Postscript 
 
 

あいせん:…」
あ い こ :どうしたんですか。なんか牛乳飲みながら浮かない顔してますね。」
あいせん:うん、どうも僕にはこの“低脂肪乳”というのは合わないな。」
あ い こ :味が薄い、ということですか?」
あいせん:それもあるんだけど、そもそもなんで牛乳なんて自然の物を脂肪分を取り除いてまで飲もうとするかなあ。」
あ い こ :お腹ゴロゴロしちゃう人って結構いるみたいですけどね。」
あいせん:そういう人はそもそも飲まないか、乳製品を摂るようにすればいいと思うんだけど。」
あ い こ :でも、それだったら逆にあいせん君が低脂肪乳を買ってこなければいいのに。」
あいせん:そうなんだけどね。でも母親が『こっちの方が安いから。』とか言って買って来ちゃうんだ。僕が低脂肪乳好きじゃないのは知ってるはずなんだけど。」
あ い こ :あれまあ。 (^^;」
あいせん:なんか対策を考えないといかんなあ。例えば冷たい水でも溶けるクリープ置いとくとか。」
あ い こ :なんかもの凄く本末転倒な気がしますが。」
あいせん:確かにそうなんだけどね。」
あ い こ :あ、立て込んでる(!?)ところを申し訳ないんですけど…」
あいせん:エッセイの振り返りだよね。了解しました。」
 
 
あいせん:さて、今回のエッセイについてですが…また思い切った内容になってるなあ(笑)。」
あ い こ :でも話の筋としては間違ってないですよね?」
あいせん:僕はそう思うけど、でも反発を受ける部分はかなり多い気がするよ。」
あ い こ :いや、前回の格闘ゲームのお話が頭から離れないんですよ。」
あいせん:ああ、そういうことか。僕はああいう話をそれこそ格闘ゲームが全盛だった頃から言ってきたんだ。ただ当然だけど当時はそういう意見に耳を貸す人は少数派だったね。『何を寝言言ってるんだ。格闘ゲームはこんなに流行ってるじゃないか。』って感じかな。」
あ い こ :でも実際にはあっという間に廃れちゃった。」
あいせん:そりゃあもう、そういう予言をした僕ですら想像も付かなかったくらいのスピードでね。というか、はっきり言うけどSNKが倒産するなんて想定は全くなかったなあ。」
あ い こ :格闘ゲームのメーカーは細々とでも生き残るだろう、そう思ってたんですね。」
あいせん:まあ今のCAPCOMのような状況になるかな、くらいに思ってた。事業のメインとなる分野は他に移って、でも細々と格闘ゲームは作られ続ける。そんな感じかな。」
あ い こ :それで改めて聞いてみたいんですけど。」
あいせん:なんでしょうか?」
あ い こ :日本人デュエリストが自分でデッキを作り始める、あるいは作れるようになる方法ってないんでしょうか?」
あいせん:ああ、それね。実はそれについて過去に日本人デュエリストに画期的な提案をした組織があるんだ。」
あ い こ :え、どこなんですか?」
あいせん:ホビージャパン。」
あ い こ :…はあ!?」
あいせん:例の“ジャパン・クラシック”ですよ。あ、今の“ホビージャパン”のところにまた<B>タグ入れといてね。 (^^;」
あ い こ :へへへ、この前の時からちょっと勉強して、ちゃんとブラウザに半角で“<B>”って表示させる方法覚えましたよ。…って、そんなことはいいんですけど、あれが“画期的提案”なんですか?」
あいせん:少なくとも僕は今でもそう思ってるよ。」
あ い こ :それ、どういうことですか?」
あいせん:あのフォーマットは文字通り日本独自のフォーマットなんだ。しかもDCI公認のフォーマットでもないから、外国のどのマジックサイトを探したってデッキ・レシピを見つけられるはずがないんだ。だからジャパン・クラシックで強くなろうと思ったら…」
あ い こ :日本人が自分でデッキを考えるしかないんだ!」
あいせん:そういうことです。」
あ い こ :でも結果的には破綻しちゃいましたよね。」
あいせん:それは元々ジャパン・クラシックがウィザーズやDCIの了承を得て設けられた物でなかったことが敗因だと思うよ。あとホビージャパン自身がジャパン・クラシックを“GAMEぎゃざの販促用”という狭い視野でしか見ていなかったことも影響してると思う。」
あ い こ :そういえば一時期『ジャパン・クラシックの詳細や禁止カードリストはGAMEぎゃざにしか載せません。』とかやってましたよね。あれじゃあフォーマットとしての普及は難しいですよね。」
あいせん:そういうこと。要はゲーメストみたいに『ジャパン・クラシックで強くなりたきゃGAMEぎゃざを読め!』とかやってたもんね。あれじゃあ僕みたいにGAMEぎゃざが嫌いなデュエリストは手を出さないだろう(笑)。」
あ い こ :どうすれば良かったんでしょうね。」
あいせん:そうだなあ、まずは何をさておき“ウィザーズとDCIの協力を取り付ける”ことだった思うよ。特に禁止カードの決定にはDCIの参与は間違いなく必要だったはずなんだから。というか、逆にDCIの参与無くしてどうやって決めてたのかね。」
あ い こ :…な〜んて言っちゃって。どうせその辺の情報は持ってるんでしょう?」
あいせん:いや、持ってるけどさすがにここでは言えない(笑)。」
あ い こ :あとはやはりどれだけのサポートをするかですね。」
あいせん:最低でも今のジュニア・トーナメント並のサポートをする。そこまでやって始めて他のフォーマットと勝負できると思う。それで成功するかどうかはホビージャパンが更にそれ以上の頑張りをどこまで見せるか次第だけどね。」
あ い こ :それとやはりスタンダードな競技マジックへの偏重を緩和する。」
あいせん:それが一番大事だろうな。それのおかげでポータルとかアングルードは売れなかったわけだし。」
あ い こ :じゃあ聞きたいんですけど、そこまでしてジャパン・クラシックを普及させるメリットってあるんですか?」
あいせん:まず“絶版カードの販促”という効果が大きいと思う。こういうフォーマットが安定して遊べるのであれば、例えば第4版とかミラージュサイクルのパックにも需要が生まれるはずなんだ。そうなれば基本的にパックが完全なデッド・ストックになることはないからね。」
あ い こ :最近のマジックは下手すると発売から半年でデッド・ストックになっちゃいますからね。」
あいせん:実際にオデッセイが発売されて以降、インベイジョンサイクルの売れ行きがパッタリ止まったという話もあるし。まあ現状でスタンダードの主流になってるデッキを見ると、インベイジョンサイクルのカードってあまり活躍してないからね。」
あ い こ :これじゃあマジックのお店は経営が苦しいでしょうね。」
あいせん:それは言えてるかな。」
あ い こ :あとはやはり“デュエリストが自分でデッキを考える”という部分ですね。」
あいせん:これがやはり大事だと思うよ。そもそも日本のマジックって、米国みたいに競技化されずに自由にデッキを組んでいた時代がほとんど無いんだ。だからデュエリスト個人にデッキ構築のためのノウハウの蓄積が乏しいと思われる。」
あ い こ :だから日本のマジックを部分的にでも情報から隔離して、自分でカードを吟味してデッキを編み出せる環境を用意してあげるわけだ。」
あいせん:無い物は自分で作るしかないからね。」
あ い こ :でも、今となってはそれも夢物語ですよね。」
あいせん:確かにね。」
あ い こ :それじゃあ、ちょっと“今後”のお話をしたいんですけど、どうすればいいと思いますか?」
あいせん:これはマジック関連の記事に書いた話なんだけど、ジャパン・クラシックというフォーマットにこういう形でケチが付いてしまった以上、同じようなフォーマットの提案や推奨はもうできないと思うんだ。明らかに“二番煎じ”というイメージしか持たれないからね。『どうせまた途中でやめちゃうんだろう。』みたいな感じで。」
あ い こ :でもそうなると、取り得る選択肢がかなり狭まっちゃいますよね。」
あいせん:そうだね。しかもホビージャパンには“マジックのフォーマットをウィザーズに無断でねつ造した”という前科がある。つまりもうホビージャパンには日本独自のフォーマットを提案するという選択肢そのものが残されていないんだ。」
あ い こ :つまり今後ホビージャパンが取り得る選択肢って、ひょっとして“ウィザーズやDCIが制定した競技マジックのフォーマットを推奨する”以外にない、ということですか?」
あいせん:はい、その通りです。ジャパン・クラシックというフォーマットにしっかりとした取り組みをしなかったばかりに、ホビージャパンにはもう独自のアイディアを出すチャンスがなくなってしまったんだ。」
あ い こ :つまりホビージャパンがそれでどれだけ自社の売り上げを減らそうが、ホビージャパンは今まで通りスタンダードといった競技フォーマットを推進するしかないんだ。」
あいせん:そういうことですな。」
あ い こ :じゃあどうすればいいんですか?」
あいせん:そういう意味でもホビージャパンに取り得る手がないのであれば、あとはデュエリスト自身が意識を変えるしかないと思うよ。日本のマジックにスタンダードやブロック構築といった競技フォーマットしかなくなって、しかもWebサイトには強いデッキの情報が山ほど転がってる。でもそれでも“自分でデッキを考える”デュエリストになる、あるいはそういうデュエリストを育てる。そういう方法を考えるしかない。」
あ い こ :でも、それはムリでしょう。それができていれば日本のマジックのレベルはもっと高くなってるでしょうし、そもそも私達がこういうお話をする必要もないんですから。」
あいせん:そうだよね。」
あ い こ :なんか思い切り手詰まりになっちゃったんですけど。」
あいせん:そうだねえ…ここは一つ“競技プレイヤーのみなさんに期待する”ということでどうでしょうか。」
あ い こ :いきなりそんな精神論で話を終わらせますか? (^^;」
あいせん:いや、別に僕は精神論を語ろうとしてるわけじゃないよ。」
あ い こ :どういうことですか?」
あいせん:日本の競技プレイヤー諸氏が“結果”を欲しがってる。これは間違いないと思うんだ。そして特に今までの大きな大会での戦績から、そろそろ彼らも気が付いてるはずなんだ。『デッキを創造できない国のデュエリストにナンバーワンの称号は決してもたらされない』ことをね。」
あ い こ :要するに他の人からせかされてそうするんじゃなくて、彼らはそうならないといけないという自発的な目的意識と理由があって自らデッキ構築力を磨くはずだ。」
あいせん:そういうことです。」
あ い こ :そんなにうまく行きますか?」
あいせん:行かなきゃ日本の競技マジックはそれまで。そういうことですよ。」
あ い こ :でも、それで一般のデュエリストの意識まで変わるでしょうか?」
あいせん:別に日本のデュエリストすべての意識が変わる必要はないよ。」
あ い こ :それはまたなぜ?」
あいせん:一般のデュエリストは今まで通り、競技プレイヤーが作った強いデッキを真似すればいい。でももしそういう課程で、実はそのデッキを最初にプレミアイベントに持ち込んだのが日本人だったと聞いたとしたらどうだろう。きっと多くのデュエリストが思うに違いないんだ。『ああ、本当にマジックが強くなりたければ自分でデッキが作れるようにならなきゃダメなんだ。』ってね。」
あ い こ :あ、逆に言うと今は『なんだ、コピーデッキで勝てるじゃん。』になってるから、みなさん自分でデッキを作ろうとしないんですもんね。」
あいせん:あと例えば自分が仮にも競技マジックでそれなりに名の通ったプレイヤーで、それが自分の知り合いが発案したデッキを真似て大会に出る。そういうのって普通は恥ずかしいと思うんじゃないかな。」
あ い こ :確かに。そういう状況になればそれこそ死ぬ気でアンチデッキを編み出そうとしますよね。」
あいせん:ただ…このお話には前提条件があるんだ。」
あ い こ :なんですか、その前提条件って。」
あいせん:うん、はっきり言うけど、今年の世界選手権みたいに『今年はサイカトグが勝つよね…ほらやっぱり。』みたいなマジックではダメだ、ということです。そういう大きな大会に今まで想像もしなかったデッキが投入され、そして優勝する。そしてそのデッキを発案したのが日本人プレイヤーだった。そういう結果が必要なんだ。これはあくまで理想論だけどね。」
あ い こ :確かに今年の日本選手権や世界選手権の様子を見てると、情報とカードさえあればマジックは強くなれると思い込んじゃいますよね。実際にはデッキ構築力とかプレイングの技術、あとトレード時の交渉力とかも必要なはずなんですけど。」
あいせん:ただ最近のマジックを見ていると、どんどんゲームバランスが悪くなってる気がするよね。もし万が一今後もそういう“1デッキ独裁状態”が続くようだと、こういうお話には全く意味がなくなっちゃうんだ。要は『他人よりも1秒でも早く最強デッキの情報を集めろ!』になっちゃうから。」
あ い こ :これじゃあ誰も自分でデッキを考えなくなっちゃいますよね。」
あいせん:そういう意味で言うと、実はスタンダードって使えるカードの種類が多いようで少ないんだ。しかも最近は本気でクリーチャー戦しかさせたがらないから、逆に特定のクリーチャーがオーバーパワーになると誰も止められなくなっちゃうんだ。」
あ い こ :サイカトグがその典型例ですね。」
あいせん:そうだね。その点昔のマジックは『サイカトグが強いって?そんなの手札から叩き落とすかライブラリから削り落とせばいい。』とか言えたんだけどね。クリーチャーの1体くらいゲーム除外にするのなんかたやすいことだったし。」
あ い こ :墓地を活用するカードが多いのに、墓地のカードを処理するカードがない。そういうお話もありますね。」
あいせん:要するにそれが『ウィザーズが意図したデッキを作らされてる。』ということなんだ。そういう環境なら誰でも墓地にカードを積み上げてサイカに食わせることは考えるだろうから。あまつさえサイカ自身がその能力で墓場を肥やせるわけだし。」
あ い こ :でも、そういう状況では独創的なデッキが生まれる可能性は低いですよね。」
あいせん:そんな気はするね。というか、実はウィザーズって今年の世界選手権で優勝するデッキをあらかじめ予想できたんじゃないか?(笑)」
あ い こ :あ、そんな気はしますね。今年は一般のデュエリストですらある程度読めるくらいでしたから。」
あいせん:ウィザーズが独創的なデッキを生み出す“隙間”を今後どれだけマジックに作り込むか。そしてその“隙間”に日本人プレイヤーが気が付くのか否か。これが日本のマジック全体の将来すら決めるかもしれない。」
あ い こ :なんかどうなるのかが全く見えないんですけど。というか、最近のマジックを見てるとあまりにも絶望的な想像しかできないですから。 (^^;」
あいせん:まあそういう形で競技プレイヤーに期待するのが嫌、あるいはそもそも期待なんかしてないというのなら、自分でそういうマジックを広める工夫をしてもいいと思うよ。例えば自分が住んでる地域で初心者にも親しめるような独自のフォーマットを提案してイベントを開くとか。」
あ い こ :今の様子ですとなかなか定着しない気がしますけどね。」
あいせん:それは間違いないよ。でも“競技に牽引されたマジック”という船が沈みかけてると思うなら、取りあえず自分と周辺の人達くらいは脱出させる方法を考えないと。」
あ い こ :ただ、そうやって人が分散することで結果的に競技プレイヤーのレベルが頭打ちになっちゃうという見方もあるわけで…難しいですね、この問題は。」
あいせん:結局はその個人が過去にどういう蓄積をしてきたか、それがそのまま今の結果に反映されてるんだって。なんだかんだ言っても人間って『できることしかできない』んだよ。だから未来を変えるには、今からでもそれに見合う、言い換えると自分がその結果を得られるという裏付けになるだけの蓄積をするしかないんだ。『努力した人が全て成功しているわけではない。でも成功した人は皆すべて努力している。』という言葉があるよ。」
あ い こ :デッキ構築が心から面白いと感じられるマジック、そういうのって今や夢物語なんでしょうか。」
あいせん:本来はそれを目指すべきだと思うけどね。だから最近は『スタンダードもGAMEぎゃざも知らないデュエリストが、実は今一番マジックを楽しんでいる。』という意見も多く聞かれるよ。」
あ い こ :なんかますます『実は情報って無い方が幸せなのでは?』という気になっちゃいます。」
あいせん:少なくともマジックの世界はそうかもね。ある意味残念なことではあるんだけど。」


     

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