ここは、あるバインダーの中。「・・・最近ちょっと暇ね。」
「そうね。」
「ここしばらく構ってもらえてないし。」
「そうそう。」
「最近旅行にも行ってないよね。」
「そうね。横浜は面白かったもんね。」
「あ、私横浜行ってない。」
「そっか。でもあの頃って私達150人位しかいなかったから。」
「そう言えば今私達何人いるの?」
「この前にっこり笑って『350越えた!』とか言ってたけど。」
「ばっかじゃないの?、そんなに集めて。」
「だって、私達そんなにデッキで使われるカードじゃ・・・」
「それ言っちゃうと話が終わっちゃうんだけど。」その時、にわかに外が明るくなる。どうやらバインダーの所有者が久しぶりに現れたらしい。何やら声が聞こえる。
「は〜い、お嬢ちゃん達、ここで大人しくしてるんだよ。へっへっへっへ・・・」
「・・・うちのオーナー、こんなキャラクタだったっけ?」
「う〜ん、200を越えた辺りから何か吹っ飛んだ気はするけど。」
「確か本人も『たがが外れた。』とか言ってたわよ。」どうやら今日は一気に10人程の新入りが来たようだ。
「・・・ここ・・・どこですか?」
「ふっふっふ・・・アビス(底なし地獄)へようこそ。」
「新人さんを脅してどうするの!。第一それ Magic ネタじゃないし。」
「あ、そうね。まあとにかく大勢来たわね。ようこそいらっしゃい。」
「あ、私の仲間が凄い数いる!?。」
「あなた達で365人になったみたい。」
「私の仲間ってこんなに大勢いたんですね。」
「なんでも世界中には40万人程いるらしいわよ。」
「・・・3人程あの世に葬られたけど。」
「そのネタ、そろそろ止めた方がいいのでは?」
「あ、でもねぇ、オーナーは表向き平静を装ってるけど、内心は未だにはらわた煮えくり返ってるらしいわよ。」
「うちのオーナーのああいう怒り方、始めて見たもんね。」
「いつもは一瞬怒鳴ってすぐ終わりなんだけど、今回はちょっと・・・。」
「あまりの事に笑うしかなかったんだけど、その笑いが不自然にひきつって・・・。」
「あれは間違いなく一生恨み続けるわね。」
「っていうか『この怒りは一生忘れん。』って言ってたし。」
「あのぉ・・・何の話ですか?」
「あ、ごめんごめん。あなた達は知らない話だったわね。」
「ここはうちのオーナーのバインダー。あなた達はオーナーのコレクションとしてここに収まったわけ。まあ多分2度と出しちゃもらえないでしょうけど。」
「そ、そんなぁ・・・。 (;_;)」
「あ、大丈夫大丈夫。ここって結構居心地いいから。」
「色々な所に連れてってもらえるし。」
「京都に横浜、それに名古屋。」
「今後また京都に遊びに連れてってもらえるみたいよ。」
「やったぁ、今度こそ“京都もなか”と“京都ういろう”が食べられる!」
「・・・オーナーがよく使うギャグの真似しないの。」その後バインダーはいつものリュックに収められる。
「あ、今日は久しぶりにお出かけみたいよ。」
「でも、あの足じゃ遠くには行けないでしょう?」
「というか、足折ってるのに無茶するわね。このバインダー軽くないのに。」
「まあ、とにかく私達は黙って着いて行くしかないから。」
「ところで・・・皆さんはどうやってここへ?」
「私はアメリカにいたんだけど、この前航空便で送られてここへ。」
「私は日本で別の人にパックから出されて、しばらくその人の所にいたんだけどトレードされたみたい。で、郵便で送られて気が付いたらここに。」
「そうか、みんな色々あるんだね。」
「そういえば最近、うちのオーナーってタダで私達を掻き集めてるみたいよ。」
「まったく・・・ここぞとばかりに好き放題やってるわね。」
「ああ、それでなのか。最近カードも買ってないのになんで増えてるのか疑問だったんだけど。」
「でも昔の集め方は凄かったけどね。」
「あそこにスペインの娘がいるでしょう?あの娘の時が一番凄かったわね。」
「『友達のコレクターに渡すから・・・』と言った人の横っ面をマスティコアでひっぱたいて出させた。」
「その時私も一緒に引き取られたの。あの時は確か地震をおまけに付けてたはずよ。」
「地震をおまけに?もらったんじゃなくて?」
「うん、付けてた。」
「ばっかじゃないの?」
「そんなの、今に始まった話じゃないじゃない。」
「・・・あ、確かにそうか。」どうやらリュックは車に乗せられたようで、どこかに向かって移動を開始。
「車に乗るのも久しぶりね。」
「というか、オーナーが顔を見せたのって1ヶ月振り。」
「こんなに長期間私達を手元に置いていなかったのって始めてよね?」
「いつもは何をさておき持って行くのに。」
「そういえばこの前『君らを持っていれば事故には遭わなかったかも。』とか言ってたっけ。」
「そうそう、私達をないがしろにするからバチが当たったのよ。」
「それはそうと、うちのオーナーは私達をこんなに集めてどうするつもりなのかしら?」
「まさか、この前言ってた“くるせいだ〜風呂”とかやんないでしょうね?」
「でもこの前『知り合いのコレクターさんが“せら風呂”とか“りばいあさん風呂”とかやって入れてもらえたら、返礼としてやるしかあるまい。』とか言ってたわよ。」
「でも、向こうとは数が違うわよ。」
「そうなんだけどね。」
「なんなら全部混ぜちゃうとか。」
「多分終わった後パニックになるからパス。」
「もしそうなったら、うちのオーナー間違いなくセラくすねるね。」
「それはデフォでしょう?」
「その時このバインダーに入っている“れべっかせら”も入れるのかなぁ?」
「それは逆にくすねられる可能性大だから多分やんないと思う。」
「でもねぇ・・・私達いくら集まっても2/2のままなのよね。」
「・・・それ、言わない約束だったのに。」やがて車が止まる。どうやら目的地に着いたらしい。
「どうやら着いたようね。」
「あ、オーナーが私達の数を数え始めたわよ。」
「またホームページの更新するみたい。」
「それにしても・・・ここどこなの?」
「ひょっとして・・・ここが『病院』という所なの?」
「へえ、こういう所なんだ。」こうしてくるせいだ〜達の入院生活(!?)は始まった。