入り、今はそのままの低迷状態でなんとか維持されている。」という意見はそんなに間違っていないだろうと思います。つまりぶっちゃけた話「アクエリの浮き沈み云々を今更語ってもしょうがないかも。」という事にもなるのですが(笑)。ただ2003年度もブロッコリーのTCは前年比で更なる低迷傾向が見られますから、今年度はこれが更に・・・という可能性はあるだろうと思います。

 じゃあ、この実績は具体的に他と比べてどうなのか。例えば Magic は2004年3月期において、代理店からの出荷額が数億円〜十数億円程度と予想されます。これに対してブロッコリーのTCが全体で約7億円。昨年度の国内流通分を見る限り、実は両者にはそれ程大きく差がないのかもしれない位です。(ただし Magic には加えて並行輸入分がありますし、アクエリの売上はこの額よりも間違いなく少ないので、実際に我々が感じる両者の差はそれなりにあるでしょう。)でもアジア市場での売り上げを未だに約95億円維持している遊戯王OCGや、日本国内だけで110億円を売り上げたデュエル・マスターズに比べると、さすがに見劣りするのは避けられないでしょうか。あと最近ですと、ムシキングが発売から2年ほどで累計出荷枚数=1億枚を達成したそうです。あのゲームのシステムでは、単純にカード1枚が100円ほどで売れているはずですので、そうなるとムシキングの市場規模は販売額ベースで年間平均50億円程度と予想されます。出荷額ベースで見ると年額30億円規模程度になるのでしょうか。ただ例えばの話、現在 Magic を扱っているホビージャパンという会社は、それこそ Magic を扱う前は年間の総売上が20億円ほどの企業だったはずです。それで苦しいとはいえ企業を維持し、また自社出版物でそれなりの知名度は得ていた。つまりその程度の売上でもブランドを維持することは十分に可能なはずです。多分変な手の広げ方さえしなければ・・・ですが(笑)。

 では次に、アクエリ関連のイベント開催の状況です。オフィシャル・サイトの公認大会と準公認大会の一覧を見ると、現在アクエリのイベントの数は“そんなに少なくはない”という感じです。一覧のリストはかなり長いのですが、1エントリーごとにかなり詳細な説明が書かれているため、全体のエントリー数がどれだけあるか正確にカウントできないです(笑)。あと地域毎に区分されているわけでもないので、地方毎の状況を確認することもできません。ただ公認大会にあれだけのサポートを行い、なおかつ売上が厳しい状況にあって、それだけの数のイベントを後援しているのはさすがという気がします。それは例えば、各イベントで設定された参加費の平均額辺りにも良く現れていますので、これに関しては皆様ご自身の目で確認されることをお奨めしておきます。参加費無料とか100円程度なんてイベントは、少なくとも Magic 辺りではシステム上かなり無理がありますので。

 ただ実は福井では、かなり以前からアクエリでも公認大会の開催が止まっていると思われます。これは福井県内で活躍していたアクエリの公認ジャッジ諸氏がその活動を休止してしまった事に起因する部分が多々あると想像されます。本当福井の人間って、こういう面において見切りを付けるのが早いのよねえ。 (^^; ただ実を言うと、その福井市でもアクエリのイベントは非公認という形で存続されていて、継続という点で見ると随分と長い間続いているようです。アクエリの公認イベントはメーカーからのサポートが手厚い分、逆に開催のための条件が厳しくならざるを得ません。(参加賞や賞品を搾取する輩が現れる危険が十分にありますので。)ですからそういう手間をかけずにイベントを開きたい。そういうニーズは当然あり得るだろうと思います。ただそういうイベントでは十分な情報発信が行われていないようで、なかなか全国の動向を知る手がかりは乏しいようです。

第二部:アクエリ衰退の要因

 アクエリは一時期、ごく短期間ではありますが間違いなく日本国内に1つの市場を築きました。以前にも書きましたが、かつてタカラが発売したバウリンガルは、メーカー出荷額ベースで24億円を売り上げて“ブーム”と言われました。そしてアクエリは一時それに近い売上を記録し、そのピークの時期が少しずれていれば、それこそTCGの元祖である Magic をも(日本国内限定ですが)抜き去っていたかもしれないのです。しかし今はそうなっていない。じゃあ、なぜそうなってしまったのか・・・という事です。これについて全国的な傾向を分析するのは難しい作業になるので、今回は私自身とか私の周囲にいるマインドブレイカーの状況を書いてみます。

 まず最初に書いておきますが、私自身は今現在、別にアクエリをやめたわけでもなければ、アクエリから撤退したわけでもありません。もし私がそういう判断をしたのであれば、それこそうちのLINK集から“アクエリ”の項目はきれいサッパリ消え去っているでしょう。しかも私個人にはアクエリに対して、むしろ最近の Magic よりは遙かに“機会があれば買いたいTCG”という思いがあります。ただ今は言ってしまうと“その機会に恵まれない”わけです。

 その理由は幾つかあります。ます1つに“情報がない”という問題です。私は基本的にTCGの世界ではコレクターなので、どういうカードイラストがあるのか分からないTCGには手を出さない、あるいは手が出せないのです。その点 Magic は色々な形で最新カードセットのカードイラストが出てくるのですが、どうもアクエリにはそういうサポートがありません。また福井でのアクエリのイベントが縮小し、私の周囲にもアクエリを買い続けるマインドブレイカーがいなくなってしまいました。これによって私がアクエリの最新カードセットに関する情報を得る機会は実質的に失われてしまったのです。

 あと“プレイヤーの減少”も大きな問題です。私は本業がコレクターですから、別に遊ぶ機会などなくてもカードは買い続けるだろうと思います。実際に「アルテイシアがロリロリだ!」と言われれば、単発でガンダムウォーを箱買いするような“痛い人”なので間違いありません(爆)。ところがそういう目指すカードがあるか否かの情報がない上に、買ったカードの残った分をトレードしてくれる、あるいは引き取って有効活用してくれる人が周囲にいない。これが私個人のアクエリ購入をかなり躊躇させます。特に少し前から、カードセット内に“野郎が描かれたカード”があるのがかなり嫌です。 (^^; こんな物はさっさと自分の手元から消し去りたいのですが、でも引き取り手がいないのでどうしようもないのです。別に破って捨てても問題はないのですが、私はどこかの誰かさんみたいに破り捨てるためにTCGを買うほどバカじゃありませんので(嫌爆)。

 その他、私の周辺にいた(過去形)マインドブレイカー達の意見をまとめてみると・・・

 ・・・という事で、やはり Magic 辺りでも言われている“新製品発売の弊害”が見事に現れている感じです。特にイレイザーの撤退に関しては、身も心もWIZ−DOMに捧げていた私ですら「これ・・・大丈夫なんだろうか?」とか思いましたし。もしこの撤退がWIZ−DOMに起こっていたとしたら、私自身その瞬間にアクエリにはきれいサッパリ三行半を突き付けていたでしょうから。

 今になって振り返ってみると、アクエリに起こった“本編への男性カードの収録”と“イレイザーの撤退”という2つの事件には、メーカー側にある共通の思惑があった気がします。元々アクエリは、まあ間違いなくヲタクとかマニアと称される男性ゲーマーに支持されて売れた物です。ところがブロッコリーは途中から、アクエリのブーム化のために女性ゲーマーの獲得を思い付き、それに向けた施策を取り始めたと思われます。上に挙げた2つはまさにその代表的な施策だったわけです。ただし後者は、イレイザーが邪魔だったというよりは“女性に受けるキャラクタを入れやすい世界観を持つ勢力が欲しかった”という感じだったと思いますが。しかしこれも前から言っている話で、要は「そういう世界観の変更で、失うファンを大きく上回る数のファンを手にできる見込みがない変更なら、むしろやらない方が良かった。」という事です。極端な話、普通に考えるとイレイザーの撤退によって、それだけでアクエリはファンの1/5を失うのです。じゃあその損失に見合うだけの女性ゲーマーを獲得できるのか・・・普通に考えれば無理なのは容易に見当が付きます。 (^^; どう考えても勝算があったとは思えませんし、実際アクエリはその賭けに負けたわけです。

 あと、かなり以前に「アクエリには世界展開までをも見越したSagaI〜SagaVまでの構想が想定されている。」というお話を伺ったことがあります。しかしどうも見ているとSagaIIへの移行が計画的だったという印象は薄いですし、ましてや海外への進出も「取りあえず韓国辺りで様子を見て・・・」という、何とも消極的な印象でした。 (^^; ところが現実はそうではなく、私が伺っている限り“アクエリはトレカとして欧米でかなりの引き合いがあった”そうです。これはある大手の有名TCGショップの関係者の方からも伺っている話なので間違いはないでしょう。つまりそれこそSagaIの段階での欧米進出には、実は私に言わせるとそれなりに勝算はあったのです。ですから「下手に日本で女性に取り入るよりも、欧米の“自分をヲタクと豪語して憚らない痛い人達 (^^; ”を相手に商売をした方が、アクエリは真の成功を迎えられたのではないか?」というのが私個人の見方です。

第三部:アクエリの再生

 さて、最後は「アクエリに市場挽回の施策はあるのか?」というお話です。

 この際なのではっきり言いますが、単にアクエリを“売れるTCG”に変えたいのであれば、申し訳ないですが今すぐアクエリを“エロTCG”に変えるべきでしょう(嫌爆)。それこそ でじこ だろうが ぷちこ だろうが構わず脱がせてあんな事やこんな事をさせれば、まあそういうゲームが好きなヲタクとか、もう2次元しか愛せない痛い人達が死ぬ気で買い支えてくれるでしょう。 (^^; しかし多分ブロッコリーはそれは嫌だろうしできないでしょう・・・っていうか、そもそも でじこ や ぷちこ が未成年という設定である時点で犯罪ですし(爆)。あと昔からアクエリを楽しんできた方々にも間違いなく不評だろうと思います。ただ言ってしまうとアクエリは“最も売れる商品にするための大きな手段を封印したまま戦っている”わけで、ある意味苦戦するのは当然なのです。でも私はブロッコリーの関係者は、そんな事は最初から分かってアクエリを作り、また売っているものだとばかり思っていたのですが。

 発売当初、アクエリのカードイラストにはかなり無造作に女性の裸が使われていましたよね。ところが女性プレイヤーの獲得を目指し始めた頃から、それでは女性に敬遠される(あるいは市民権を得られない)と気が付いてやめた。申し訳ないですが、私に言わせると「じゃあ何で最初からそうしなかったの?」という事です。例えば Magic 辺りの事例をちょっと研究してみれば、創生期のカードイラストに魅せられてTCGに手を出したプレイヤーが、そのTCGの販売や発展にどれだけの貢献をしているのか、大体見当が付くだろうと思うのです。それが分かっていたならば、それこそ発売の前段階で10年とかそれ以上の鑑賞に堪えられるカードイラストを作り込み、それをずっとアクエリのシンボルとして売り続けても良かったのです。でも実際にアクエリがやってきた事って、言ってしまうと「取りあえずゲームを買ってくれそうなヲタクに受けそうな裸の女子を入れてみました。」という短絡的な発想しか見受けられないのです。だから後になって変更を余儀なくされる。これじゃあ創生期からのファンを維持できないでしょう。これは例えばカードセットに男性のイラストを入れること、あるいは1つの勢力をごっそり外して入れ替える事にも言えます。やはり素人なりの見方としては“アクエリは無計画すぎた”と言わざるをえない気がします。

 じゃあ、どうすればアクエリは創生期の勢いや賑わいを取り戻せるのか。それは“創生期の姿に戻る”しかない。これが私個人の結論というか提案になるかと思います。ただ一度離れてしまったファンの気持ちを取り戻すのは並大抵のことではないので、それこそアクエリが徹底的な原点回帰を行って新製品を出しても、まあかつてのファンの半分も戻ってこないんじゃないでしょうか。だとすれば、アクエリには“新規ユーザーの獲得を目指す”道しか残されていないことになりますが、そうなると今度はアクエリに染み付いた“ヲタクのTCG”というブランドイメージが邪魔になります。 (^^; となると・・・やはり“アクエリ”という名前を一度捨ててみるのも1つの手なのかな、という気がします。例えばもうちょっとゲーム性を落としてシステムを単純化し、コレクションで買ったカードで気軽にゲームも遊べるような路線を目指すとかでしょうか。どう考えてもアクエリには“カードゲーム”よりも“トレーディングカード”としての生き残りしか道はないのではないかと私には思えて仕方ありません。

 あと私個人の話をすると、私はあくまでTCGのカードに“きれいなお姉さん”の存在を求めています。申し訳ないですが、今時ネット上には無修正の裏ビデオですら無料で転がっているような状況なので、そんな2次元の裸をおかずに何かする必要を私は見出していませんので。 (^^; 極端な話ですが“TCGを知らない知り合いに自信を持って見せられる”物が欲しいのです。少なくとも私個人は、昔のアクエリにそういうカードを見つけ、だから買っていました。しかし今はそういうカードが見つからない、あるいはあるのかないのか情報すらない。だから買わないだけです。せっかくブロッコリーは無料で遊べるアクエリのソフトとか小冊子を配布しているのですから、そういう物を“アクエリを知ってもらう”ために更なる活用を図り、もっと費用対効果の高い販促に結び付けるべきだ。そしてそういうメディアに堂々とカードイラストを掲載できる、クオリティの高いトレカになる路線を改めて目指してもいいんじゃないか。これが私からのもう1つの提案になるでしょうか。

 再び私自身が、泣きながらお札を握りしめて店頭でアクエリのパックを剥く、そんな状況が訪れることを心より祈念しております。

あいせんの“本音の部分”

 本編の中でも少し触れましたが、少なくとも私とか私の周辺にいたマインドブレイカー達は、アクエリというゲームに“エロ”は求めていなかったと思います。むしろ「あまり裸が多いと人にアクエリを勧めにくい。」「今後アクエリを一般の人達に紹介するには、むしろ裸のイラストは邪魔なのではないか。」という意見は発売当初から言われていました。そういう検討が事前に十分行われていたら、アクエリはもうちょっと違った形で世に定着できたのかも知れません。

   

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