続・“公認”という文字の重み

 以前書いた「“公認”という文字の重み」の追記に関して、幾つかご指摘があったので改めて書いてみます。なおこの文章を雑文として公開しているのは、その内容が私個人の意志表示的な要素が強く、記事として相応しいかどうかに疑問があったからです。

 “公認”という言葉を辞書で調べると・・・

  1. 国家・官庁・公共団体などで認めること
  2. おおやけに認めること、表向きに許すこと
 ・・・という意味があるそうです。どうやら一般企業が自社のイベント等に“公認”という言葉を使うのは、2.の意味合いからそうしていると思われます。しかし本来“公認”という言葉には1.の意味の方が大きい気がします。実際英語では1.と2.は明らかに区別されています。あと「メーカー認可大会」と書くよりも「メーカー公認大会」と書いた方が、その大会に対する重みみたいな物が明らかに変わると思われます。

 ただ日本の Magic が“DCI公認大会”という用語を使う事には、これとは全く別の理由で問題があるのです。

 DCIは自らが発行しているドキュメントの中で、DCIが認めたポイント/ランキングを競うトーナメントの事を“ sanctioned tournament ”と表記しています。これは日本語に訳すると“(DCIが)認可した大会”という意味にしかなりません。DCIが自らの大会を“公認大会”と表記しているとすれば、その表現は“ authorizationed(あるいは authorized ) tournament ”になるはずです。しかし少なくともDCI汎用トーナメント・ルールの原文にはそういう表現は1箇所足りともありません。つまり“DCI公認大会”というのは、下手をすると日本国内だけで使われている用語である可能性が高いのです。少なくとも私が調べた限りでは、 sanctioned という英語に“公認”という訳を当てている英和辞書はありませんし、また逆に公認という日本語に“ sanctioned ”を当てている物もありませんでした。

 この部分は推測するしかないのですが、恐らくこれは「最初に翻訳した人間が間違えてそのままになった。」という事だと思います。というか、私に言わせると「意図的に間違えたのでは?」という気すらします。実際日本で行われてきたDCIが使用する用語の日本語化はあまり質が良いとは言えません。例えば日本では“レギュレーション”という用語が長い間使われてきました。しかしWoC/DCIはこれに関して一貫して“フォーマット”という用語を使ってきています。(最初から“フォーマット”だったかどうかまでは自信が無いですが、少なくともWoC/DCIが“フォーマット”を使い始めてから随分長い間、日本では引き続き“レギュレーション”が使われていました。)これに関しては少し前から日本でも“フォーマット”に統一されつつあるようですが。

 かなり昔の話なのですが、代理店は日本語版が存在しない絶版カードに勝手に日本語名を付けて雑誌に載せるという事をやっています。あと少し前に「代理店がジャパン・クラシックというフォーマットをDCIに無断で推進しようとしていた。」という話も出ています。私に言わせると「これって“一事が万事”なんじゃないの?」という事です。この事は Magic の世界で何の拘束力も持たない代理店が、自社から発信された用語やドキュメントを(日本人デュエリストに)格が高いオフィシャルな物だと思い込ませようとしていた意図を感じさせます。それはなぜか?。私個人は「自社出版物を売りたいから。」以外の理由は無いと考えていますが。

 ただしこれって昨今の“ら抜き言葉”みたいな物だとも言えます。永六輔氏がマスコミ等でいくら騒いでもら抜き言葉が一向に減らないのと同じで (^^; これだけ染みついてしまった物を私がいくら騒いだところで変わるとは思えません。ただ1つ忘れてはいけないのは「誰かが意図的に英語の正式なドキュメントを誤った訳で日本人デュエリストに読ませていた可能性がある。」という事です。過去の経緯を見れば明らかなように、我々は Magic で使われている用語1つ取っても「これは本当にWoC/DCIが言っている内容そのままなのだろうか?」という疑いを持って見るべきなのです。

 それと最近代理店の方でフロアルール等の正式な(=DCIが正式な物と認めた)日本語版が公開されています。ここに“公認トーナメント”という用語が採用されている以上、(極端な話それが日本語の文法から見て明らかに間違っていたとしても)我々はそれ以外の表現で“ sanctioned tournament ”を日本語表記する事はできません。ひょっとすると今まで馴染んできた“公認大会”すら今後は使わない方がいいかも知れないのです。用語というのはそういう物です。(この“用語の統一”の大切さは、社会人になって顧客にドキュメントを提出するといった経験を積むと分かってくると思います。)という事で、今後私が書くドキュメントでは基本的に“公認トーナメント”に統一しようかと思っています。

 私は、ここまで理解した上でなおかつ「日本の Magic が“公認大会”という言葉を使うのは問題ないのでは?」という持論を(説得力のある反証を付けて)表明して下さるのでしたら拝見します。しかし単に私の揚げ足を取ってからかうために裏付けの無い意見を出されるのでは、流石に「こいつアホちゃうか?」と呆れるしかありません。 (^^; そういう意見を書く方はやがて誰にも相手にされなくなるでしょう。それは私にしても同じです。流石にそういう無価値な意見がダメ出しに寄せられるようでは、私としては“ダメ出しの閉鎖”すら検討するしかありません。そんな愚痴やストレス発散に付き合うほど私は暇ではないですし、そんな戯言を毎日読まされるのでは私や他の利用者もたまった物ではないです。人には完璧を求めておいて自分達は適当な揚げ足取りで話に参加した気分になる。そんな人は他の利用者の迷惑にもなって邪魔なだけなのです。

● 補足( 2001.07.15 追記)

 この話題に関して掲示板で頂いた反響について書いておきます。

 まず“この時期にこの問題を取り上げた理由”について。実は私自身、この“公認問題”に気が付いたのはつい最近です(笑)。ですから気が付いたので即刻取り上げてみた、そう考えて頂ければ間違いないです。

 ただ私個人は“公認問題”を取り上げるにはちょうど良い時期だった、そういう印象も持っています。折しも日本人トーナメント・プレイヤーが“フロアルールを知らなかった”事で失格処分を受けました。その余波から日本国内でもルーリングに対する関心が高まる中、DCIJのサイトに“フロアルールの正式な日本語版”が公開されました。しかしその日本語版フロアルールにも“公認トーナメント”という表現は使われている。この事は我々に「日本語版フロアルールも頭から鵜呑みにしない方がいいかも。」という暗示を与えている気が私はしています。元々 Magic はカードテキストにしろルールにしろ英語で発信されたドキュメントが正式な物なのです。

 それとこれは掲示板にも頂いている意見なのですが、私が問題にしているのは“公認トーナメント”という用語を使っている事そのものではなく、その用語が決まった経緯です。実際“公認大会”という用語は日本国内で販売されている多くのTCGで使われていますし、その他色々な(企業が認定して開催される)イベントにも使われています。しかし少なくとも Magic に関して言うと、その語源は“WoC/DCIが定めた用語の誤訳”である可能性が高い。そしてこの他にも代理店は Magic 用語の誤訳や Magic 日本語版への誤植作り込みを繰り返している。これらを総合的に問題視しなければ日本の Magic は良くならないだろうし、その象徴的な事例としてこの“公認問題”は取り上げられても良いだろう。私はそう考えています。

 ひょっとすると他のTCGは「 Magic が“公認大会”という用語を使っているから自分達もそれに準じよう。」と考えたのかも知れません。我々デュエリストは Magic を“日本で遊ばれるTCGのリーダー格”あるいは“他のTCGにも真似されるべき成功事例”にしたいのではないですか?。多分日本で Magic を遊んでいるデュエリストの中で「所詮 Magic なんて、遊戯王はともかくアクエリアンエイジやモンスターコレクションよりもシェアが小さい格下の存在で良いんじゃない?。」なんて思っている人はほとんどいないと思います。だったらそれに見合う取り組みをすべきなんじゃないの?。私はそう言っているだけなのです。

  Magic は現在、遊んだり競技に参加するために必要なほぼすべての情報をインターネット上で無料にて取得できます。メーカーや競技組織がこれだけのサポートをしている事を、我々デュエリストは誇っていいはずなのです。ところがこれが“日本語”になった途端に有料になったり内容が不正確になったりする。これはどういう事なのでしょうか?。その辺をデュエリストにみっちり議論してもらって、可能であればWoC/DCIに要望をぶち上げて改善を求める。皆さんが理想とする“競技 Magic を中心とした Magic 普及”を実現するには、そういう活動を多くの人達が地道に積み重ねるしか道はないのです。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。