Postscript 
 
 

あ い こ :私のエッセイも、回を重ねて今回で30作目ですよ。」
あいせん:一部突発的に追加してる分を入れるともっと増えるけどね。 (^^;」
 
 
あいせん:ところで、なんか今回はまとめるのに随分と時間がかかったみたいですが。」
あ い こ :はい、どうやって書けばいいか迷っちゃった上に、途中で色々と割り込みが入っちゃって。」
あいせん:そうだったねえ。」
あ い こ :今回のエッセイを書きながら思ったんですけど、特にここ最近のマジックってあまりにも“営業色”を強く出し過ぎちゃったんじゃないでしょうか。」
あいせん:というと?」
あ い こ :普通は遊びって“面白いから遊ぶ。だから買う。”という方程式で売れるじゃないですか。でも最近のマジックって“遊びたければとにかく買え!”になってるでしょう。特にリミテッドなんかそうですよね。シールドやドラフトを遊びたければとにかくパックを買え。しかし買ったパックにはひょっとするとレアが入ってないかもしれないし、ましてや引いたレアのうち構築戦で使えるのは1割程度かもしれない。そんな遊びって売れなくなって当たり前だと思うんですけど。」
あいせん:それは間違いないと思うよ。どれだけマジックという遊びが好きでも、かけられる予算には誰でも限度があるからね。ましてや同じ予算で得られる楽しみが昔よりも目減りしてるんじゃ尚更つらいかな」
あ い こ :でもここまで営業色を強くしてもマジックは売り上げが増えてないように見えますよね。ということは、今みたいな売り方をしてなければ、もっと早くにマジックって販売店の撤退が相次いだということなんでしょうか。」
あいせん:それについては“たられば”になるからなんとも言えないなあ。」
あ い こ :確かにそうなんですが。」
あいせん:例えばリミテッドって一見するとかなり売り手有利のフォーマットだよね。ところが実際にはこのリミテッドで商売ができるお店って、日本のマジック販売店の中では多分少数派のはずなんだ。」
あ い こ :なんでですか?」
あいせん:だってリミテッドって基本的にはデュエルルームで遊ぶものなんじゃないの。」
あ い こ :あ、そうか。ウィザーズ社やホビージャパンがあれだけリミテッドを推奨しても、実際にはその恩恵を受けられたお店って案外少ないんですね。」
あいせん:要するに日本におけるリミテッド推進って、基本的には前にも書いたように“ホビージャパンがノルマを達成するための販促”だったんだ。デュエルルームを持ったお店が日本のマジックにはそれ程多くない。ましてやホビージャパンはデュエルルームなんか持ちようがない書店やコンビニでもマジックを売らせてる。そんな中でリミテッドを推進しても、一部のデュエルルーム設置店が多少潤うか、それこそ並行輸入の安い英語版の販促にしかならないだろう。」
あ い こ :自宅で遊ぶなら義理立てして近所のお店で買う必要はないですからね。しかもそれだけガシガシとパックを開けるなら、普通は1円でも安いお店を選びますもんね。」
あいせん:そういうことですな。」
あ い こ :やっぱり難しいですね。マジックに関わる人達がもれなく恩恵を受けられるマジックの遊び方って。」
あいせん:そうだねえ。ただ過去の色々な失敗の経験を踏まえて、例えばアクエリなんかは“フォーマットの固定化”を始めたよ。」
あ い こ :“フォーマットの固定化”ですか?」
あいせん:要するに“今後発売されるカードセットは使えない”というフォーマットですよ。マジックで言うと『このフォーマットはアルファ版からウルザサイクルまでのカードが使えます。』みたいな感じ。」
あ い こ :確か“クラシックスタイル”ですよね。そういうフォーマットがマジックにもできれば、昔からのデュエリストはマジックに定着しやすそうですね。」
あいせん:最近のヴィンテージ・プレイヤーがマジックの何に不満かって、新たに出てくるカードにセンスがなくて昔のカードがどんどん使えなくなってる部分なんだって。例えば Grinning Demon(ON) の登場で、今や Juzam Djinn(AN) の実質的な価値は相当下がってる。これじゃあ Juzam Djinn が好きでマジックを続けてきたデュエリストはたまらずマジックから逃げ出すだろう。あと Naturalize(ON) なんてカードはちょっとセンスがないにも限度があると思うよ。昔のデュエリストって Disenchant をデッキに入れるために、あれこれ四苦八苦してマナのやりくりを工夫してをデッキに入れてたんだ。それがこんなにあっさりとで撃てるようになるんだもん。」
あ い こ : Vindicate(AP) なんかもヴィンテージのデッキではよく使われてますけど、でも評判という点ではあまりよくないですよね。撃ってるご本人が『なんでこれとかじゃないんだ!?』とか言ってますし。」
あいせん:その他僕の周辺では『なんで Intuition(TE) はヴィンテージで禁止にならないのか。』とか『“願いカード”が禁止にならない限り僕はマジックを再開しない。』なんて意見が聞かれるな。この辺のカードって使うと今までにない動きができるんだけど、でもそれ故昔からのマジックが好きなデュエリストには受け入れ難い面もあるみたい。」
あ い こ :そうやって昔からのデュエリストがどんどんマジックを離れ、でも最近はそれに代わるニューカマーさんが入ってこない。それだったら昔からのデュエリストがマジックを安心して続けられるように、新しいカードが入ってこないフォーマットを作ろう。そういうことなんですね。」
あいせん:まあね。」
あ い こ :でもそういうフォーマットが流行っちゃうと、それこそ新しいカードが売れなくなっちゃうんじゃないですか?」
あいせん:それはそれでいいんじゃないかな(笑)。」
あ い こ :そんな無責任な。 (^^;」
あいせん:でもそれだったらそういう商売の仕方をすればいいんじゃないの。だってホビージャパンにしても、自社経由のマジックが売れなくなっても開き直って、並行輸入のカードを買って競技マジックに取り組む人達にスペースやイベントを提供して収益を上げてるじゃない。まあ黒字になってるかどうかは分からないけど。」
あ い こ :でも、それにしてもちょっと乱暴な論理ですよ。第一デュエルルームを持ってないお店はどうするんですか?」
あいせん:あ、その辺は大丈夫ですよ。そういう形でマジックに人が定着すれば、間違いなくその中から新しいカードやフォーマットに手を出すデュエリストは大勢現れるって。少なくとも今みたいな“もの凄い勢いで人を使い捨てる商売のやり方”よりは、間違いなくマジックの市場規模は大きくなると思うよ。」
あ い こ :あ、そういうことなんですね。納得しました。」
あいせん:あとそういう形でのんびりマジックを遊ぶ人達は、まあ間違いなく並行輸入のボックスをガシガシ通販で買ったりはしないだろう。だから実を言うと国内ルートのパック拡販にも貢献してくれるはずなんだ。」
あ い こ :それはありそうですね。」
あいせん:ホビージャパンがヴィンテージのプレイヤーを嫌ったのって、多分『こいつらは英語版のカードに抵抗感がないから、自社ルートのカードなんか買っちゃくれないに違いない。』という思いこみがあったんじゃないのかな。でも実際には自分達が一生懸命育てた競技プレイヤーこそが真っ先にホビージャパンを見限ったわけだけど。あとヴィンテージ・プレイヤーを相手にする日本のバイヤーが、米国のバイヤーとの交渉材料に日本語版のカードを集めたり自らパックを買ってたなんて実例もあるんだ。」
あ い こ :確かにそうですね。私が知ってる限りでも、ヴィンテージ・プレイヤーって想像以上に日本語版の売上に貢献してるんですけどね。」
あいせん:でも本当思うけど、少なくともホビージャパンが本当に日本で育てるべきデュエリストって、そういう形で細く長くマジックと付き合ってくれるお客さんだったはずなんだ。自分達がマジックの流通を歪にしてることは自覚してただろうし、競技が流行れば安い並行輸入の英語版が珍重されることも想像が付いたはずなんだけどなあ。」
あ い こ :でもそもそも『それだけ先を見通せる会社が日本でマジックを売ってればこうはならなかったはずだ。』というご意見はあちこちで聞かれますよ(笑)。」
あいせん:何か最近更にコメントが辛くなってますね。 (^^;」
あ い こ :ここしばらくエッセイを書いてて思ったんですけど、そもそもユーザーが“自衛”しながらじゃないと遊べないゲームなんて変なんですよ。かつての対戦格闘ゲームにしても、ゲームバランスが悪い物を色々と工夫して遊んだり、マナーやモラルが悪いプレイヤーを避けながら対戦してたじゃないですか。マジックなんかいよいよひどくて、トレードでシャークされないように身を守り、勝つことしか目的を持たないコピーデッキ対策に情報を集めカードを買い、そしてマナーの悪い対戦相手の言動に耐えながらデュエルをしてるんです。あまつさえ日本で売ってるマジックは高いから高校生までが並行輸入に手を出す。そこまでしないと遊べないゲームなんて、私から見ると既に失敗作なんですけど。」
あいせん:う〜ん…まあその問題点の全部が全部、マジックというTCGのシステムに起因してるわけじゃないんだけどね。ただそれだけ問題が多けりゃプレイヤーは増えないだろうし、また始めた人もどんどん逃げてくだろうな。」
あ い こ :あと最近のマジックに元気がないのって、そういう現状に改善がなされるという安心感が感じられないのもあるんじゃないでしょうか。このまま日本のマジックは永遠に競技指向でスタンダード。これじゃあ『自分達はこの先何年こんなことを続けるんだろう?』と思いたくなりますよ。」
あいせん:プロの選手が自分の道具や技量に継続投資するのは当たり前なんだけど、マジックではそれを一般のデュエリストにまで求めちゃうからなあ。」
あ い こ :ウィザーズ社やホビージャパンが競技指向による“買い続けるマジック”を推進するのは別に構わないと思うんです。でもそれなら同時に“あまり買わなくても遊べるマジック”も提案してくれないと、結局デュエリストから見ると“マジックを買い続ける”か“マジックをやめる”かの2択になっちゃうんですよ。昔はそれでも前者が相当数に支持されてたみたいですけど、でも最近は後者を選択する人が主流派になってきた。そういうことですよね。」
あいせん:そういうことだろうと思います。」
あ い こ :別に“あまり買わなくても遊べるマジック”にまでウィザーズ社やホビージャパンが手厚いサポートをする必要はないんですよ。ただ不必要に“買い続けるマジック”だけを押し進めて、まるでそれがマジックの世界で唯一絶対の正義であるかのように触れ回るのはやめて欲しいです。パワーナインがなくても戦えるタイプワンの世界があるように、本来のマジックってそれだけ懐の広いおおらかな遊びだったはずなんです。だから多くの皆さんに支持された。そうでしょう?」
あいせん:それは言えてると思いますよ。そして逆に今はそうじゃないから買い手はおろか売り手までがマジックから逃げ出してる。」
あ い こ :そうなんですよね。なんかマジック販売店の撤退が、いよいよもの凄い勢いで進んでるというお話も聞こえてきてますし。」
あいせん:ちょっと考えてみると、実は“ブロック落ち”ってデュエリストだけじゃなくて、販売店がマジックから手を引くにしても1つの格好のタイミングになるんだよね(笑)。今は何食わぬ顔で営業してるお店も、実は内心では『今抱えてる在庫の処理がある程度終わったら…』なんて考えてるかもよ。」
あ い こ :そうかもしれませんね。なのしろあの鳴り物入りで登場したX−BOXですら、勢いに陰りが出た途端に販売店が在庫処理のための値引き販売を始めてるそうですから。」
あいせん:福井の家電量販店ですら、DoA3付きで2万円を切ってたのにはさすがに驚いたな。」
あ い こ :あ、そういえばあいせん君は買わないんですか。例の“ビーチバレーボール専用機”として(笑)。」
あいせん:買いたいのは山々だけど資金がありません。 (^^; 逆に資金があるなら買わない理由はないんだけど(あせあせ)。」


     

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