ここは、とある農園。のどかな春の一日である。春の日差しが眩しくて、春植え野菜の種蒔きには絶好の日和となった。いつものように早朝から大勢の人達が畑を耕し始める。・・・いや“人達”という表現は相応しくないかも知れない。なぜなら彼らは明らかに“人”ではないからだ。「おや、これはジェニファーさん。今日も精が出ますね。」
「お早うございます、ヒッピーさん。今日も一日頑張りましょう。」この2人(!?)はかつては敵味方に別れてドミナリアの荒野で戦った者同士である。だが戦場で受けた予期しない呪文の効果によりこの農園にやって来て、今は隣同士仲良く暮らしている。
「しかし農作業に飛行能力は不要ですねぇ。」
「本当に。トランプル能力と交換して欲しいですわ。」
「でもジェニファーさんは私よりも力持ちだから・・・」
「それ以上言うと鍬投げ付けますよ。」鍬を手にした2人の農作業姿も、今ではすっかり板に付いていた。
「ところで今日の新聞読みましたか?」
「例の“高齢化”の問題でしょう?。ここってしばらく新しい方がいらっしゃらないからしょうがないんじゃないですか?」
「ジェニファーさんはまだいいですよ。つい最近もぽつぽつとお仲間がいらっしゃってるじゃないですか。私なんか随分前から同じ種族の新入りを見かけませんから。」
「でも最近は新入りさんが少なくなりましたねぇ。」
「ドミナリアで何かあったのでしょうか?」
「きっと全員雷に打たれて黒こげに・・・」
「そ、それ笑えないし、ジェニファーさん達は問題ないじゃないですか。」そこへ、彼ら2人と顔見知りの男がゆっくりとした足取りで近づいてきた。
「いよっ、お二人さんお早うさん。」
「あ、ナムジンさん、お早うございます。」
「また昨日も遅くまで飲んでましたね?」
「いやぁ、葡萄酒が旨くてねぇ。昨日来た新入りが持ってきたもんで夜通し酒盛りよ。」
「それだったら呼んで下されば良かったのに。」
「あ、そうだった、ジェニファー姉さんイケる口だったのに忘れてた。位あっという間だもんな。」
「私はあれは駄目です。ジェニファーさんの半分飲むのが精一杯。」
「ドミナリアで戦った時、無理矢理飲まされそうになって倒れてたもんね。」
「ええ。まあ本当に倒れたのは、その葡萄酒を私に全部飲ませようとした魔道師でしたが。」
「『計算間違えた〜!』とか言ってひっくり返ってましたね。」
「あ、そうそう。ヒッピーさん宛の手紙預かってるよ。ほれ、白騎士さんからだ。」
「直接渡しに来ればいいのに。」
「・・・何かできない事情があるんでしょう。」こうして3人はいつもの四方山話に花を咲かせながら、畑仕事に精を出していた。そして昼の弁当の時間。今日はジェニファーの焼いたパンと昨日手に入った特上の(!?)葡萄酒だ。
「あ、そうそう。明日天使種族の総会があるの。でも行くの気が重いなぁ。みんな口を開くと他の種族の悪口ばかり言ってる。」
「それはうちの種族も同じですよ。1度は剣を交えた関係だからやむを得ないでしょう。」
「俺達は素手だけど?」
「ああ、うちではナムジンさんの種族の悪口は出ませんわ。意外と直接対決した事がないですからね。」
「ジェニファーさん達は飛んでるし、下手すると森を渡ってますから。」
「ジェニファー達に森を渡らせる魔道師はおらんだろう?」
「私はよく渡ってましたけどね。敵の魔道師の『くそ〜、あいつしかおらんのか!』という叫び声がよく聞こえてましたけど。」
「いいなぁ、森渡り♪」
「でも黒の仲間には、森を渡ると途中で道に迷ってヘロヘロになって帰って来る方とかいますよ。」
「やっぱり森渡りや〜めたっ。」
「何という変わり身の早さ。」すると突然、目の前に1人の天使が現れた。
「あ、あれ?、ここはどこ?」
「きゃあ!!」しかし次の瞬間、現れた天使は瞬く間に消えてしまった。
「い!?、今の何?」
「あっという間に現れて、あっという間に消えたぞ!」しばらくして、ヒッピーとジェニファーがぽつりとつぶやいた。
「・・・今時 Ring of Ma'ruf なんか使ってる!?」
「・・・なんかあの子、光ってなかった?」
※ 一応自分で思い付いたオリジナルなネタなのですが、WizzとかどこかのHPとネタ被ってたらごめんなさい(笑)。