第一部・総括 
 
 

あ い こ :皆さんこん○○は…って、あれ?」
あいせん:どうもです。」
あ い こ :なんで今回はいきなり対談形式なんですか?」
あいせん:うん、ちょっと思うところあってね。」
あ い こ :というと?」
あいせん:あいこ先生のエッセイが一区切り着いたので、ここまでを“第一部”としてまとめて、最後に総括をしようかと思うんだ。」
あ い こ :ああ、そういうことですか。」
あいせん:ただし2人の意見を戦わせて集約を図るのではなくて、両論を併記してそれぞれの長所や短所、問題点なんかを明らかにしようと思ってる。基本的には今後もこういう形でやりたいな、と思ってるのでよろしく。」
あ い こ :こちらこそ、よろしくお願いします。」
あいせん:さて今回は『今後のマジックが進むべき基本路線』という内容だったかと思うので、内容を簡単にまとめてみましょうか。」

遊びとしてのマジック(多目的型マジック)
  • 競技プレイヤーだけでなく、ファンデッキ使いやコレクター、あるいは初心者にも十分楽しめる物。
  • どの遊び方が主流で、どれが非主流かという意識は(売り手にも買い手にも)基本的にない。
  • カード能力だけでなくカードイラストやフォーマットもバラエティに富んだ物になっている。従ってカスレアですら十分に楽しめるような選択肢の広い遊びになっている。
     
より競技志向の強いマジック(競技特化型マジック)
  • 基本的には競技プレイヤー、あるいはそれを目指す人達にのみ買ってもらう。
  • 特にスタンダードを軸としたDCI公認トーナメントの構築戦フォーマットをメインにした遊び方をする。従って発売するカードセットの内容もそれを踏まえた物にする。
  • コレクションやファンデッキ作成といった要素は重視しないし、それらが競技性追求の点から見て阻害要素になる場合は排除もあり得る。従って現状の基本セットもバッサリ無くすか、この思想に準じたパワーのある物にする。
     

あいせん:最初に挙げたのが僕が従来言ってきたマジックの基本路線。それに対してあいこ先生が取り上げたマジックの基本路線が後者ということになるかな。括弧内の名称は僕が勝手に付けた仮の呼び名ね。」
あ い こ :概略としてはこんな感じかな。」
あいせん:さて、次は両者の長所と短所を洗い出してみようか。」

多目的型マジックの長所/短所



様々な嗜好の人にマジックを勧められる。初心者用のフォーマットを用意することでマジックの敷居を低くできる可能性がある。
競技プレイヤーが引退してファンデッキで遊び始めたり、コレクターがコレクションの資金目当てに競技に首を突っ込むといった人の交流が活発になる。デュエリストを競技プレイヤーに発展させる動機付けや、競技プレイヤーをやめたデュエリストが引き続きマジックに接し続けるための手段が充実する。
遊ばれるフォーマットやデッキのバラエティが豊かになり、コレクションも活発になることで特定のカードへの人気偏重(シングルカード価格の高騰)がある程度防げる。またこれによりトレードが比較的スムーズになることが期待できる。
市場全体として見るとカード販売量が増える。これにより販売サイド(ウィザーズ/ディストリビューター/販売店)がユーザーサポートに回せる資金が増える。
自分が買える範囲のカードでマジックが楽しめるようになり、カードが無くてデュエリストが困るという場面が少なくなる。



販売店が取り扱うべき商品が多くなり、販売店の負担が増える。(十分な知識を持たない販売店は経営が難しくなる。)
使用できるカードの種類が増えることで膨大なカード&それに対する知識が必要となり、これにより初心者の敷居が高くなる可能性がある。また競技として“極める”という取り組み方が難しくなる。
販売サイドが誰をどうサポートすればいいのか良く分からず、結局どっちつかずになってしまう可能性がある。
デュエリスト1人当たりのカード購入量が減る。そのためマジック市場の拡大がうまく行かないと、結果的にマジックの売り上げが落ち込む可能性もある。
デュエリストの出入りが激しくなり、市場規模がなかなか安定しない。
競技特化型マジックの長所/短所



販売店が売るべき商品がはっきりする。(販売店でのデッド・ストックが減る。)
使うカードが限定されることで初心者がマジックに取っつきやすくなる面がある。
販売サイドがサポートをすべき客層がはっきりするので、パワーを集中しやすくなる。
フレッシュパックの購入に安心感が生まれ、プレイヤー1人当たりが買うカードの購入量がある程度増えることが期待できる。
プレイヤーに明確な目的意識があるため、常に一定のカード購入が期待でき市場規模が安定する。



マジックを始めようとする人が限られる。またニューカマーへの配慮がほとんどできなくなる。(生き残れる販売店がかなり限られる。)
一旦競技から脱落したプレイヤーを救済する措置がない。(“競技を止めた=マジックを止めた”になってしまう。)
特定のカードへの人気偏重にブレーキがかけられない。特にデッキのバランスが崩壊して最強のデッキが現れると、途端にそのパーツとなるカードの価格が急騰する可能性がある。また競技プレイヤーに必要なカードを供給する人がいなくなり、トレードがほとんど成立しなくなる。
プレイヤー人口の減少が避けられないため、市場全体として見るとカード販売量が減る可能性がある。これにより販売サイドが競技イベントなどに回せる資金が減る。(マジックが値上げされる可能性もある。)
プレイヤーがある一定量以上のカード購入を半ば強制され、いわば“金の切れ目がマジックの切れ目”になる。

あいせん:…とまあ、簡単に列記してみるとこんな感じでしょうか。」
あ い こ :そうですね、おおよそ大事なところは押さえてるかと思います。」
あいせん:さて、じゃあ『どっちがいいの?』と普通は聞きたくなるところなんだけど、今回はそれはやりません。最初にも言ったけどここはそういう話をするのが目的じゃないので。」
あ い こ :はい。」
あいせん:さて、では次に『じゃあ今のマジックはどういう売られ方をしているのか?』という話をしましょうか。」
あ い こ :まあ、ここが“ Echizen ぎゃざる”である以上、これはお約束かと思われます(笑)。」
あいせん:要するに最近のマジックは『両者のマジックの売り方のうち、特にウィザーズに利益がありそうな物を寄せ集めた形』になってるね。発売するカードは販売量が多くなる多目的型の物だけど、しかし競技を煽ることで1人のデュエリストが競技特化型であるかのようにカードを買うように仕向けてる。販促はかなり以前から、より手間がかからない競技特化型になってるけど、でもそれをはっきり意志表示しちゃうとファンデッキ使いやコレクターが逃げちゃうから、表向きは多目的型であるかのように装ってる。」
あ い こ :なんかデュエリストから見ると最低の売り方じゃないですか、それって。 (^^;」
あいせん:でもそう言われて言い返せる?」
あ い こ :確かに思い当たるところはありますよ。ウィザーズ社がどういう意図を持っているかは分かりませんが、結果的にはそういう不親切な売り方になっているとは思います。」
あいせん:要するにウィザーズも『競技プレイヤー以外の人達をマジックに取り込まないと、競技イベントどころかマジックそのものが立ち行かなくなる。』ということは分かってるんですよ。でも今やマジックプレイヤーはどんどん競技志向になってる。多分ウィザーズの予想を遥かに超えるスピードでね。だからウィザーズとしては現状を追認してそれに対応せざるを得ない。競技プレイヤーがマジックの主なお客になっちゃった以上、他の指向を持ったお客を切り捨ててでもね。」
あ い こ :はい。確かにそんな印象は感じます。」
あいせん:だけど、それにしては相変わらずウィザーズはデュエリストにカスレア入りのフレッシュパックを買わせてるんだ。競技プレイヤーはそんな物に1%の必要性も感じてないんだけどね。しかもこれはシングルカード販売店にとってもお荷物そのもの。1BOX開けて1枚出るか出ないかの超人気レアを引き当てるために、その何十倍もの不良在庫を抱えさせられるんじゃたまった物じゃないよ。」
あ い こ :実際日本でも多くのマジック販売店が店を閉めてますもんね。」
あいせん:さて、ここまでは全部僕の意見だから、ここであいこ先生にお尋ねしましょう。じゃあどうすればいいと思う?」
あ い こ :え!?、う〜ん…それって難しいですね。そんなに簡単に答えは出ませんよ。ただ…」
あいせん:ただ、何かな?」
あ い こ :私は基本的には『ウィザーズ社は自らが信じた道を進めばいい』と思ってるの。だって多くの競技プレイヤーは今までずっとそれに従ってきたし、しかもウィザーズ社はそういう競技プレイヤーの要望にそれなりに応えてきてくれてるから。日本選手権の賞金総額アップなんかもその一環になるかな。」
あいせん:ということは、あいこ先生は“現状維持”でいいと思ってるの?」
あ い こ :それははっきり言うけど『とんでもないですよ』という感じかな。少なくとも最近の競技プレイヤーは基本セットなんかまともに買ってない気がするし、構築済みデッキといった明らかに無駄な商品もあるわ。そういう物を洗練するとか無くすといった見直し、文字通りマジックというTCG全体を“競技へ特化”させてくれるなら、今みたいな競技指向でもデュエリストはちゃんとマジックが続けられると思います。」
あいせん:話の趣旨は分かりました。それに関しては私もこの場は賛同しましょう。じゃあ具体的にどうする?」
あ い こ :それを考え始めると難しいんですよね。基本セットへの再録カードの選択1つ取っても、間違いなく好みの問題が出てくるし。」
あいせん:基本的な発想はエッセイの中でも書いてるけど、具体策となると途端に難しくなる。そういう物です。」
あ い こ :こういうことを聞くのは変かも知れないけど、あいせん君は何か思い付きますか?」
あいせん:では1つ僕から『競技特化型マジック推進を完成に近づけるための決定打』を提案しましょう。」
あ い こ :え!?、教えて教えて!」
あいせん:…『日本語版廃止』」
あ い こ :えええっ!!!」
あいせん:今、日本の競技マジック推進にとって最大の障害になってるのは、日本国内でのマジック販売価格の高さと英語への適応力不足のはず。その両方の根元になっているのは誰あろう日本語版なんだよ。日本語版の流通経路があるから日本のマジックは高いんだし、日本語版があるから『マジックは英語が分からなくても遊べる』と勘違いする人が現れる。」
あ い こ :…あ、確かに言われてみればそうか。」
あいせん:だから少なくとも『日本語版マジックを買って世界一を目指せ!』というのはどう考えても矛盾してる。それって『欧米プレイヤーの倍近い経済的負担を自ら進んで背負い、競技マジックが英語圏を中心に発展していることをカード購入の際はひとまず忘れ、なおかつ彼らを打ち破ってトップを獲れ!』と言ってるのに等しいからね。」
あ い こ :…気が付きませんでした。あ、でもそんなことをすると…」
あいせん:『いよいよマジックにニューカマーが来なくなっちゃう』そう言いたいんでしょう?」
あ い こ :うん。」
あいせん:でも“無駄を省く”とはそういうことなんですよ。だからよくよく考えてみると、あのホビージャパンって不思議な会社なんだよ。カードゲーム事業部が『みんな日本語版を買おう!』とかキャンペーンをしている横で、GAMEぎゃざ編集部が『マジック遊ぶのに日本語版を買う奴はバカだぞ(そんなヌルい遊び方をしてるから君は大会で勝てないんだ!)』とか触れ回ってるんだから。 (^^;」
あ い こ :なんか…マジックのお話って難しいですね。」
あいせん:まあね。僕もかれこれ3年ほどこういうお話を扱ってるけど、おかげで(!?)最近は頭の天辺がちょっと薄くなっちゃったかな(笑…えないです、いやマジで (^^;;; )。」
あ い こ :…ハゲるのやだ〜。 (ToT )( ToT)」
あいせん:あいこ先生は大丈夫でしょう。まだ若いんだし…あれ、そういえばあいこ先生って今いくつなんだ?」
あ い こ :…そういう話ってあいせん君が決めるべきことなんじゃないの?」
あいせん:いや、そう言われても何しろ急な話で。 (^^; 一応誕生日だけは密かに決めてあったりするけど。」
あ い こ :え、いつなの?」
あいせん:『4月15日』」
あ い こ :なんで?」
あいせん:それは世間的には秘密。ただマジックの歴史上ちゃんとした理由があってそうしてるんだ。それも Homelands が云々とかではなくて Aysen Crusader そのものに由来する理由でね。この理由が分かる人はかなりのマジック通だと思うけど。」
あ い こ :そうなんだ。」
あいせん:あ、あいこ先生にはその“出典”を見せてあげよう。」
あ い こ :どれどれ…(確認中)…あ、なるほど。確かに『4月15日』だ。」
あいせん:でしょう!」
あ い こ :そうなると私がカードとして世に出たのは1995年だから…現在7才と2ヶ月ちょっと。なんだバリバリの美少女じゃない。」
あいせん:自分で“美”を付けるな! (^^;;; というか、今までの口調だとどうひっくり返しても7才には見えないぞ。」
あ い こ :いいじゃない。世の中には5才で毒舌吐くキャラクタもいるんだし。あ、私も言葉の語尾に『にょ♪』とか『にゅ♪』とか付けるとブレイクできるかしら?」
あいせん:… (^^;;; ま、まあいいや。とにかく話を元に戻そう。まあそういうことだ(何が? (^^; )。でも僕が主張する多目的型マジックにも欠点は少なからずある。実際それ故最近のマジック人気が衰えたとも言える部分があるし。」
あ い こ :例えばどんな?」
あいせん:うん。ファンデッキ使いやコレクターはマジックが自分の趣向に合わないとすぐに逃げ出しちゃう。だからそういうファン層を相手にすると販売サイドは極めて不安定な購買層を相手に販売戦略を取らざるを得ないんだ。実際に格ゲーはかつてこれで失敗してる。正確には格ゲーメーカーが舵取りに失敗してるんだけどね。」
あ い こ :あ、そうなんだ。」
あいせん:創世記の格ゲーは間違いなく対戦が主目的のコアゲーマーの天下だった。しかし途中から同人ゲーマーが台頭し始めて、格ゲーメーカーはそういうユーザーをメインに据えて商売をし始めたんだ。“KOFの京&庵”といった辺りがその最たる例になるかな。」
あ い こ :なんでそうしたの?」
あいせん:そりゃあ答えは簡単。その同人ゲーマーの中に女性がたくさんいたからさ。」
あ い こ :日本では子供と女性がブームを作る。だから女性がより多い同人ゲーマーに狙いを絞ったのね。」
あいせん:ところが実際には同人ゲーマーってコアゲーマーほどゲームそのものに思い入れが無くて、ちょっとゲームの内容が自分の好みに合わないとか、極端な話“ひいきキャラが新作に出なかった”というだけでゲームから離れちゃうんだ。でも格ゲーメーカーは1度同人ゲーマーに媚びてキャラゲー化させた格ゲーを元の路線に戻せなくて、結局コアゲーマーすら見放す惨状になってしまった。まあそんな感じだよ。」
あ い こ :ということは、ウィザーズ社があまりにもファンデッキ使いやコレクターを重視しすぎると…」
あいせん:うん、間違いなく格ゲーの二の舞を踏むな。だから間違ってもファンデッキ使いやコレクターをマジックユーザーのメインに据えちゃいけないんだ。それよりは絶対に競技プレイヤーを重視すべきだよ。だって彼らは余程のことがない限りマジックを見放したりしないだろうから。」
あ い こ :つまり、そういう意味では私の意見は合ってはいるのね。」
あいせん:そう。だから僕はその意見を否定もしないし、こうやって自分のサイトに載せてるんだって。」
あ い こ :確かにそういうお話は感覚的には理解できるんだけど、でもなんでそうなるの?」
あいせん:要するにそもそも“マジックに求めている物”が違うからさ。こういう言い方をすると怒られるかも知れないけど、極論すると競技プレイヤーはマジックにゲームそのものの面白さなんか求めちゃいない。そこに高額賞金やポイントがかかった競技イベントがあって、そしてそこでの対戦に熱くなれる。だからマジックをやってるんだ。これに対してファンデッキ使いやコレクターはマジックにゲームとしての面白さ、言い換えると“俺好みのマジック”であることを求めてる。だから現実がそうじゃないとマジックを止めちゃう。」
あ い こ :なるほど、そういう構図になってたのか。これなら両者の意見が折り合わないのも納得できます。」
あいせん:ちなみに両者が“最強のデッキやカード”に対して取る行動が180゜異なるのもそういう理由からだと思う。競技プレイヤーにとってそういう話って、自分が競技イベントで勝ち進むための1つの情報でしかない。だからそれ程文句は出ないし、このデッキやカードが強いと言われれば何の迷いもなく使うんだ。でもファンデッキ使いやコレクターにとっては、最強のデッキやカードの存在は死活問題になりかねない。ファンデッキ使いが絶対に勝てなくなるようなマジックはコレクターにとっても住み難い環境になる。間違いなくトレードが沈滞化するからね。だから彼らは文句を言うんだ。」
あ い こ :結局『バランスが大事』という結論になるのかしら。」
あいせん:う〜ん、どうだろう。あいこ先生が言う“競技特化”って、基本的な路線としてはベストとは言えないにしろベターな選択肢の1つだとは思うんだ。ただそうするとマジックは従来の問題点の多くが解決する代わりに、今回取り上げたような新たな問題点を抱えることになる。それをどうやって解決するか、すべてはそこなんだよ。それは“多目的型”を推進する場合も同じだけどね。」
あ い こ :こんなテーマ1つとっても奥が深いのね。」
あいせん:そうだなあ。多分10人集まれば10通りの意見が出てくると思われるし。」
あ い こ :さて…ちょっと長くなっちゃったので第一部の総括はこの辺で。」
あいせん:そうだな。でも、これ本当に“総括”になってるのか? (^^;;;」
あ い こ :あ、それでなんだけど、次回のテーマは“日本語版”にしようかと思います。」
あいせん:了解です。そこから第二部がどっち方面に掘り下げられるのか、今から楽しみにしてます。」

※ “ Postscript ”はお休みします。
   
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