グランプリ宇都宮編 
 
 

あ い こ :あいせん君、ちょっといいですか。」
あいせん:なんでしょうか。」
あ い こ :私が知らない間に、私のエッセイに“第零部”なんてのができてるんですけど(ぷんぷん)。」
あいせん:ああ、ごめんごめん。ついさっき僕が作った。 (^^;」
あ い こ :まったく、どこかの“最終人型決戦兵器”じゃないんですから。 (^^; で、なんでまた“第零部”なんですか?」
あいせん:いやほら、先日のグランプリ宇都宮の話を第四部の総括でやろうって言ったじゃない。でもこの手の話題って総括にはあまりそぐわないでしょう。そもそも総括はそういう話をする場じゃないし。それで『じゃあ別に2人でマジックの時事問題を話す場を作ればいいんじゃないか。』という結論になったんだ。」
あ い こ :それがこの“第零部”なんですね。」
あいせん:そういうことです。」
あ い こ :まあ、そういうことなら今回は大目に見ます。ということで、第零部の1回目は言うまでもなく…」
あいせん:テーマは“続・正しい Illusionary Mask の使い方”です。」
あ い こ :なんでやねん!」
 
 
あいせん:この前のグランプリ宇都宮での一連の騒ぎだけど、あれを見てちょっと疑問に思ったことが幾つかあるんだ。」
あ い こ :なんでしょうか?」
あいせん:まずエラーパックに対する参加者の対応の問題ね。DCI汎用フロアルールの第63節には、はっきりと『ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社もトーナメント主催者も、ブースター・パック、およびトーナメント・デッキの、カードの希少度や出現頻度等の内容について一切保証しない。』と明記されてるんだ。」
あ い こ :そうですね。グランプリ宇都宮でもそういう運営がなされたそうですし。」
あいせん:だよね。でも実際には少なからぬ参加者がそういう運営にクレームを付けて騒ぎになった。」
あ い こ :そのようですね。」
あいせん:じゃあ質問です。なぜそういうエラーパックを引いた参加者はクレームを付けたんだろうか?」
あ い こ :それは、レアが少ないパックを引けば自分が大会で不利になるから。そういうことでしょう。」
あいせん:確かにそれは分かるんだ。でもフロアルールにははっきりと『一切文句は受け付けません。』と書かれてるんだ。それなのに参加者は平然と文句を口にしたと思われる。なぜそんなことができたのか。」
あ い こ :…」
あいせん:そもそも彼らは事前にフロアルールなんか読んでなかったんじゃないか?」
あ い こ :…あ、言われてみるとそうかも。」
あいせん:それと今度はそのパックのソートの問題ね。事前にそういうエラーパックがあることは運営側は分かってたわけだよね。」
あ い こ :そのようですね。前日のトライアルの時に発覚してたそうですから。」
あいせん:マジックのリミテッド、特にシールド戦において“パックの引き”を全く重視しないプレイヤーなんてこの世にいるだろうか。」
あ い こ :それはいないと思いますが。」
あいせん:それが分かってて、運営側はエラーのあるパックでの大会を強行した。当日になって開けてビックリとかいうならともかく、前もって分かってたのにエラーのあるパックを使った。ソートに明らかな問題を抱えた製品でシールド戦を戦わせる。そもそもそういうTCGが“競技”として成立してるんだろうか?」
あ い こ :言われてみると、そう言い切れない面はありますよね。」
あいせん:さすがに事前に『当日はレア無しのエラーパックが出る可能性もあるから、そういう場合に備えたシールド戦の練習もしておこう。』なんて考えるプレイヤーはいないぞ(笑)。」
あ い こ :確かに。これって見方を変えると『パック内のカードのレアリティ比率というルールが当日になって突然変わった』とも考えられますよね。そうなるとさすがに競技として成立してたかどうか。ましてやそれで高額の賞金やDCIのポイントが大きく動くわけですし。」
あいせん:僕が前から言ってる話がこれなんだって。こんなのどう考えても競技として成立してないもん。参加費を払ってパックを買い、良いパックを引き当てた人が賞金まで持って帰れる。要するにやってることが商店街の福引きと変わらないんだって。しかも参加者は満足にフロアルールも読んできてない。これを“競技”と呼ぶにはあまりにお粗末すぎやしないか。」
あ い こ :ただ見てると、そういう視点で意見を発信してる人っていないですよね。特に参加されたプレイヤーの中には。」
あいせん:そりゃそうだろうな。この意見は自分達がやってきた競技マジックを根底から否定する内容だもん。でもそんな商店街の福引きに多額の賞金を出すのは、さすがにムダだと僕は思うんだけど。」
あ い こ :でも今や、そういうイベントがないとマジックを買わないデュエリストが少なくないのも事実ですよ。そうなると例え競技イベントが実質的に福引き大会にしかなってないとしても、今さらやめるわけにはいかないと思いますけど。」
あいせん:そういう意見は間違いなくあると思うよ。あと『いや、それでもマジックのリミテッドは競技として成立してるんだ。』という意見も当然あるだろう。でも僕に言わせると『さすがにお粗末すぎる』ということですよ。主催者側も参加者側もすべてがね。これじゃあ本当の意味での競技マジックは盛り上がらないだろうな。実際に盛り上がっているようには見えないし。」
あ い こ :そもそもリミテッドって、結果を見ても『このプレイヤーはなぜ勝てたのか?』といったお話がしにくいですからね。『パックの引きが良かった』でほとんど片づけられちゃいますから。」
あいせん:一般論としては『いや、リミテッドにもプレイヤーの技量が要求されるんだ。』という意見は少なからずある。そういう意見は僕もある程度は認めますよ。でもいざ本番になると結局『いいパックが引けますように。』という神頼みモード。これはやっぱりおかしいって。」
あ い こ :だって、いくらプレイヤーの技量があっても使えるカードを引けないと…」
あいせん:そこなんだって。だから“商店街の福引きになってる”って言うんだって。そもそも最近のマジックって“運”の要素を排除しようとシステムを変えてるんじゃないの。おかげでコイントスのカードが入らなくなったりしてるし。でもリミテッドだけはそういう対象から外れてる。要するにウィザーズやディストリビューターが儲かる部分には手を加えようとしない。それが変なんだって。だから今回みたいなまか不思議なイベントになっちゃう。」
あ い こ :じゃあ、どうすればいいんでしょうね。」
あいせん:まあ発想としてはそんなに難しくはないよ。まず今回の運営の話だけど、そもそもフロアルールを読んでこない参加者なんて、参加費をもらうだけもらって追い出したっていいんだよ。そういう厳密な運営をしないと日本の競技マジックのレベルは向上しないよ。」
あ い こ :特にプレミアイベントはそうでしょうね。競技プレイヤーはデュエリスト達がマジックを買ってプールした賞金を代表してもらうという立場なんですから。」
あいせん:そして逆もまた真なりだと思う。こんな内容のトーナメントが競技イベントとしておかしいと感じたら、そもそも参加しないか途中退席して帰ってくればいい。その位抗議の態度を明確に示さないと運営だって変わらないよ。」
あ い こ :確かに、そういう意思表示ってマジックではあまり見られませんものね。プロ化した競技ではストライキまで計画して競技としてのレベルアップを図る物まであるんですけど。ただストライキそのものには賛否両論ありますけど。」
あいせん:あとリミテッドのシステムにもちょっと触れてみようか。例えばシールドやドラフトで獲得したカード以外に、自由に追加できる枠を数枚設けるというアイディアはあるよ。こうすればパックの引きの問題とか、あとドラフト時の席順の運といった要素もある程度緩和できる。あとプレイヤーは必然的にそのリミテッド環境のカードをみっちり勉強してくる必要が出てくるから、プレイヤーのレベル向上も同時に図れるよ。」
あ い こ :でも、これだと同じカードがあちこちで使われたりしないんでしょうか。」
あいせん:少なくともドラフトの場合は色がばらけるから、そういう心配はあまりないだろうな。あとシールドは追加枠をドラフトよりも少なく設定すればいい。例えばシールド戦が3枚でドラフト戦が5枚とか。当然同じカードを複数枚加えることは禁止だし、パックから引き当てたカードと同じ物も追加できないようにする。」
あ い こ :でも、そういうカードを主催者側が用意するのは大変じゃないですか。」
あいせん:そんなの参加者に自分で持って来させるんだって。」
あ い こ :あ、それなら問題ないか。」
あいせん:参加者は仮にも競技プレイヤーなんだから、その位のカード資産は持ってるだろう(笑)。なんなら当日に会場のショップでパックを買ったっていい。そうすれば少しは主催者側の売り上げになるだろう。」
あ い こ :確かに現状のリミテッドに何枚か自由意志でカードを追加できれば、引き当てたカードの優劣とか選択した色による有利/不利をある程度カバーできますね。より広範囲のカードが活躍しそうですし。」
あいせん:ウィザーズが本当にやりたいリミテッドのイベントって、多分“すべてのプレイヤーが同一環境になった即興デッキによる大会”なんだと思うんだ。でも残念なことに最近はカード能力の優劣がはっきりし過ぎちゃって、実際には限りなく福引き大会に近いことしかできていない。」
あ い こ :確かにそんな気はします。」
あいせん:しかもカード能力のばらつきに関しては今後も改善される可能性が低い。というか、そもそもリミテッドを遊ばせる前提としてはエキスパンションの規模が大きすぎるよ。だったら競技イベントの仕組みそのものを変えるしかないと思うんだけど。」
あ い こ :少なくとも今の仕組みのままではダメだと思います。確かに独立型エキスパンションでリミテッドを遊ぶのはムリがある気がしますし。これじゃあなかなか一般のデュエリストはリミテッドには手を出さないでしょうね。」
あいせん:あ、もちろん言うまでもないけど、理想論が“シールドやドラフトも安心して楽しく遊べるマジック”である事は言うまでもない。どのカードにも活躍の場がある。そしてパック内のカードがちゃんとソートされてる。そういうマジックがいいに決まってる。でも、なんで今さらこんな当たり前のことを言わなきゃいけないのかが不思議でしょうがないんだけど(笑)。」
あ い こ :あと“バイヤーブースのドタキャン”についてですけど。」
あいせん:あれはさすがに論外だな。ただだからと言って、プレミアイベントの参加者を抽選で選んで制限するという方式には、僕個人は賛成しかねるんだけど。」
あ い こ :なんでですか。参加者枠を制限しようと思ったら、そういう方法しかない気がしますが。」
あいせん:じゃあさあ、今グランプリに参加してるプレイヤーが全員マジックの賞金で飯を食うつもりでいたとして、それでも抽選で足切りするかい?」
あ い こ :…そこまでは考えませんでした。」
あいせん:さすがに抽選というのはかなり乱暴だろうな。でも逆に一定数での参加者の制限は必要だと思われる。」
あ い こ :どうしましょう?」
あいせん:というかさあ、何のためにあるのさ。DCIのポイントって。」
あ い こ :あ!?、気が付きませんでした。」
あいせん:そんなの参加者を無制限に募集するだけして、ある時点でのDCIのポイントを見て『今回の足切りポイントは1725です。これ未満のポイントの方は今回はご参加できません。』で終わりじゃない。元々ポイントは自分で稼ぐものなんだから、それが理由で足切りされるなら文句は言えないだろう。」
あ い こ :あいせん君、なんか今日は冴えてますね(笑)。」
あいせん:どういう誉め言葉だよ。 (^^; 一応こういう意見表明をしてる以上、僕もどういうシステムがいいのかについては色々と考えてアイディアを引き出しにしまってあるんでね。」
あ い こ :元々プレミアイベントなんて、一般の公認トーナメントの場で経験を積んできた人達が参加すべき物なんですよね。だからポイントで参加者を制限してもあまり問題はないか。」
あいせん:あ、でもそうするんだったら、僕としてはぜひとも“参加費の値下げ”をお願いしたいね。」
あ い こ :え!?、“値上げ”じゃないんですか(笑)。」
あいせん:さすがに僕もそこまで意地悪じゃないよ。 (^^;」
あ い こ :それはまたなぜ?」
あいせん:うん、要するにそれって『プレミアイベントに参加できるようになる位、地元の公認トーナメントなどで頑張ってマジックをうまくなってね。』ということなんだ。そういう形で格安な参加費でプレミアイベントがある。でも実際にはDCIのポイントを増やさないと参加できない。だとしたらみなさん、日頃のデュエルとか地元の公認トーナメントも頑張るんじゃないかな。」
あ い こ :確かに。」
あいせん:あと場合によっては『うちの地元は公認トーナメントが少なくて不利だ。それなら自分でイベントを起こしてみよう。』とかいう人も現れるんじゃないだろうか。」
あ い こ :マジックのイベントって結構人任せなところがありますからね。でもその開催頻度が自分の競技生活に影響するとなればさすがに考えますよね。」
あいせん:あと参加費を安くするということは、イコール遠征をやりやすくするということにもなるんだ。そうすれば地方のデュエリストにも活躍の場が広がることが期待できる。」
あ い こ :なるほど。」
あいせん:…っていうかさあ、今みたいな日本のお粗末極まりないマジックイベントに、あの参加費はボッタクリ過ぎです。」
あ い こ :ああ、やっぱり本音はそこでしたか(笑)。」
あいせん:ただしこういう形で競技指向をあおれば、まあ間違いなくその弊害が色々と現れてくる。実際に今までもそうだったけど、それが更に加熱するんだ。そうなるとマジックを勧める側の舵取りが極めて難しくなるだろうな。」
あ い こ :それはありそうですね。ちなみにこれに関する打開策はなにか?」
あいせん:…無い!(爆)」
あ い こ :一言で終わりですか。 (^^;」
あいせん:そういうごく一部のデュエリストの愚行が気にならないくらい、大勢の人達をマジックに引き入れて盛り上げる。その位しか方法はないよ。」
あ い こ :でも、今までできてなかったことがこの先できるんでしょうか。」
あいせん:できなきゃ困るし、できないならそもそも競技指向であおる行為そのものをやめてくれ。まあそういうことですよ。」
あ い こ :ということで、今回はこんな感じですね。」
あいせん:次回は何か話題ができたらその時に。そういうことになるかな。でも正直言うと、ここで取り上げるような“悪い知らせ”がないように願いたいものだけどね。」


     

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