好調マジック・オンラインに学べ…るか?編 
 
 

あいせん:かたかたかた…(ネット巡回中)」
あ い こ :もぐもぐ…(おやつを食べている)」
あいせん:ふ〜ん、そうなんだ。」
あ い こ :なんですか、突然。」
あいせん:うん、この記事によるとマジック・オンラインは既に10万人の会員を集めて好調なんだそうです。」
あ い こ :そうなんですか。私はてっきり失敗するものとばかり思ってましたけど。」
あいせん:この記事にもそういう見方が書いてある。運用開始前は多くの人が『こんなの失敗するに決まってる!』とか言ってたけど、蓋を開けてみたらこの好調振りは何だろう。そういう書き方になってる。」
あ い こ :そうなんだ…で、あいせん君はこの成功を予想してました?」
あいせん:過去に書いた記事やエッセイを検索してみたんだけど、僕自身は『自分は絶対に手は出さない。』と書いてるだけだった。あと『古参デュエリストのマジック復帰に貢献してくれるといいなあ。』とか『でもリアルカード・マジックのユーザーを食うだろうから、オンライン化はリアルカード・マジックの衰退を加速するかも。』とか書いていて、そういう意味では予想は当たってる。後者はあまりうれしい話じゃないけど。」
 
 
あいせん:まずマジック・オンラインの好調だけど、間違ってもマジックというカードゲーム全体から見ると必ずしも手放しで喜べる事態じゃない。そこだけは勘違いしないようにしないと。」
あ い こ :確かにそれは言えてますね。」
あいせん:今日本は不景気まっただ中だけど、この不況を“携帯電話不況”と比喩する人が少なからずいる。昔は携帯電話なんて誰も持っていなかったのに、ここ数年でほとんどの人が持つようになった。ただその一方で個人の所得がそんなに増えてるわけじゃないから、一ヶ月1万円とかそれ以上の電話代をどこかから捻出しないといけない。すると自然に他の趣味とか生活費に向けられていた予算が削られて不況になった。そういうことだな。」
あ い こ :確かにマジック・オンラインが好調なのはいいんですけど、そうするとそこで支払われる課金はやはりどこかから工面しないといけない。そうなるとまず真っ先に“カードの購入費用”が削られる可能性が高い。そういうことですよね。」
あいせん:そうです。あまつさえマジック・オンラインがいくら賑やかになっても儲かってるのはウィザーズだけ。ディストリビューターや販売店には1円たりとも収入はないですから。」
あ い こ :そうなんですよ。やっぱりそこが一番の問題ですね。」
あいせん:ただ、僕は今回それとはちょっと別の見方をしようかと思ってるんだ。」
あ い こ :というと?」
あいせん:これだけ短期間にマジック・オンラインが10万人なんてユーザー数を獲得できた。それには絶対何か理由があるはずなんだ。じゃあその理由を分析してリアルカードの拡販に応用できないだろうか。そういう見方です。」
あ い こ :ああ、確かにそれが可能になれば、リアルカード・マジックにも活気が出るかもしれませんね。」
あいせん:じゃあ、まずマジック・オンラインが好調な理由を挙げてみようか。」

*** マジック・オンラインが好調な理由(推測) ***
1.ゲームを遊ぶ上での
手間の削減
カード購入が簡単で所有カードの管理が不要。
デッキ構築が簡単でマジックを遊ぶための準備時間が大幅に削減できる。
2.ルーリングなどに関する便利性ゲームの進行やジャッジングはシステムがやってくれる。
積み込みなどの不正もほぼ起こり得ない。
3.ゲームを遊ぶ場所や
遊ぶ相手の安定化
仕事があって人がいる時間帯にデュエルルームに行けない、
あるいは行っても人がいないといった不満がほとんど無い。
4.カード資産の均一化デュエリストごとのカード資産の格差が
リアルカードの世界ほど(まだ現段階では)大きくない。
5.質の低いデュエリストの
実質的な締め出し
いわゆる“お子様”の相手をして不快な思いをしなくて済む。
嫌な相手は簡単に無視できるし、それで困ることはあまりない。

あいせん:…とまあ、思いつくだけでもこんな感じかな。」
あ い こ :前にもあいせん君が言ってた気がするんですけど、マジックをオンライン化するメリットって意外と多いんですね。」
あいせん:そうなんだって。だから前に僕は『今からオンライン化するくらいなら、最初からオンラインゲームとして出せば良かったのに。』とか書いてるよ。まあ当時は今ほどパソコンやネットの技術が発達していなかったから不可能だったとは思うけど。」
あ い こ :でも、こういうメリットをリアルカード・マジックで実現するのは難しいですね。」
あいせん:それは間違いないな。じゃあ今度はリアルカード・マジックでは上に挙げた点がどうなのかを見てみようか。」

*** リアルカード・マジックの現状 ***
1.ゲームを遊ぶ上での
手間の削減
カード購入量が多いほど管理は大変になる。
スタンダード落ちや絶版カードの基本セット復刻などが管理を更に複雑化させている。
2.ルーリングなどに関する便利性基本的にはデュエリスト本人がある程度勉強してデュエルに臨むしかない。
また対戦相手との見解の相違からゲームが成り立たなくなるケースも少なくない。
3.ゲームを遊ぶ場所や
遊ぶ相手の安定化
ある一定以上のユーザーが維持できていれば問題はないが、
最近では日本でも多くのデュエルルームがデュエリストのニーズを満たせていないと思われる。
4.カード資産の均一化特に基本セットの入れ替え時期は、絶版カードを多く持っているデュエリストが有利になる。
5.質の低いデュエリストの
実質的な締め出し
自分が話したくもない相手からデュエルやトレードを申し込まれてうんざりするケースも少なくない。(今となっては「それでも相手がいるだけまし」という話はあるが。)

あいせん:…とまあ、こんな感じでしょうか。」
あ い こ :あのぉ…どこをどう見ても改善できる可能性は薄そうなんですけど。 (^^;」
あいせん:つまりこういうことが言えるかもしれない。マジック・オンラインはリアルカードで遊ぶマジックにあった潜在的な不満点を改善し、それに気が付いたデュエリストによって支持されている。つまり僕みたいな批評家があれこれ言わなくても、実はウィザーズという会社はマジックというゲームの欠点も、その改善策もちゃんと分かってた。」
あ い こ :でもそうなると、今のマジックに不満を持っていて、それでもマジックを続けてる人が今はむしろ多数派と思われるじゃないですか。そういう人達がこの様子を見て、それこそ大挙してマジック・オンラインに流れたりはしないんでしょうか。」
あいせん:その可能性はあるよ。それもかなり高い確率でね。」
あ い こ :やっぱりそうなんだ。」
あいせん:今リアルカードでマジックを続けてるデュエリストの中には、多分マジック・オンラインを“様子見”してる人も大勢いるはずなんだ。人が増えて賑やかになるようなら手を出してみよう。そんな感じでね。そして今現在マジック・オンラインは好調が言われている。そうなると『じゃあ自分も…』というデュエリストは更に大勢現れるだろうな。」
あ い こ :でも、前にあいせん君は言ってたじゃないですか。『リアルカードを手にできないマジックに手を出す人は少ないんじゃないか』って。」
あいせん:少なくとも僕個人の意見は今も変わらないよ。しかし今やデュエリストがマジックというゲームに求めているのはそういう物じゃないんだろうな。それこそマジックはコミュニケーション・ツールになりつつあるんだよ。でもリアルカード・マジックでは不愉快な相手ともデュエルやトレードをせざるを得ないし、その反面そういうデメリットを埋め合わせるだけの魅力や面白さがどんどん感じられなくなってる。その点マジック・オンラインなら、嫌な相手が来たら回線を切っちゃえば終わりでしょう。あとオンラインのファイナルファンタシーでは個人ごとのブラックリストなんかも作れて、そういう人とは関わらなくていいような仕組みもあった気がするから、マジック・オンラインにも同様の仕組みがあるんじゃないかな。」
あ い こ :ある意味楽ですよね。自分でデュエルやトレードで関わる相手をコントロールできるわけですから。しかも10万人のデュエリストが1つのサーバーに集まるなら、それこそトレードや対戦相手に事欠くことはないでしょうし。」
あいせん:そうやってマジック・オンラインがリアルカード・マジックに存在する不具合をどんどん改善し、それに対してリアルカード・マジックがそれを改善するどころかどんどん状況を悪化させている。これじゃあデュエリストがマジック・オンラインに流れるのは当然だし、今後は更にその流れが加速するだろう。」
あ い こ :そういう流れを止めて、デュエリストをリアルカード・マジックにつなぎ止める方法って…難しそうですね。」
あいせん:だからウィザーズはリアルカード・マジックを若年齢層に売り、更にはフレッシュパックを使った限定戦を普及させようとしている。そういう見方はできるかも。」
あ い こ :あ、確かに言われてみれば、そういう売り方だと問題点の幾つかは改善されるんですね。」
あいせん:まあ全部が改善されるわけじゃないけどね。ただしそういう意味でウィザーズの取り組みは一貫してるし、現状ではある意味成功していると言えるかも。」
あ い こ :ただその“成功”って、言っちゃうとウィザーズ社単独での成功じゃないですか。マジックという世界全体を見た場合、ディストリビューターや販売店を切り捨ててる時点で、むしろ“失敗”なんじゃないかと思えるんですが。」
あいせん:でもマジックというゲームは生き残るし、ウィザーズ自身はそれでなんにも困らない。」
あ い こ :それはそうですけど…」
あいせん:どうもこの問題は、販売店とか地域にあるマジック・コミュニティが自分で解決していくしかなさそうだな。少なくともこれだけマジック・オンラインが好調だと、そういうリアルカード・マジックでの問題点をウィザーズに改善させるのは難しそうだし。」
あ い こ :ホビージャパンは?」
あいせん:本来はあそこが一番真剣に動くべきなんだけど…やる気があるとか無いとか言う以前に“どうしていいのか分かっていない”という気がします。相変わらずGAMEぎゃざを競技マジックの情報で買わせようとしてるのがそれを一番良く現してるかな。本当の意味で競技マジックに特化したら、それこそGAMEぎゃざの情報なんて1ページたりとも利用価値は無くなっちゃうはずなんだけど。」
あ い こ :まあ確かに…」
あいせん:ちょっとこうなっちゃうと、まさにリアルカード・マジックは袋小路に陥った気がします。オンライン・マジックという最大のライバルに勝てる要素が乏しい。これはある意味で遊戯王OCGとかデュエル・マスターズといった外部勢力の台頭よりもたちが悪いよ。何しろ相手は自分が持っている魅力をほぼすべて備えていて、あまつさえ自分が抱えている欠点の多くを改善してるんだから。」
あ い こ :本当、困った問題ですね。」
あいせん:まさかリアルカード・マジックにこんな最強のライバルが現れるとは…という感じかな。小中学生はデュエル・マスターズに奪われ、大学生や社会人はマジック・オンラインに奪われ…。本当リアルカード・マジックはいよいよ先行き真っ暗って感じがします。」


     

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