俺の名前は今引勝利(いまびきしょうり)。親父は昔馴らしたデュエリストだった。
親父は自分が果たせなかった夢、そう“ギャザの星”になる夢を俺に託した。
でもおかげで俺は毎日ちゃぶ台に向かって(素振りならぬ)素タップ1000本。許された遊びはこれだけ。
しかも親父は酒を飲みながらその様子を見て・・・「タップは90度だろう!何度言えば分かるんだ!」
・・・と俺を殴る。おかげで俺の体には生傷が絶えない。おまけに手首は腱鞘炎。
ある日の朝、俺は親父に言われた。
「勝利よ、今日からお前はこれを付けて学校に行け。」
「な、なんだよ、このギブスは!?」
「名付けて“ジoン・フoンケル養成ギブス”だ。」
「ジョ・・・“ジoン・フoンケル養成ギブス”!?」
「取りあえず付けてみろ。わしが手伝ってやる。」
「い、嫌だ、何するんだ、止めろよ親父!?」ガチャン、ギッチョンギッチョン。
「ふう、手間かけさせおって。」
「あ、あれ?、重くて動けないのかと思ったけど全然軽いぞ!」
「ふっふっふ、そうだろうそうだろう。デュエリストに余計な筋力は不要だからな。」
「で、親父。これのどこが“ジoン・フoンケル養成ギブス”なんだよ?」
「甘いな勝利。取りあえずこのペンで自分の名前を書いてみろ。」
「あ、ああ、いいよ。」さらさら・・・
「あ、あああっ、“今引勝利”と書いたつもりが“ジoン・フoンケル”になってる!」
「どうだ、これこそ“ジoン・フoンケル養成ギブス”の威力だ!」
「こ、これで俺も“ギャザの星”に一歩近づいたのか!?」
「さあ、それはどうかな?」ガチャ〜ン!(勝利がちゃぶ台をひっくり返した音)
−− ・ −−−− ・ −−−− ・ −−−− ・ −−−− ・ −− そして夕方。学校から帰った俺に親父は言った。
「勝利よ、お前には更に厳しい修練を積んでもらう事にした。」
「まだ朝の件を根に持ってるのかよ?」
「そ、そういう訳じゃないが。いいか、ここに60枚のライブラリがある。この中に1枚だけ黒い蓮が入っている。これを1発で引き当てる事ができたら晩飯を食わせてやる。」
「親父、それってギャザじゃなくて電波・・・」
「ええい、うるさい!。つべこべ言わずに引け!」親父は1度言い出すと聞かない人だ。俺は諦めて黒い蓮を引き当てる事にした。
「む・・・むむむ・・・えいやあ!」
俺はライブラリから1枚カードを引いた。それは・・・
「ひ・・・引いたよ親父!」
「よくやった。約束通り晩飯を食わせてやる。」
「・・・それはそうと親父、なんで残り59枚全部セラ天なんだよ!」
「む・・・そ、それは・・・」
「というか、スリーブにも入っていないから裏の傷でバレバレなんだけど。」
「う・・・むむむ・・・よ、良く気が付いた。」
「は!?」
「そうやって裏を見てカードを判別するのも鍛錬の1つだったのだ。」
「そ・・・そうだったのか!」
「始めての訓練でこれに気が付くとは、将来が楽しみだ。」
「うん、親父。俺頑張るよ!」いつもの粗末な晩飯の後、親父は俺を自分の前に正座させて言った。
「勝利よ、いよいよお前に秘技を授ける時が来た。」
「秘技!?、一体どんな・・・」
「名付けて『大リーグドロー1号』!!」
「だ、『大リーグドロー1号』・・・で、なぜ大リーグ?」
「ええい、いちいちうるさいぞ。要はそれ位凄いドローという事だ。」
「よ・・・よく分からないけど凄いよ親父!」
「そ、そうだろう。(案外単純な奴だ。)」
「早速そのドローを教えてくれ!」
「よし、1回しか見せないからよく見ているんだぞ。」そう言うと、親父はライブラリの上に手をかざして念を入れ始めた。
「うん・・・うむむむ・・・」
「な、何が起きるんだ?」
「いくぞ!、だ、大・リ・ー・グ・ド・ロ・ー・1・号!!」ガラピシャ〜ン!(なぜか雷が落ちた音)
「どうだ勝利、見たか『大リーグドロー1号』!!」
「な・・・何が起きたのか全然分からないよ!」
「手札が1枚増えただろう?」
「ドローしたんだから当たり前やん。で、それだけ気合いを入れてドローした意味は?」
「・・・対戦相手への威嚇。」
「・・・そんなにジャッジにつまみ出されたいか?」その後親父は10分程外ですねて煙草を吸っていたが、再び俺を自分の前に正座させて言った。
「ならば仕方がない、お前にはまだ早いと思ったのだが。」
「な・・・なんだよ、改まって。」
「お前に我が家に代々伝わる究極奥義を授ける。」
「代々って・・・うちはそんなに昔からデュエリストやってたのか?」
「いや、わしが編み出してお前に授けるから代々。」
「そういう事かい。」
「まあとにかく聞け。わしがトーナメントを席巻した時に編み出した究極奥義。名付けて・・・」
「名付けて・・・」
「『大リーグドロー2号』!!」
「・・・ああ、やっぱりね。」しかし親父はそんな俺の冷淡な反応を無視してライブラリに向かう。
先程とは比べ物にならない程のオーラが親父の背中に発せられる。「うん・・・ふん・・・む・・・うむむ・・・うむむむむ・・・」
「な、何だ?、一体何が起きるんだ?」
「ど・・・ど・わ・い・リ・ー・グ・ド・ロ・ー・2・ご・お・う・っ・!・!」そして次の瞬間・・・
「あ、あれは何だ?」
「え!?、何?」親父は俺の後ろを指さしたのだが、そこには何もなかった。俺は親父の方に向き直った。
「み、見たか、究極奥義『大リーグドロー2号』!!」
「ど・・・ドローが見えなかったよ、親父。1号以上に何が起きたのか全然分からないよ!?」
「見ろ、手札が一気に2枚増えただろう?」
「・・・それやると、全国の公認大会に名前が出回るぞ。」親父はしばらく黙っていたが、俺を外に連れだして空を見上げた。
「勝利よ、あの星を見ろ!」
「見ろって・・・あれカシオペア座じゃねえか。」
「あの形を見てお前は何も感じないのか?」
「あの形って・・・あ、あああ〜っ!」
「気が付いたか!。あれは“W”ではない。あれこそMagicの“M”。つまりギャザの星じゃ。」
「ぎゃ・・・ギャザの星。あれがギャザの星なのか!」
「勝利よ、お前もギャザの星になれ!」
「お・・・親父!」
「勝利〜!」翌日、勝利は真っ当なデュエリストとしての修行を積むべく、逃げるように親父の元を去った。
−− ・ −−−− ・ −−−− ・ −−−− ・ −−−− ・ −− ☆★☆ 次号予告 ★☆★
闘技場に少女達の夢とロマンが火花する!
新ジャンル・美少女ギャザコン(ギャザ根性)漫画、ついに登場!!「素タップNo.1」
近日公開(!?)