Postscript 
 
 

あいせん:ただいま。 A(^^;  フキフキ
あ い こ :おかえりなさい。」
あいせん:いやあ、両親の実家のお墓に両方揃ってお参りしたのって何年ぶりだろう(笑)。」
あ い こ :まったくもって先祖不孝な息子ですね。 (^^;」
あいせん:まあ、でもこれからは毎年お参りしますよ。今年ついに父親がお墓に入っちゃったからね。」
あ い こ :あ、ところで“おみや”は?」
あいせん:…なんでお墓参りでお土産買ってくるの。 (^^; しかも車で30分程しか離れてない場所なのに。」
あ い こ :…(ToT)」
あいせん:ああ、はいはい、分かりましたよ。お小遣いあげるからアイスでも買っておいで。」
あ い こ :わ〜い! \(^O^)/」
 
 
あいせん:第3部もそろそろ佳境ですかね。」
あ い こ :はい、そんな感じです。」
あいせん:ということで、今回はマジックの本質を見据えた振り返りをしようかと思っています。」
あ い こ :はい、どういう流れになるか分かりませんがお任せします。」
あいせん:おや、今回はやけに素直ですね。」
あ い こ :だって前回やることやっちゃいましたから(笑)。」
あいせん:この人思い切り開き直ってるよ。 (^^;」
あ い こ :まあいいじゃないですか。それではよろしくお願いします。」
あいせん:はい、分かりました。ではまず質問です。そもそもデュエリストがマジックに見る“夢”って何でしょう?」
あ い こ :普通に考えると、欲しいカードを手に入れてデュエルに勝つ。そういうことじゃないですかね。」
あいせん:おお、いいところを突いてきましたねえ。そうだね、特にこのデュエルに“勝つ”というのはかなり大きなウェイトを占めてると思います。誰も負けるためになんかマジックはやらないだろうから。」
あ い こ :そして、だから競技指向のマジックがもてはやされる。そうですよね。」
あいせん:なんか今回は僕が言おうとしてることをどんどん先に言われてるぞ。 (^^;」
あ い こ :まあこの辺のお話は基本的な部分ですから。」
あいせん:ただよく考えてみて欲しいんだけど、本来“勝つ”ってその事自体が最終目標なんだろうか。」
あ い こ :え!?、そう言われると…どうなんでしょう。」
あいせん:例えば“お金が欲しい”のって、別にあの紙切れそのものを集めたことで満足できるわけじゃないよね。お金があれば欲しい物が買えるし、好きな所に行ける。あと実際に消費はしなくても、持ってるだけで精神的な安堵感も得られる。だから人はお金が欲しいはずなんだ。」
あ い こ :無人島で1人取り残されたときにお金だけがあってもしょうがないですもんね。」
あいせん:じゃあマジックの世界、特にDCI公認トーナメントで“勝つ”ってどういう意味があるんだろう。本来公認トーナメントにおいて“勝つ”ことには目標があり理由があるんじゃないか。ポイントを増やしてバイを得てプレミアイベントを有利に戦いたい。大きなイベントに招待されたい。そして賞金や名誉を得たい。だから勝ちにいくんじゃないの。」
あ い こ :それは間違いないと思いますよ。」
あいせん:つまり極論しちゃうと、すべての公認トーナメントには“賞金”がかかってるんだ。だから地方で開催されるイベントに対しても“なんでもあり”という理論が成り立つ。コピーデッキなんか全然OKだし、ましてや相手が初心者でも手加減は無用。そうだよね?」
あ い こ :はい、そうだと思います。」
あいせん:じゃあ聞くけど、今公認トーナメントに出てる日本のデュエリストの一体何割がそういうポイントによる恩恵を理解し、実際にその恩恵を得るために公認トーナメントに来てると思う?」
あ い こ :え!?…あ、はい、そう言われるとなんか少なそうな印象が強いです。」
あいせん:実際に参加してる人達の多くは多分そういうシステムそのものを理解してないよ。そして理解する必要性すら知らないまま公認トーナメントに来ちゃってるはずなんだ。だって日本で開かれてる公認トーナメントのかなりの部分は、マジック販売店が“客寄せのためのイベント”として開いてるんだから。」
あ い こ :確かに、そういうイベントで競技性とかポイント/ランキングの意義を説明してるものって少なそうです。」
あいせん:だけど大会に来たデュエリストの相当部分は“勝つ”ことを目指してる。もちろんそうじゃないデュエリストだって大勢いるけどね。」
あ い こ :つまり、そういうデュエリストは“勝つ”ことが最終目標になっちゃってる。」
あいせん:そういうこと。もしその大会で勝つことに“次のステップに向けた明確な目的意識”を持ってるなら、多分間違いなく大会に対する取り組み方は違ったものになるはずなんだ。少なくともORACLEやフロアルールも読まずに大会に来る人はいないだろう。でも単に勝つだけならORACLEやフロアルールの情報は不要だと思ってる。そんな物を読んでも最強のデッキの情報なんて書いてないからね。だから彼らは読まないんだ。」
あ い こ :じゃあ、ひょっとすると彼らがマジックを遊ぶ目的そのものも…」
あいせん:そう、単に目の前のデュエルに“勝つ”ことになってしまっている。」
あ い こ :それって…どうなんでしょう。なんか『お寒い』って感じなんですが。」
あいせん:でもはっきり言っちゃうけど、多分そういうデュエリストの参加で日本の公認トーナメントは維持されてるんだよ。そういうデュエリストの参加がなかったら、ひょっとするとマジックイベントの参加者って今の半分とかそれ未満になるかもしれない。それは福井のイベントにしても同じだろうな。」
あ い こ :そうか…確かにそうですね。一般的な公認トーナメントって、別に開催したり参加したことだけでメリットが得られるものじゃないですから。」
あいせん:ただ見方を変えると、今の日本のマジックってデュエリストに『勝って爽快感を得る』以外の夢を与えられてないんじゃないかな。だから負けると対戦相手を罵倒する輩まで現れる。そりゃそうだろう、これだけお金や時間をかけて遊んでるマジックで自分が不快感を得るなんて許せないだろうからね。」
あ い こ :これは前にも話題になってますけど、要するに『マジックに“デュエルでの勝利”以外の目的や目標がなくなってるから、デュエリストは必要以上に勝利に固執しちゃう。』ということなんですよね。」
あいせん:そう考えていいと思うよ。自分でデッキを考えたりコレクションをしたりするデュエリストにとっては、デュエルでの勝利って案外小さな目標でしかないんだ。でもデュエルでの勝利のためだけに高いカードを買い、苦労して情報を集めた人にとって、自分が負けるなんてあってはならないことになるだろう。それまでの投資が全部無駄になっちゃうから。」
あ い こ :じゃあついでに聞いちゃうんですけど、例えばあいせん君にとって“デュエルでの勝利”って何なんですか?」
あいせん:最近気が付いたんだけど、僕にとってのデュエルでの勝利は“マナーあるいは嗜みの一部”になってる。」
あ い こ :どういうこと?」
あいせん:うん、僕はご存じの通り本業は“牛姉コレクター”だけど、マジックを嗜む以上デュエルはすべきだと思うし、やはりしたいんだ。だからタイプワン限定だけどデッキは組む。ただそのデッキで使うカードはコレクション用に放出した残りのカードで組むから、基本的にはそんなに強いわけがない。でもそこで終わっちゃいけないと思うんだ。ファンデッキだから弱い。コレクションの残りのカードで組んだから強くない。あるいは回らない。そんなデッキとデュエルさせられる方はたまったもんじゃないよね。だから制約がある中でもできるだけ強いデッキを組む。そしてそのデッキを全力で回して全力で勝ちにいくんだ。確かにカード資産は他の人より乏しいかもしれないけど、でもそういう中で精一杯勝ちにいく。そうしないと対戦相手にも自分にも失礼だと思うから。こちらがそこまでデュエルに注力すれば、それに勝った対戦相手の喜びも大きいだろうと思うし。」
あ い こ :それで、実際の戦果の方はどうですか?」
あいせん:当初自分で思ってた以上に好調だったりするよ。小さな大会だけど福井のタイプワンのイベントで優勝してプレステもらった。一時期デュアルランド全盛になった福井のタイプワンに Primal Order(HL/5E) 1枚で風穴開けた。りすデッキで何度か4ターンキルを決めた。あと僕が始めて Null Rod(WL) を実戦投入した瞬間の、あの場の硬直具合は良かったなあ。確かエンペラー戦だったと思うんだけど、周囲からの『君、僕達がパワーナイン満載のデッキ使ってるの知ってるだろう!?』みたいなリアクション&ブーイングの嵐。あれいいよね。」
あ い こ :…というか、それ明らかに味方にも迷惑かけてます。 (^^;」
あいせん:あ、心配しなくても相手チームの方が被害甚大だったから(笑)。あとは Healing Salve(AL-7E/MI) でクリーチャーを救済したときの対戦相手の嫌そうな反応といったら。『なんで今時そんなカード入ってるねん!』とか言われた(笑)。」
あ い こ :でも、そういう遊び方って今となってはタイプワンだからこそできるんですよね。」
あいせん:そうだよ。もしマジックにタイプワンがなかったら、今頃僕は100%完全なマインドブレイカーになってただろうな。確かに僕にとってカードイラストの点で牛姉を超えるカードはアクエリにはない。パラディン・ジュリア様は確かにツボなんだけど、でも僕の中ではほんのわずかのところで牛姉に及ばないんだ。でもスタンダードやブロック構築戦よりはアクエリの対戦の方が面白いと思うもん。アクエリなら自分が使いたいカードで勝負できるから。あと福井だとアクエリのカードとのトレードで牛姉を入手できないこともないしね。」
あ い こ :ちょっと思ったんですけど、福井のデュエリストって結構対戦相手のことを意識してデッキを組んでませんか。特にタイプワンプレイヤーって、単純に自分が勝つ手段としてデッキを組んでる人っていない気がするんですけど。」
あいせん:まあ中には“対戦相手の嫌そうな顔を見る”のを目標にしてる人もいるけどね。 (^^; でもそういう人は他の人以上に対戦後のフォローには気を配ってるみたいだよ。全体としては『俺のデッキを見ろ〜!』的なデュエリストがほとんどかな。僕もそうだけど。最近は『あいせんのデッキからはとんでもない“温故知新”なカードが飛び出してくる。』と思ってもらえるように頑張ってるよ。あとは自らが召還した Juzam Djinn(AN) で撲殺される男の生き様を見せたがる人とか。」
あ い こ :それは間違ってると思います(笑)。」
あいせん:とにかく言えることは『福井のタイプワンプレイヤー達は、こういうお寒いご時世になった今でもマジックのデッキ構築やデュエルを大いに楽しんでる。』ということかな。僕なんかここしばらくマジックにろくな予算を使ってないけど、おかげで逆に例えば福袋で引き当てたカードなんかでもデッキが強化できちゃってるし。今はほとんど何の情報も見ずにデッキを組んで、それで全勝とは言わないけど勝ち越しくらいは十分狙えてる。だからデッキ構築もデュエルも面白い。もちろんコレクションもね。」
あ い こ :そういえばこの問題では、以前から“情報が持つ弊害”が言われてますよね。」
あいせん:そうだね。昔はデッキ情報もなければシングルカードの価格表なんて物もなかった。だから買って引き当てたレアがよほど手元で重複してない限り、基本的には何を引いてもハズレではなかった。『あ、持ってなかったレア引いた!』で十分幸せだったんだ。でも今はそうじゃない。あの強いデッキに使うパーツじゃないからハズレ。あの店のシングルカード価格表で¥200だからハズレ。そんな価値観でしかカードを見ない。だからカードを買うことに幸福感が持てない。だからみんなフレッシュパックを買わなくなっちゃう。」
あ い こ :しかも昔はそういう使わないレアも引き取ってくれるコレクターが大勢いたけど、でも今はそうじゃないですから。」
あいせん:それも大きいね。実際に某店の店長は『最近はBOX買いなんてめっきり見かけなくなったなあ。』と言ってるよ。元々フレッシュパックを大量購入するだけの動機付けがマジックから無くなってる上に、大口購入者がほとんど並行輸入に走っちゃってるから。」
あ い こ :競技指向の高まりがマジックをどんどん遊びにくい物にし、マジックの情報が結果的にマジックの購買意欲を阻害してる。なんか皮肉な感じですね。」
あいせん:競技を指向させることそのものが悪いわけじゃないよ。ただ“それしか指向させない”から問題なんだって。僕らみたいなマジックの遊び方をしてると、それこそ昔のマジックみたいにフレッシュパックの購入1つ取っても楽しめるんだよ。買って引き当てたカードは人気筋の物はトレードの弾、それ以外は基本的に自分で使ってやろうと思ってるからね。でも自分でデッキを作らない、あるいはカード購入を投機目的にしか見ていないデュエリストにとっては、今やこんなつまらない遊び無いんじゃないかな。だって1つのエキスパンションの中に引いて『当たった!』と思えるレアって数枚あるかないかだろうから。」
あ い こ :結局のところ“夢”って小さな物を積み重ねて大きく育てる物なんですよね。」
あいせん:お〜っ(拍手)。7歳と4ヶ月にして人生を悟りましたね(笑)。」
あ い こ :そういうちゃかし方ありですか? (^^;」
あいせん:でも少なくとも今、マジックのカード購入やデッキ構築、あるいはデュエルが広く世間で『面白くてしょうがない!』と思われているならば、日本のマジックはもっと話題性に富んだにぎやかな世界になってるはずなんだ。でも現実には日本のマジックは、すべてのデュエリストに『日本選手権に出て2万ドル獲れ!』という目標しか示せてない。だからつまらなくなってるし夢が持てなくなってる。そういうことだと思うよ。」
あ い こ :実際にはそういう世界とは無縁なデュエリストの方が圧倒的多数のはずなんですが。」
あいせん:でも、そういう競技指向が薄いデュエリスト向けの有効な販促をホビージャパンが思いつかないんだからしょうがないよ。しかもやる気もなければ満足な予算を使う気すらないみたいだし。大体“抽選で”プロモを配るのに『全員返信用封筒に切手貼って送ってこいや!』なんて言う会社、さすがに他に聞いたことないぞ。」
あ い こ :部下は上司を選べない。生徒は教師を選べない。そしてユーザーは代理店を選べない。本当つらいですよね。」
あいせん:全く同感(溜息)。最近は電力会社すらユーザーが選べる時代になりつつあるのにねえ(笑)。」


     

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