2003年のマジック編 
 
 

あいせん:ということで、多分皆さん想像してたと思うんだけど“2003年のマジック”のお話をしましょうか。」
あ い こ :はい。最初に言っちゃいますけど、今年のマジックは去年以上に厳しい年になりそうですね。」
あいせん:うん、そういう印象をおぼろげながらにでも感じてる人は多いだろうと思うね。」
あ い こ :マジックの外の世界で起こってるお話もいろいろありますよね。TVゲームの業界は本格的な競争激化で、ネットゲームを軸に新規ユーザー獲得に動いてるじゃないですか。そしてネットゲームでは先駆者であるパソコンゲームの業界も一層そういう動きを強めるでしょうし。マジックの世界って比較的自由にお金を使える大学生から社会人をターゲットにしてるわけで、そうするとそういった業界とまともに競合しちゃうんですよ。それでマジックでもネットゲーム化が進んでるんだと思うんですけど。」
あいせん:マジックがネットゲーム化したおかげで、既にリアルカードでマジックを遊ぶ人が減り始めてるとも言われてるなあ。」
あ い こ :そうするとリアルカードとネットユーザーの合計を見ると、今は横這いなんでしょうか?」
あいせん:その辺は統計がないから何とも言えない。ただ去年の紅白の視聴率が過去2番目に悪いという話が出てるよね。それってどうもBSという視聴率に現れない視聴者が増えた影響もあるみたいなんだ。つまりトータルで紅白を見る人口が変わっていない、あるいはBSの普及で逆に増えていたとしても、我々には現在は地上波分の視聴率しか情報がない。だから結論として“人気がなくなった”としか言わざるを得ない。そういう話はあるよ。」
あ い こ :つまりマジックで言うと、リアルカードのユーザーは減ってるけどマジックの人気や総ユーザー数は維持されてる。そういう可能性はあるんですね。でもそれでカードの売上が減るんじゃ意味ないじゃないですか。」
あいせん:ただウィザーズ的にはマジックという商売は維持できる。」
あ い こ :それはそうですけど。」
あいせん:世の中でこれだけネットゲームがもてはやされてると、さすがにマジックだってその対応を考えざるを得ないだろうな。ただしそうなると既存の流通経路、言っちゃうとディストリビューターや販売店を丸ごと見殺しにすることになる。多分日本の企業ならそういった組織の救済も多少は考えるんだろうけど、その点米国の企業はある意味クールだろうからなあ。」
あ い こ :ちょっと日本的な発想からは考えられないですけどね。」
あいせん:でもそれが現実だと思うよ。多分今年は更にマジックのネット移行が進むだろうから。今後はそれこそプレミアイベントの多くがネット上で開催されて、いずれは世界選手権ですらネット上で開催されるかも。」
あ い こ :そうなるとますますカードは売れなくなりそうですね。」
あいせん:特に日本のマジックって、何だかんだ言って競技指向の強い人達が買い支えてる部分が大きいからね。そういう人達がごっそりネットに流れちゃうと、カードを売る商売はますます苦しくなるだろうな。」
あ い こ :そうなると日本のマジック流通が生き残る唯一の道は“カジュアル・マジックの普及”になるんですけど。」
あいせん:それも難しいだろうなあ。GAMEぎゃざが今みたいに○○○○組に半ば占領されちゃってる状態じゃあ尚更無理だと思うよ。あまつさえ未だにあそこは“○○○○組のメンバーをもっと有名にしよう!”的な発想でしかコンテンツを作ってないみたいだし。」
あ い こ :ええっと、そのご意見そのものには賛成するんですけど、具体的な組織名は伏せ字にして宜しいでしょうか?(笑)」
あいせん:え!?、ああ、いいですよ。 (^^; でも全部伏せ字にしちゃうと読んだ人が特定できないから、せめて“組”だけでも残しといてね。」
あ い こ :それで十分特定されちゃうというか、限りなく名指しなんですけど。 (^^;」
あいせん:別にいいじゃない。発言したのは僕なんだから(笑)。」
あ い こ :でも確かに今までと同じ発想で発刊されるGAMEぎゃざが、カジュアル・マジックの普及に貢献できるとは思えないですね。こういうのってGAMEぎゃざに頼らずに進める方法ってないんでしょうか?」
あいせん:多分ないだろうな。」
あ い こ :なんで?」
あいせん:全国規模で発売される“ MAGIC:the Gathering 公式情報誌”が、ここまであからさまにマジックの競技偏重を推奨してる。それが多くの競技指向の人達にとっては半ば“錦の御旗”になっちゃってる。だからいつまで経っても日本のマジックではファンデッキ指向の人やコレクターの地位向上が図られない。だからそういう人達はその状況が嫌でどんどんマジックをやめちゃってるんだ。」
あ い こ :確かにそういう中で誰かがカジュアル・マジックを推奨して人が増えても、結局は初心者やカジュアル・プレイヤーが競技プレイヤーから見下されてマジックが嫌になるという歴史を繰り返すだけ。言われてみるとそうですね。」
あいせん:ちょうどマイナーなTCGのプレイヤーがマジックプレイヤーの横暴さを嫌ってデュエルルームに寄りつかなくなるのと構図は似てるな。実際にはお店の売り上げにはそのマイナーなTCGの方が貢献してたりするのにね。」
あ い こ :だから少なくともGAMEぎゃざが競技一辺倒の啓蒙をやめる必要がある。でもそれにはライター陣の刷新が必要で、現状ではそれは到底期待できない。」
あいせん:だって未だに○○○○を雇ってる会社だよ。そんなの無理だよ。」
あ い こ :だから具体的な個人名はやめてくださいって言ってるのに(笑)。」
あいせん:ああ、今回僕は自分が言いたいことをしゃべり倒すから、どこを使ってどこを伏せ字にするかは任せますよ。」
あ い こ :それっていつもと変わらないじゃないですか。 (^^; そういうことならいいです、ご自由にどうぞ。」
あいせん:ただ前から言ってるけど、そもそも人間というか日本人って潜在的に競争指向なんだ。他人に勝って優越感を得たい。そういう目的だけで対戦型のゲームに取り組んでる人間すら少なからずいる。そんな中で何もわざわざ競技指向をあおらなくても、競技と名の付いたイベントがあるだけで競技は勝手に盛り上がったんだよ。むしろ過去の失敗例に学べばマジックはそういう競技指向を抑え、いかにして多くのデュエリストにマジックを楽しんでもらうかを考えるべきだったんだ。」
あ い こ :それは言えてますね。囲碁や将棋ってしっかりした競技組織がありますけど、そこにすべてのプレイヤーを押し込めたりはしませんものね。しかもそれでも競技だってマジックなんか比べ物にならないくらい盛り上がってますし。」
あいせん:マジック人口は全世界で600万人だそうだけど、以前ある将棋のプロが『将棋人口は全世界で1200万人だ。』と言ってるんだ。つまりマジック人口は既に将棋人口の半分に達してるわけだけど、それにしては将棋ほど盛り上がってる気配がないよね。話題になる機会も遙かに乏しいし。」
あ い こ :ひょっとすると欧米ではマジックって日本の将棋並の盛り上がりを見せてるんでしょうか?」
あいせん:それは日本にいる身では知る由もないかな。ただ欧米でいくら盛り上がっても日本で盛り上がらなきゃ日本の市場は育たないから。欧米でいくら乗馬に人気があっても、それで日本でも盛り上がってるかというとそうじゃないし。」
あ い こ :あ、なんか随分とお話が脱線しちゃった気がするので本題に戻しますよ。そういう中で2003年あるいはそれ以降のマジックってどうなっちゃうんでしょうか?」
あいせん:日本に限って言うとかなり話は簡単だよ。コアな競技プレイヤーはネット・マジックに移り、リアルカードに使える投資額が減るからますます並行輸入の安い英語版に流れる。下手すりゃカードは全く買わなくなっちゃうかもね。するとそういうプレイヤーの真似をするだけの似非競技プレイヤーはたちまち“右へならえ”だろうな。しかもカジュアル・マジックの人口が今後増えることは多分期待できないだろうから、いよいよ日本のマジック市場は消滅へ向けて一直線ですよ。」
あ い こ :なんか思い切り極論なんですけど、でも現状を見てると間違ってるとは言えないですね。」
あいせん:ただ最近ちょっと感じてるんだけど、案外日本のマジックが真っ先に終焉を迎えるのって、むしろ東京とか大阪といった大都市圏なんじゃないかな。」
あ い こ :なんでですか?」
あいせん:理由は色々とあるよ。そういった都市部では情報が早いから、逆に販売店がマジックから逃げ出すのも早いと思われる(笑)。その点田舎のお店は暢気だからね。TCG販売を辞めたところですぐに代わりが見つかるわけじゃない。だったら今のところまだ売り上げはそれなりにあるから続けるか。そんな感じだもん。」
あ い こ :あ、確かに福井なんかの様子を見てるとそうかもしれません。同じお店を維持するにしても、都市部と田舎では必要な経費が全然違うでしょうし。」
あいせん:あと都市部って人のつながりが希薄だろうからね。福井のマジックって結構、人間関係で維持されてる部分があるじゃない。そういう要素が都市部のマジックにはあまりない気がする。そうなるとやめるにしても見切りは付けやすいと思うよ。より多くの人とデュエルがしたいなら、今ならネット・マジックの方が間違いなく便利だし。」
あ い こ :ネット・マジックはそれこそ世界中の人達とデュエルやトレードができますもんね。」
あいせん:そう考えると、実は『そもそもマジックは最初からネットゲームとして発売すべき遊びだった。』というのはあるかもしれない。だからマジックは本来あるべき姿になろうとしている。そういう考え方はある気がするよ。」
あ い こ :でも、それじゃあ今までマジックを支えてきた流通とか、それに携わってる人達を全部見殺しにしちゃうじゃないですか。」
あいせん:だから言ったじゃない。欧米の企業はクールだからそんなことはあまり考えないんじゃないかって。あと少なくともウィザーズはディストリビューターであるホビージャパンにはD&Dなんかを売らせて救済しようとしてるし。」
あ い こ :それってなんか違う気がするんですけど。」
あいせん:うん、まあ確かにね。ホビージャパンにしたって本音を言えばそんな救済うれしくないだろうし(笑)。マジックがバカ売れしてそれこそ年商100億なんて状況になる方がいいに決まってるだろうから。」
あ い こ :あ、最初の方で“マジックの外の世界”というお話をしましたよね。よく考えてみると今は遊戯王OCGが欧米に進出してるわけで、そういう意味では欧米のマジックもうかうかしてられないんじゃないでしょうか。」
あいせん:だからマジックはネットゲームへの移行を急いでる。そういう見方もできるんじゃないかな。」
あ い こ :確かにそうですね。しかも下手するとリアルカードよりも潜在的なユーザーは多いかもしれませんし。それこそ田舎暮らしでもインターネットが使えるパソコンがあれば遊べるわけですから。」
あいせん:マジックというゲームが今後も生き残るためには、多分ネットゲーム化という道しかないんだって。逆にリアルカードで遊ぶマジックの寿命はもうそんなに長くない。それは今マジックに取り組んでいる人達の多くが感じてることなんじゃないかな。さすがに発売から10年も経ってカードのネタが尽きてるし、ゲームシステムもあちこち老朽化が目立つから。」
あ い こ :でも私達みたいにリアルカードのマジックしか見てないデュエリストから見ると、ネットへの移行が進むマジックは“衰退してる”としか映らないですね。実際に販売店から見るとマジックの売り上げはどんどん落ちてるわけで、今後ますます離脱や撤退が進むことは確実でしょう。」
あいせん:そうなるとマジックという遊びのインフラが悪化してやめるデュエリストが増え、それで更に市場が冷え込む。まあ悪循環だけどこれが宿命なのかも。マジックがこういう形でネットゲーム化した時点で、リアルカードで遊ぶマジックにはいずれピリオドが打たれることは確実だろうと思うよ。」
あ い こ :じゃあそうなると、私達はマジックとどう付き合っていけばいいんでしょうね。」
あいせん:これは多分更に来年以降の話になると思うけど、多分ウィザーズはいずれ『今後のマジック、特に競技マジックはネット・マジックを主力に進めます。』というアナウンスをすると思うんだ。ただ僕個人は実を言うと、そういうアナウンスが出されるのを待ってたりするんだけど。」
あ い こ :なんで?」
あいせん:だって競技マジックの世界がごっそりネットに引っ越してくれれば、残されたリアルカードのユーザーはまったりとマジックを楽しめるじゃない(笑)。」
あ い こ :ああ、そういうことですか!」
あいせん:前から言ってるけど、今みたいに競技の世界とカジュアルの世界が同居してる、それも同じデュエルルームやイベントの中で両立させようとするから色々と軋轢が出てくるんだって。でも競技マジックが丸ごとネットに移行してくれれば、逆にリアルカードの世界では『そんなギスギスした勝ちに固執するマジックはネットでやってくださいよ。』って言えるじゃない。賞金もかかってない完全カジュアル・プレーの世界で勝敗にこだわったってしょうがないんだし。」
あ い こ :なるほど、逆転の発想なんですね。」
あいせん:あとはそういうリアルカードの世界にどれだけのデュエリストが残るかだな。それを見てそういう人達に合った市場規模でリアルカードの流通が生き残ればいい。僕は今はそういう考えでいます。別に新しいカードセットがネットで先行発売されたっていいじゃない。どうせ残されたデュエリスト達はまったりやってるわけだし。」
あ い こ :それってなんか都市部のスタンダード主体の競技イベントと福井辺りのヴィンテージのイベントといった構図と状況が似てますね。」
あいせん:前から僕は“競技指向とカジュアル・プレーの隔離”を言ってきたでしょう。マジックのネット化って結果的にそういう世界を構築することになるんじゃないかな。」
あ い こ :それでリアルカードのユーザーが今と同じか少し少ないくらいで安定してくれれば、リアルカードのマジックも存続できますものね。しかもデュエルやトレードは今よりもずっと面白くなるかも。」
あいせん:そう考えるとネットへのユーザー流出って意外と気にしなくていいのかもしれない。確かに今は厳しいけどマジックそのものは生き残るんだろうし、今後リアルカードで遊ぶマジックはむしろ楽しめるようになるかもしれないから。」
あ い こ :あとネット・マジックには昔の絶版カードがないじゃないですか。だからヴィンテージなマジックは生き残る可能性が高いと思うんですけど。」
あいせん:それは言えてるかも。ひょっとするとウィザーズのサポートは完全に打ち切られるかもしれないけど、それはそれでヴィンテージなデュエリストは何とかしちゃうだろうし。ただねえ…」
あ い こ :ただ…なんですか?」
あいせん:僕が今考えてる“最悪のシナリオ”というのがあるんだけど。」
あ い こ :というと?」
あいせん:うん、ウィザーズがリアルカードとネット両方の売り上げを欲張って、結局は両方ともダメにしちゃうってパターンさ。」
あ い こ :ああ、それやりそう(笑)。」
あいせん:そもそもマジックってかなりお金がかかる趣味じゃない。それをリアルカードとネット両方に十分なカード資産を持てというのはかなり無理な相談だと思うんだ。特に両方に相当なカード資産が要求される競技プレイヤーは尚更だろう。もしウィザーズが競技マジックの完全ネット移行を渋って、例えば世界選手権を1年ごとにリアルとネット両方でやるとか言ったらどうなると思う?」
あ い こ :さすがにそんなの無理というか、多くのユーザーは着いていけないでしょう。そうなるとどちらか片方しかしない競技プレイヤーも大勢現れるでしょうし、下手すると競技プレイヤーですらマジックを見放しちゃうかも。」
あいせん:つまりどっちつかず、もの凄く中途半端な世界になっちゃうんだ。そして多分きっとネットの世界でもリアルの世界とそっくり同じ問題が起こるだろう。しかもネットの世界は相手の顔が見えない分、一度暴走し出すと歯止めが利かなくなる。」
あ い こ :しかもネット化で売り上げが減ったリアルの世界でも同時に衰退が進み、そして止まらない。」
あいせん:つまりどっちも滅ぶ。」
あ い こ :となると、すべてはウィザーズ社の舵取り次第。そういうことになりそうですね。」
あいせん:マジックというゲームのシステムが老朽化してる。それは多分流通システムを含めてのことなんだろうと思うんだ。だから刷新しようとしてる。基本的にはそういうことなんだろうと思う。」
あ い こ :そして旧来のマジック流通は、実は競技マジックのネット移行によるカジュアル・マジックの普及に活路を見出せる可能性がある。だから今のうちからそういうマジックが遊ばれるように種を蒔いておこう。まとめとしてはこんな感じになるでしょうか。」
あいせん:ただ思うんだけど、こんな話ってそれこそマジックのネット化の検討を始めた時点で考慮されるべき問題だと思うし、ネット・マジックが実用化された現時点でウィザーズから明確な形での意思表示がなされるべきだとも思うけどね。マジックの主力がリアルカードからネットに移るのであれば、販売サイドにだってそれに向けた準備が必要なんだから。」


     

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