Postscript 
 
 

あ い こ :あいせん君、ちょっといいですか。」
あいせん:なんでしょうか。」
あ い こ :このリスト見て下さいよ。」
あいせん:あ、例のオンスロート日本語版の誤訳リストですか…あれ、この前確認したときよりも増えてないか?」
あ い こ :しかも結構致命的な間違いのあるものが多いんですよ。」
あいせん:本当だ。でも“対象のプレイヤー”と“対象の対戦相手”なんてどうやったら誤訳するんだろう。」
あ い こ :どういう仕事をしてたんでしょうね、翻訳チームは。」
あいせん:さすがにこんな同人レベルの日本語版、それこそ無償配布でも僕はいらないぞ(笑)。ましてやこれを英語版の倍近い値段で買わされる日本語版ユーザーは気の毒としか言いようがないな。」
あ い こ :それは言えてますね。これを機会にデュエリストの日本語版離れがますます進みそうな気がします。」
あいせん:でもこの様子を見ると、一度本気で『売れなくなった!』という危機感を作り手に与えないとダメな気がするよ。さすがにお粗末すぎるって。」
 
 
あいせん:さて、ここから本題ね。僕も以前はマジック販売店のスタッフだったわけだけど、実を言うと当時から『シングルカードの市場ができたことでマジックのトレードが停滞した。』という印象を持ってたんだ。」
あ い こ :それ、どういうことですか?」
あいせん:誰かがフレッシュパックを買ってカードを引き当てる。するとまずどこかのショップの価格表を見るんだ。そして値段が100円〜400円程度だったら『残念ハズレ。』で終わり。そのカードはお蔵入りさ。500円〜1000円程度なら運が良ければケース行きかな。そして1000円以上、特に2000円オーバーならたちまちスリーブに入ってファイルを飾ることになる。」
あ い こ :あ、そうなると100円〜400円のカードって世に出ることなく終わっちゃいますよね。」
あいせん:そうなんだって。するとただでさえバリエーションに乏しいデッキに更に工夫がなくなっちゃう。『こんな安いカードは使えないに違いない。』と思われて研究対象にすらしてもらえないからね。あとその辺のカードのイラストが気に入って集めようとしたコレクターが現れたとしても集まらないんだ。昔ならそういうカードは皆ファイルに持ってて、イベント会場にでも行くとあっという間に2桁集まったんだ。しかし今はそうならない。」
あ い こ :そういえば昔、ウチガさんが1800枚オーバーのリバイアサンを持ってイベント会場に来られて、その日のうちに2000枚にして帰っていかれたことがありましたよね。」
あいせん:あれはかなりイレギュラーだけどね。しかもその様子を見て絶句する“リバイアサン1000枚コレクター”が同じ会場にいたりしたし(笑)。しかしその位カードってデュエリストが集まる場所にはあるものだったんだよ。でも今はそうじゃない。」
あ い こ :しかもそうやってお蔵入りさせたカードなのに、一旦トレードを持ちかけられると『じゃあ《ウルザの激怒》と1対1でヨロシク。』とか平気で言っちゃう(笑)。」
あいせん:それもあるなあ。いや、笑い事じゃなくて実話なのがかなりイヤなんだけど。 (^^; だから実際に多くのコレクターはコレクションとかトレードがつまらなくなってマジックをやめちゃった。」
あ い こ :じゃあさっきのお話で、スリーブに入れられてファイルに飾られたカード達は?」
あいせん:うん、今度は『いつか自分で使うかも。』『持ってると更に値が上がるんじゃないか?』と思われて世に出ない(笑)。」
あ い こ :それじゃあトレードが成立しないじゃないですか。 (^^;」
あいせん:でも実際そうなってるもん。特にスタンダードで使えるS級のレアはそういう感じかな。《呪われた巻物》しかり、《マスティコア》しかり、《ウルザの激怒》しかりだよ。」
あ い こ :これって要するに、結果として“情報がトレードを停滞させた”とも見て取れますよね。」
あいせん:その通りだと思うよ。そもそもトレードで欲しがられるカードが、そういう情報のおかげでごく一部の人気筋に限定されちゃうし。」
あ い こ :で、そのカードがブロック落ちする頃になって慌てて放出。でも市場価値は下がってるから結局は大損。」
あいせん:しかし自分はスタンダードしか遊ばないから、結局は同じことを毎年繰り返す。そして、やがてイヤになってマジックをやめちゃう。」
あ い こ :本当思うんですけど、情報なんて必要じゃない人は見なきゃいいと思うんですけど。例えばあいせん君がデッキ情報とか、あと自分に批判的な人達の意見を見ないようにしてるみたいに。」
あいせん:後者は余計だって(笑)。でもそもそもタイプワンのデッキ情報なんて、見たくてもそんなにないしなあ。あったとしても僕のカード資産じゃ再現できないし(涙)。」
あ い こ :なんで人ってこんなに情報を欲しがるんでしょうか?」
あいせん:例えばパックを買ってレアを引き当てる場面を考えてみようか。あいこ先生はどういうレアを引き当てたらうれしいですか?」
あ い こ :そうですねえ…まだ1枚も持ってないカードとか、あとイラストがきれいなカードですね。もちろんデッキに使う予定のカードとか、自分が見て強いと思われるカードもうれしいですけど。」
あいせん:まあ普通はそうだと思うんだ。でも最近マジックを買ってる人って、多分それとは若干発想が違ってると思う。」
あ い こ :と、言うと?」
あいせん:簡単に言うと多くのデュエリストが“自分で当たりレアを判断できない”んだ。TVゲームなんかですっかり情報に依存することを覚えちゃっていて、自分でゲームの中に散りばめられた情報を分析できないんだな。」
あ い こ :しかし当然マジックのレアにも“当たりかハズレかの判断基準”が欲しい。でも自分じゃ思いつかない。だから情報を見ちゃう。」
あいせん:そういうこと。実はこんな実験をやった人がいるんだ。3人の成人男女に『これからお出しする料理は“鉄人”が作る物です。』と言って料理を食べさせたんだ。試食の前に本物の鉄人が出てきて挨拶までしたんだけど、実際に出した料理は、料理が苦手だという女性が裏で作ってたんだ。作り方はもうむちゃくちゃ。塩を入れすぎたといって砂糖を入れてごまかしたりとか。で、結果はどうなったと思う?」
あ い こ :3人は出てきた料理を食べて大絶賛。」
あいせん:その通り(笑)。盛りつけから味付けまでもうべた褒めさ。要するにその位人間は自分で価値判断をしてない、そういうことですよ。実際にマジックの世界でも似たような話は聞かれてるし。」
あ い こ :あ、そういえば《呪われた巻物》が全盛だった頃に言ってましたよね。『こんな使い方の難しいカードがここまで高価なのはおかしい。持っていても使いこなせないなら手放せばいいのに。』って。」
あいせん:でもやっぱり『《呪われた巻物》は強いぜ!』って言われちゃうとできないんだろうなあ。デュエリストがマジックに求めてるのが『俺が最強だという事実』である以上、最強と言われてるカードを手放すことは、自分が最強になることを放棄することになっちゃうから。まあ正確にはそう思い込んでるだけなんだけど。」
あ い こ :でも格闘ゲームと違って、マジックには最強のカードとかデッキってないんですよね。というか、あっちゃいけないんですよね。」
あいせん:もちろんそうだよ。理想はね。でも現実は多分そうじゃない。少なくともGAMEぎゃざは『今年のスタンダードの最強デッキはサイカトグだ!』と明言してるもん。実際はどうか分からないけど、でもそんな最強デッキが存在するTCGなんか、そもそも欠陥商品として回収されたって不思議じゃないと思うんだが。」
あ い こ :少なくともサイカトグのパーツ以外のカードはなくてもよさそうですよね。」
あいせん:それは言えてるかなあ。それだったら昔の禁止カードみたいな交換サービスくらいはして欲しいかも。『オデッセイのカードを500枚送ると、今年猛威を振るったサイカトグの構築済みデッキをもれなくプレゼント!』とか(笑)。だって所詮デュエリストって“最強のデッキ”以外は作りたがらないみたいだし。少なくとも日本のデュエリストはね。」
あ い こ :ハズレのレアを買ってもらわないと商売として成立しないTCGで、わざわざ『この商品の当たりのカードはこれです。なんとそれ以外は全部ハズレだぞ!』という情報を流して商品の価値を目減りさせちゃう。なんか頭悪いですよね。」
あいせん:ああ、それは言えてるかも。だからアクエリなんかでは、デッキ情報に付随してアンチ情報を載せるみたいだよ。そのデッキのパーツとなったカードの高騰を抑え、他のカードの利用価値も高める。そういう意味でもアンチカードやアンチデッキの考察って大事なんだけどね。」
あ い こ :でもGAMEぎゃざにはそういう情報ってほとんど載りませんよね。」
あいせん:本当、売り方というか読ませ方がゲーメスト的になってるなあ。『GAMEぎゃざを読まなきゃマジックでは勝てない!』とでも言いたいんだろうか。実際には世に出てるデッキ情報を2〜3ヶ月遅れで載せてるだけなんだけど。しかも遅れることによって発生する“アンチデッキの考察をする時間が取れる”といったメリットはまるで活かしてないし。」
あ い こ :その点ゲーメストの方がむしろマシだったんじゃないですか。この前あいせん君が持ってた別冊をちょっと読んだんですけど、ゲーメストはゲームに登場するキャラクタは一通り使って攻略を書いてたみたいですから。」
あいせん:ああ、そうかもしれない。一応最強キャラを別のキャラで破るための研究はしてたから。でもGAMEぎゃざにはそういう素振りすら見られないし。」
あ い こ :でも思うんですけど、そういう質の低い情報を取捨選択してないとすれば、日本のデュエリストにもやはり問題はありますよ。」
あいせん:…今日は発言が過激ですねえ。 (^^;」
あ い こ :え!?、そうですか。 (^^; 結構当たり前のことを言ってるつもりなんですけど。」
あいせん:普通の感覚で言うとそうなんだと思うよ。今現在マジックを遊んでる人達だって、昔の格闘ゲームの様子を見れば多分『なんで格闘ゲーマーは、こんなゲーメストなんて低レベルな雑誌に頼るんだろう?』と感じると思うんだ。でも逆に自分のことをそう言われると大抵の人はムカツクからね(笑)。自分はそういう人達とは違う。自分はちゃんと情報を利用する立場に立ってる。みんなそう思ってるから。」
あ い こ :でも実際に情報を利用する立場にいる人って少なそうですよね。」
あいせん:それは間違いないかも。僕に言わせると、まずマジックでスタンダードしか遊ばないという時点で情報に利用されちゃってるもん。」
あ い こ :それを言っちゃうと実も蓋もないんですが。 (^^;」
あいせん:え、間違ってますか?」
あ い こ :いや、世の中には合ってるか間違ってるか以前に、口にしていい意見とそうでない意見がありますから(笑)。」
あいせん:ああ、そう言われると反論できないなあ。」
あ い こ :そもそもゲームって、いかにして“世の中の情報には載ってないこと”を見つけだすかが楽しいし、それを目指して遊ぶものだと思うんですよ。作り手が全く想像もしていなかった遊び方が次々と編み出される。だから囲碁や将棋ってロングセラーであり続けられると思うんです。でも最近の遊びってそうじゃないですよね。TVゲームなんかその典型例ですけど。」
あいせん:ああ、そうかも。たとえ1本のゲームを何年にも渡って遊び続けられたとしても、ゲーム雑誌辺りが『そんな古いゲームはもう捨てなさい。ほらこんなに面白そうなゲームがどんどん出るんだよ!』とか吹聴するし。実際には自分にどれだけの広告費を払ったかでしかゲームを評価してないくせに。」
あ い こ :でもマジックって日本総代理店が攻略雑誌も出版してるわけですから、もっとマジックそのものが盛り上がるような内容を工夫して出そうと思わないんでしょうか。」
あいせん:ああ、要するに彼らには『日本での競技マジックの成功が、イコール日本のマジックの成功だ。』という感覚しかないんだろう。たとえ日本のマジック人口がたった3人になったとしても、その3人が世界選手権で上位を独占すれば『日本のマジックはここに成熟を見た!』とか吹聴するに決まってるよ。」
あ い こ :あ、それ実際にやりそうでイヤですね。 (^^;」
あいせん:とにかく言えることは“自分に不要なムダな情報は見ない”これに尽きるよ。そんな時間があったら自分でデッキの1つも考えてみよう、そういうことです。」
あ い こ :そうですね。GAMEぎゃざを買うお金があれば、英語版パックなら2パックくらい買えますし。」
あいせん:…あいこ先生、それこそ『世の中には口にしていい意見とそうでない意見がある』というあれだよ。 (^^;」
あ い こ :あ、そうでした。まあいいや、今のセリフはあいせん君が言ったことにしちゃおう(笑)。」
あいせん:これこれ、ログの改竄したらもう振り返りに付き合ってあげないぞ(汗)。」


     

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