第三部・総括 
 
 

あいせん:さて、今回の第三部はかなり難産だったみたいですが。」
あ い こ :そうですね。一応私なりに“デュエリストの一生”みたいな物を追いかけたつもりなんですが、いろいろと書きながら考えることが多かったです。」
あいせん:今回のエッセイを読んで感じるのは、やはり今のマジック、特に日本のマジックが抱える“いびつさ”だろうな。だから初心者から見ると取っつきにくいし、一旦始めてからも心底楽しめる物になってない。だからそもそも人が寄りつかないし、一度足を踏み入れた人達も多くが逃げ出してる。そんな感じかな。」
あ い こ :入り口も狭ければ中も窮屈。これじゃあ普通なら中の人達は出口に向かって殺到しますよ。」
あいせん:でも、そういう話は今までにもあちこちで出てきたし、うちでも何度か話題にしてきた。しかしそれで世の中は何も変わってないし、むしろ状況はどんどん悪くなってる。そこでだ…」
あ い こ :そこで…なんですか?」
あいせん:今回はこの辺の話を、それこそ“ダメもと”でもうちょっと具体的に掘り下げちゃおうかと思う。」
あ い こ :なんか嫌な予感がするんですが(汗)。」
あいせん:ああ、別にあいこ先生は気にする必要はないよ。最終的に責任を取るのは僕だから。 (^^;」
あ い こ :ここで私がうなづいちゃっていいものか、よく分からないんですが。 (^^;」
あいせん:第三部内の Postscript で『競技マジック推進派は主流派ではあるが多数派ではない。』という話をしたよね。まずはあのお話を具体的なデータで証明してみようかと思う。」
あ い こ :…そんなことができるんですか?」
あいせん:一応可能だよ。しかもそのデータそのものはウィザーズとホビージャパンが発表してるデータだし。」
あ い こ :え!?、そうなんですか?」
あいせん:ただしそのデータというのは、以前にも取り上げた物なんだけどね。『日本のマジック人口は約130万人』というホビージャパンの発表と、『DCI公認トーナメントにおける構築戦の日本人プレイヤー数は約1万人。』というDCIが発表してるこの2つです。…はい、計算して(笑)。」
あ い こ :えええっ、ちょっと待って下さいよ。 (^^; …あれ、この2つのデータが事実だとすると、構築戦ランキングに載ってる日本人プレイヤー数って、日本人デュエリスト全体の1%もいないじゃないですか。」
あいせん:少なくともこのデータは2つとも、マジックの発売元が発表してる“事実”のはずだよ。」
あ い こ :ということは、日本のマジックって今までこの1%にも満たない人達向けの販促しかやってこなかった。そういうことになるんですが。」
あいせん:はい、そういうことになりますね。しかも日本でのマジックに関する販促予算の大部分が競技イベントに費やされているとなると…」
あ い こ :その恩恵を受けられるのも、その1%未満の限られた人達のみ。」
あいせん:そういうことだね。僕がマジックについてこういう意見を書き始めた、そもそもの出発点の1つがここにあります。今までそれは印象というか主観で言ってただけなんだけど、こうやって具体的なデータで見せられるとかなり驚愕するでしょう?」
あ い こ :確かにそうですね。でも普通はメーカーの販促って、ユーザーの最大公約数を狙って行うものだと思うんですが。」
あいせん:これ以降は僕個人の主観を交えて話をするね。日本では過去に130万人という人達がマジックに関わってきた。確かにそうかもしれない。でもどうだろう、今はそのうち50万人がいるかいないか位で、しかもそのうちの更に半分以上は半ば休業状態なんじゃないかな。確かに1万人あるいはその数倍のデュエリストが今も競技マジックに関わっている。それは認めます。しかし福井での様子を見ても分かるけど、その競技マジックに関わった人達全員が競技マジックそのものを肯定しているわけじゃない。他に誰もイベントを開いてくれないから仕方なく参加した。GAMEぎゃざに載ってたからあまり後先考えずに来ちゃった。そういうデュエリストだって決して少なくはない。」
あ い こ :その辺は以前に行ったアンケートにも現れてましたよね。“公認”という肩書きはありがたがるのに、いざ『じゃあ君の今のポイントは?』とか聞かれると答えられない人が大多数でしたし。」
あいせん:ところが現実は、その明らかに少数派である競技推進派が、今や日本のマジックではなぜか主流派なんだ。確かに彼らの声は大きい。それは認めますよ。ひょっとすると顔も大きいかもしれないけど。」
あ い こ :そういう余談はいいです(笑)。」
あいせん:でもそういう人達の意見だけを聞いて売り方を決め仕組みを作ってきた、その結果が今現在のマジックなんだ。はっきり言っちゃいますが、到底成功してるとは言えないよね。むしろ今や失敗事例にすらなりつつあるし。」
あ い こ :まあこの問題を競技推進派だけに責任を押し付けちゃうのは問題だとは思うんですが。」
あいせん:別に僕は彼らに責任を押し付けるつもりはないよ。ただここでは『今後をどうするの?』という話がしたいだけなんだから。はっきり言うけど、今まで通りのやり方を続けるならマジックに“日本語版発売10周年記念”はないだろうからね。」
あ い こ :私もそんな気はします。」
あいせん:じゃあ質問です。なぜ彼ら競技推進派はメーカーに対して大きな声で意見が言えるんでしょうか?」
あ い こ :それは普通に考えれば、彼らはメーカーから見て“カードをいっぱい買ってくれて販促までしてくれる上得意のお客様”だからで…あっ!」
あいせん:あいこ先生も気が付きましたね。そう、彼ら競技推進派は少なくともホビージャパンから見ると上得意でもなんでもないし、今やむしろ商売敵のはずだよ。ただしウィザーズから見れば間違いなく彼らは上得意のお客様だけどね。」
あ い こ :私どうしても分からないんですが、なんでホビージャパンはそういう競技推進派をあそこまで優遇してるんですか?」
あいせん:1つは“他に有効な販促が思いつかないから”だろうな。彼らの持つ肩書きや知名度を利用する、あるいは知名度そのものをねつ造してまでヒーローに祭り上げ、それを突破口に無知なお子さまにマジックを売りつけたい。表現は悪いけどそういうことなんだろう。それと…」
あ い こ :それと、なんですか?」
あいせん:この部分はあくまで僕個人の推察なんだけど、実はある特定の競技推進派グループがホビージャパンを利用してるんじゃないかという気がするんだ。」
あ い こ :どういうことですか?」
あいせん:端的に言ってしまうと『そのグループが某誌編集部を半ば乗っ取ってしまってる。』そういうことです。」
あ い こ :…え!?」
あいせん:言い方を変えると『競技マジック推進という名目で、あるグループが自分達の思想を広めるのに某誌を利用していて、今やその誌面がホビージャパン自身の利益向上(=マジック日本語版の売り上げアップ)のために機能していない。』ということになるかな。」
あ い こ :あ、そう言われるとなんか…。」
あいせん:今まで『これってなんか変だよなあ?』と思ってた現象に一応の説明が付くでしょう。特に某誌の内容とカードゲーム事業部との方針がかみ合っていない辺りが。 (^^;」
あ い こ :そうなんですよ。確かにそういうことなら、某誌のコンテンツが日本語版マジックの拡販に役立ってない理由もうなづけます。多分そのグループの最終目標はそこにはないですもんね。」
あいせん:そういうことです。今やそのグループ自体が並行輸入の英語版の供給元にすらなってる可能性だってあるし。」
あ い こ :ねえ、聞いちゃっていいですか。その“グループ”って具体的にどこなんですか?」
あいせん:おいおい、それを僕の口から言わせるかい(笑)。」
あ い こ :いいじゃないですか。勘のいい人達はもう気が付いてますって。」
あいせん:つまりあいこ先生も気が付いてるってことじゃないですか! (^^;」
あ い こ :だってぇ…私の口からは怖くて言えないんですもの。 (^o^ )( ^o^)」
あいせん:それにしては、なんかめちゃくちゃ楽しそうだね。 (^^; でも最近の某誌の誌面を見ると、ある程度日本のマジック事情を知ってる人なら察しが付くんじゃないかな。そう考えると某氏が公認ジャッジをクビになって以降も、あそこでライターを続けられてる説明も付くし(苦笑)。」
あ い こ :…それって限りなく答えを言っちゃってるようなものですよ。 (^^;」
あいせん:まあそういう思想活動自体、僕は悪いことだとは思ってないよ。僕だってやってることは似たようなものだから。でもああいう媒体は発言力や影響力が大きいから、個人がコントロールするからには然るべき責任を取ってやってほしいよ。それこそ『このやり方で日本のマジックは間違いなく成功するんだ。これでダメだったら編集部一同揃って腹切ります!』位の決意は見せて欲しいかな。あ、今のセリフの部分に<B>タグ入れといてね。」
あ い こ :でも、そこまでやる気があるとは思えませんけどね。それだったらもうちょっと“誰が読んでも面白い雑誌”になってる気がしますよ。」
あいせん:…あなたがそれを言いますか(汗)。」
あ い こ :一応私はあいせん君が作ったキャラクタなんですから、それなりに“毒”はあるんです!(泣笑)」
あいせん:いやまあ、それは以前からのやりとりで分かってたことではあるんだけど。 (^^;」
あ い こ :なんですってぇ〜!!(笑)」
あいせん:え、あ、いやあ…後でアイスでも買ってくるので今の一言は忘れるように(平謝り)。」
あ い こ :…ならよろしい。 (^^)」
あいせん:ええっと、どこまで話したっけ…っていうか、今回また最初から話が随分と本筋からかけ離れちゃってるんですけど。」
あ い こ :あ、言われてみれば。」
あいせん:最近特に強く感じるんだけど、日本のマジックってとにかく面倒な遊びだよね。入門した途端にプロと同じ取り組み方を求められ、何年経ってももの凄い量のカードを買い続けさせられる。こんな遊びがよくもまあ6年も遊ばれ続けたものだと思うよ。」
あ い こ :それは感じますね。確かに競技マジックの世界はそれなりににぎわってる印象もあります。でもそれって結局は“マジックに入門してきた人達を1人残らず競技に送り込んだ結果”なんですよね。」
あいせん:まあ、そこまでやればそれなりの人は残るだろうからなあ。実際にはその残った数の何倍もの人達を切り捨ててるだろうけど。」
あ い こ :あ、そういえばこの前メールが来てましたよね。」
あいせん:うん。あのメールにはかなり共感する部分が多かったな。特に『自分達はアウトローなマジックを楽しんでます。(今のままの状態が続くなら)今後本道に戻ることはないでしょう。』といった辺りが。ただ残念なのはあれが僕のメアドに届いたことなんだよなあ。あいこ先生のメアドに届いてれば無条件にお便りコーナーに全文掲載だったんだけど(爆)。」
あ い こ :でも思うんですけど、結局のところ日本のマジックって今はそういう人達に支えられてるんですよね。特にホビージャパン経由で売られるマジックって。」
あいせん:それは間違いないと思うよ。少なくとも競技指向のマジックを志した時点で、日本語版とかホビージャパン経由の英語版は購入対象の候補から真っ先に除外されるだろう。でも日本のマジックはこれだけ競技指向が強まっているのに、実際にはそれでもまだ日本語版は相当数売れてる。これは間違いなくそういった“GAMEぎゃざが推奨していないマジックの遊び方をしている頑固なデュエリスト達”のおかげのはずなんだ。」
あ い こ :なんか考えれば考えるほど皮肉なお話ですけどね。」
あいせん:ちょっとここで、改めて“デュエリストの一生”のお話をしてみようか。特にあるデュエリストが誕生する瞬間のお話を。」
あ い こ :はい、いいですけど。」
あいせん:じゃあ聞きます。ある人がマジックを始めようと思った。そのきっかけってなんだろう?」
あ い こ :そうですねえ、普通に考えると“友達に勧められた”じゃないでしょうか。」
あいせん:僕もそうだと思います。あのGAMEぎゃざを読んで『マジックって面白そうだな!』とか思うはずがないし。 (^^; あとマジックは残念なことに、今は販促用のマンガもなければアニメもないからね。」
あ い こ :アニメはともかくマンガはあるじゃないですか。」
あいせん:でも最近どういう訳か登場人物達は生身で戦ってるよ。自ら刀や斧持って振り回したり。今や呪文カードやマナすら使わずに波動拳とか撃ちそうな勢いだよ。」
あ い こ :そのうち格闘マンガとしてTVゲーム化されたりして。」
あいせん:なんか笑えない展開だなあ。 (^^; まあいいや、話を戻すね。つまり今マジックを広めるための最大の決め手というか広告媒体は“口コミ”ということになる。要するに日本に始めてマジックが入ってきた頃と何ら状況は変わってないんだ。」
あ い こ :というか、むしろ状況は昔より悪くなってますよ。だって今のマジックは昔みたいにデッキ構築に自由度があって面白いわけじゃないですし、コレクション性も昔に比べると遙かに乏しいですから。」
あいせん:そうだね。だから昔に比べてマジックを始める人が減った。そりゃそうだよ。だって昔に比べると『このゲーム絶対面白いから遊んでみてよ!』と勧める人が明らかに減ってるんだから。こうやって言うと極めて分かりやすい話でしょう。」
あ い こ :言われてみるとそうですね。」
あいせん:しかも今のマジックは始めてからも大変だよ。今は1万円前後で買ったBOXから使えるレアが数枚しか引けないし。」
あ い こ :正確には“使えない”んじゃなくて“使わない”だけなんですけどね。」
あいせん:おお、ナイス突っ込み(拍手)。しかも数ヶ月前には高額な人気カードだった物が、別のエキスパンションが登場した途端に紙屑になっちゃう危険すらある。3000円で手に入れたカードが売ると500円にしかならない。その差額というか損失を自分でかぶる生活が何年も続くんだ。」
あ い こ :そして毎年やってくるブロック落ち。さらに進学や就職による環境の変化。」
あいせん:そりゃあ誰だっていつか思うよ。『僕はこんな事をこれから何年続けるんだろう?』ってね。」
あ い こ :で、あいせん君はこの先何年マジックを続ける気なんですか?」
あいせん:今のままのペースなら何年でもいけそうだよ。このままの状況が維持できればマジックイベントからの収益で毎月のパック購入費くらいは捻出できそうだし、そのイベントのおかげで安いカードが入手できてるから。」
あ い こ :ねえ、この際なんで率直に聞きたいんですけど、あいせん君は今現在、マジック未経験者にマジックを勧めたいですか?」
あいせん:絶対嫌だね(爆)。」
あ い こ :せめて、もうちょっとぼかした表現にしてくれるかと思ったのにぃ。 (ToT)」
あいせん:さっきチラッと紹介したメールの中にもあったじゃない。『そういった大会で勝つ(=競技マジック的な思想の)デッキを作るのをやめればいいのに』ってね。僕もそう思うよ。でも最近の人にはそれはできないだろう。マジックをやる以上は勝ちたい。だから情報に依存しちゃう。TVゲームを攻略本片手に説いちゃうのと同じ発想でね。そうなると多分スタンダード以外は遊ばなくなるし、結局マジックの本当の面白さを体験できない。それでマジックに対して悪い印象を持たれてやめられちゃうくらいなら、いっそ今はニューカマーの供給を完全にストップして、日本のマジックが純粋に遊んで面白いゲームに立ち戻れた時点で改めてご招待したいんだ。」
あ い こ :あ、そういうことなんですね。安心しました。」
あいせん:まあ言うや易し…なんだけどね。」
 
 
あ い こ :あ、ところでちょっと気になったことがあるんですが。」
あいせん:なんでしょう?」
あ い こ :この前の9月1日なんですけど、うちのアクセス数が一気に爆発したじゃないですか。」
あいせん:ああ、そうだったねえ。9月1日の一日だけで700件を越えたから(笑)。」
あ い こ :そんなに行っちゃったんですか!? (^^;」
あいせん:うちの平常時のアクセス数は大体1日当たり150件程度だから、かなり異常なアクセス数だったね。一応今回は3日ほどで収束したけど。」
あ い こ :なんでまた?」
あいせん:うん、ある大手サイトの掲示板で『オンスロートのスポイラーリストはどこ?』という話題の中に、ポツンとうちのURLを書き込んだ人がいるんだ。何の説明も付いてなかったから、あの流れで書かれれば普通は『ここにリストがあるぞ!』になるだろうな。 (^^;」
あ い こ :全く怖いですね、情報って。」
あいせん:そうだね。さっきのGAMEぎゃざに関する話もそうだけど。」
あ い こ :ねえねえ、次の第四部なんですけど、この“マジックと情報”というお話にしようと思うんですが。」
あいせん:いいんじゃないですかね。これまたかなり難しい話題ですが。」
あ い こ :ということで、今回の総括はここまでとします。」
あいせん:…ところで、本当にこれこのまま公開するの?(汗)」

※ “ Postscript ”はお休みします。
   
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