第七部・総括 
 
 

あいせん:さて、第七部の総括ですが、改めて“競技マジックを存続させることの是非”についてお話ししましょうか。」
あ い こ :分かりました。」
あいせん:じゃあ今回はあいこ先生のご意見から伺いましょう。」
あ い こ :はい。私としては競技マジックそのものには頑張ってほしいんです。ただはっきり言っちゃうと、少なくとも今の競技マジックってちょっと大きな顔をしすぎだとも思ってます。」
あいせん:…なんか、いきなり物議を醸しそうな話の成り行きですね(笑)。」
あ い こ :え、そんなのいつものことじゃないですか。 (^^; だって少なくとも日本のマジックって、競技をやってるプレイヤーは偉くてそうじゃないプレイヤーは偉くないという雰囲気すらあるじゃないですか。でも実際には今の競技マジックって間違いなくマジックの拡販にとっては足かせ的な存在にしかなってないんですよ。それがあるから初心者がマジックに入りづらくなってるし、それがあるから特定のカードが高騰する。しかも競技で使えるパックは売れて使えないパックは売れないから、販売店は常に不良在庫の不安におびえ続けてるでしょう。あまつさえ国内流通のパックは買ってもらえなくなってるし。」
あいせん:確かにね。日本に競技マジックが本格的に普及したのは多分ウルザサイクルの頃だと思うけど、それ以降日本のマジックはどんどん市場が縮小してると思われる。少なくとも競技マジックが日本のマジック拡販に貢献したという実績はほとんどなさそうだな。結局は口コミとジャンプにちょっとだけ載った紹介記事、あとコロコロのマンガが販促の主戦力だったわけだし。」
あ い こ :あとこの前掲示板で話題になった“願いカードとアンティ領域”のお話もそうですよ。ああいう形で誰かがローカルルールでマジックを楽しもうとすると、それを見つけた途端に競技マジックを知ってる人達が『そのカードの解釈はそうじゃねえ!』『こういうデッキじゃなきゃ勝てないぞ!』とか口出しし始めるんですよ。こっちはそんなアドバイスなんか求めてもないのにね。そして結局はスタンダードに押し込んでサイカトグを組ませようとする。これじゃあ誰だって息が詰まって逃げ出しますって。」
あいせん:それは僕も感じてるよ。そもそもゲームを遊びたい、楽しみたいだけなのに、なんでいちいちORACLEを読んだり高レベルジャッジにお伺いを立てないといけないのか。マジックがそういう堅苦しいゲームになってる以上、少なくとも小中学生には気軽に勧めたりはできないな。」
あ い こ :少なくともマジックをより多くの人達に広めたいと思ったときに、今の競技マジックって全然戦力にならないし、むしろ阻害する要素にしかなってません。私に言わせると“悪認定”です。」
あいせん:いや、僕もそういう意見は持ってるけど、でもそこまではっきりは言わないぞ(笑)。」
あ い こ :あ、だからこそ思うんですよ。前からあいせん君も言ってるように“競技とカジュアルの完全隔離”をすべきなんですって。競技マジックはマジックを楽しむ上で1つの手段でしかない。競技マジックはマジックを遊ぶ上での唯一絶対の正義じゃない。競技プレイヤーや公認ジャッジは一般のデュエリストに比べて特別偉いわけじゃない。そして競技マジックはカジュアル・マジックに不必要に干渉しない。そういう気運が必要なんじゃないでしょうか。じゃあカジュアル・マジックにいる人達をどうやって競技に招き入れるのか。それは競技プレイヤーが名実ともに“凄い人”になって、自分達に憧れて競技マジックに踏み込む人を増やせばいいだけの話なんです。」
あいせん:確かにね。でも正直言って今となってはかなり理想論だとは思うけど。」
あ い こ :それは私も感じてます。」
あいせん:最近色々とあちこち見聞きしてるけど、なんか日本の競技プレイヤーって例の匿名板辺りを巡回してる人が多いみたいなんだよ。そこでの自分向けの発言に日記なんかで反応してるのも見るし。でも本当にマジックの競技プレイヤーが凄い人で有名であれば、別に匿名板なんか見る必要はないと思うんだ。そもそもそんな暇なんかなくなるだろうし。じゃあなんで彼らは見るのか。それは“そこでの発言を読むくらいしか自分が話題にされてる、あるいは自分が有名人であるという確証が持てる事例がないから。”ということだと思うんだ。」
あ い こ :それって淋しくないですか?」
あいせん:でも仕方ないって。実際にマジックなんて外の世界にはほとんど露出してないんだし、ましてや外の世界で話題にされることなんてほとんど皆無だもん。実際に僕らの間では『ホビージャパンが公取委から勧告を受けたのは、日経新聞辺りにマジックの名前を掲載させて知名度を上げたという点では称賛に値する。』なんて意見すらあるんだし。」
あ い こ :それはどうかと思いますが(爆)。でもそうすると、実は競技プレイヤーにとっても今の競技マジックの環境って決して十分な物ではないんでしょうね。それは公認ジャッジにしてもイベント・コーディネイターにしても同じでしょうけど。」
あいせん:誰から見ても満足感が得られてない。そしてマジックそのものの拡販には足かせになってる。そんな競技マジックは要らない。確かにそれはある意味正論だと思うんだ。しかし残念なことに今のマジックにはそれしか残ってない。それをなくしちゃったらいよいよマジックは市場そのものが崩壊するだろう。」
あ い こ :でもウィザーズ社はホビージャパンはどんどん売り上げを落としてるみたいですから、今以上のサポート充実は期待できませんよね…本当どうすればいいんでしょうか?」
あいせん:まあはっきり言っちゃえば“現有戦力で勝負する”しかない。そういうことでしょうな。」
あ い こ :どうやって?」
あいせん:まずウィザーズが日本人プレイヤーに明確に要求を出すべきだろう。『日本人プレイヤーはホビージャパンからカードを買え。』『もっと一般の公認トーナメントを増やせ。』『プレミアイベントで結果を出せ。』ってね。そしてそれが実現しなければ明確なペナルティを課し、逆に達成されたら大いにご褒美を出す。極めて基本的なことですよ。」
あ い こ :でも日本のマジック・プレイヤーってそういう感覚がほとんどなさそうじゃないですか。あまつさえ今は競技プレイヤーが先頭に立って並行輸入の英語版を買いあさってるのが現実ですし。」
あいせん:だからこそ、そういう取り組み方は日本の競技マジックの推進にとってはマイナスにしかならない。そういう事実を体で覚えさせるしかないんだろうな。それこそ日本選手権の賞金減額とかグランプリ開催数の削減といった明確なペナルティでね。」
あ い こ :あとそのイベントに参加する際の躾についても同じことが言えますよね。」
あいせん:競技をしている、賞金を奪い合ってる、そういう自覚がないプレイヤーがあまりにも多い気がするよ。それこそORACLEやフロアルールの熟読とか筆記用具携帯の義務化くらいはルールに明記して、守らないプレイヤーはイベントから叩き出していいと思うぞ。競技プレイヤー自身が“競技イベントは遊びじゃない”とか言うのに、それが分かってなくて有料のデュエルルームくらいの感覚で参加してる人すらいそうだもん。」
あ い こ :やっぱり競技マジックってあらゆる意味で中途半端ですね。それでマジックが売れる状況にはなってないし、それで人も育ってない。一体何がしたいのかさっぱり分かりませんよ。」
あいせん:まあ今となっては、これも“失敗事例”と断言してさし支えなさそうだな。ただしそれでも真剣に取り組んでる人達は少なからずいるわけで、それが今となっては唯一の救いかな。まあこの後何年か経った時に『俺は今まで一体何してたんだろう?』とか後悔するようなことにならなきゃいいと思うけど。」
 
 
あいせん:あ、それでだけど実は遊戯王OCGの世界選手権の情報が入った。」
あ い こ :そうなんですか?」
あいせん:なんでも今年は8月上旬にニューヨークで開催だって。いよいよマジックの本拠地に殴り込みをかける段階に入ったらしい。しかも時期的にはまともにマジック10周年記念イベントとぶつけられてる感じだから、まあ“マジック潰し”と考えてあながち間違いじゃないかもしれない。」
あ い こ :しかも今の状況ですと、米国のマスコミにもマジックより遊戯王の方が大きく取り上げられる可能性は高いですよね。これで本当にマジック10周年ってまともなお祝いができるんでしょうか?」
あいせん:少なくともマジックというかウィザーズにはシェア回復の策もなければやる気もなさそうだからなあ。それこそホビージャパンが公取委に怒られた時みたいに首をすくめてダンマリを決め込んで、なんとか嵐が過ぎ去るのを待ってる印象すらあるよ。」
あ い こ :確かにあいせん君が言うとおり、マジックにとっての“冬の時代”って実はこれからが本番みたいですね。」
あいせん:しかも本物の冬と違って春が来る目処が立たないのが何ともはや。このまま永久に来ないんじゃないか。 (^^;」

   
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