M:tG 基本セット“固定化”計画(仮題)

 最近福井の方で話題になっている、 M:tG の将来像に関する1提案です。

●  M:tG 1000枚化計画

 先日ダメ老師さんが東京に行かれた際、某会場で ぎゃざる にCGを提供して下さっている紫雨陽樹さんとお会いする機会があり、そこで M:tG に関する話題が出たのだそうです。そこで出たのが“ M:tG 1000枚化計画”という案でした。要するに過去に発行されたすべての M:tG のカードから1000枚程度をピックアップし、これを固定したセットとして発売し、この範囲で競技をしようという物です。

 実はこの話は DUELIST JAPAN Vol.10 の「“マジック”をネクスト・ステップに進めるために(著: Jamie Wakefield 氏)」にも登場する提案だったりします。この記事の中で Wakefield 氏は「300枚程度のカードをピックアップし、これをライフカウンターやガイドブックとセットで販売する。」事を提案しています。そのカードセットが M:tG の定番セットとしてそれこそ各家庭に普及すれば、皆がより気軽に M:tG を楽しめるだろう。そういう提案がなされているのです。

余談ですが、この Jamie Wakefield 氏の記事は最近私がこの手の記事を執筆する際の“バイブル”の1つになっている、そう言っても過言ではないと思います。

● 固定化のメリット

 この“カードセットの固定化”には、実に様々なメリットがあります。

 まず何と言っても“ M:tG が安く楽しめる”事です。例えば1000枚のカードセットの販売価格を現在のフレッシュパックの値段から単純計算すると、米国の値段で$217/日本の値段で¥34000程度になります。ただ実際には大量生産によってコストは大幅に下げられるはずなので、ライフカウンターやガイドブックを付けてもかなり安くなるはずです。これに4人分位のライフカウンター等をセットにしておけば、普通に Limited で M:tG を遊ぶ分にはほとんど困らないでしょう。

 そしてこのカードセットがDCI公認大会で現在の Standard のような位置付けになると、更に“競技人口の増加”と“そのレベルの向上”が期待できます。同じカードセットを何年も使い続ける訳ですから、普通に考えるとプレイヤーが M:tG に携わった年月が長ければ長いほど知識や経験の蓄積が生まれ、本当にレベルの高い競技が実現する事が期待できるのです。

 更に我々既存のデュエリストから見ると、このフォーマットによる M:tG が普及しても“新たにカードを買い直す必要がほとんど無い”のです。カードセットの内容(リスト)は当然公開される訳ですから、我々は押し入れに眠らせているストレージBOXからそのカードを見つけてくる(足りない分はトレードするか買う)事でそのセットを作れてしまうのです。つまり我々から見ると眠っていたカードの再利用でより多くの人達と M:tG が楽しめる訳で、こんなに良い話はありません。

● 固定化の問題点

 とは言っても、この固定化はそんなに簡単な話ではありません。

 少なくとも単純に「取りあえず現行 Standard のカードで固定セットを作ろう!」では、それこそ今現在トーナメントで猛威を振るっているデッキがこの先生涯 M:tG の世界で猛威を振るい続ける事になります。このカードセットには“この先何年にも渡って『最強のデッキ』が現れないだけのバランス取り”が必要不可欠なのです。 M:tG というのは本来“デッキ同士のじゃんけん”を楽しむTCGです。グーはチョキに勝ってパーに負ける、そこまで極端な訳ではないのですが、でもそれに近い物なのです。しかし最近は“チョキにもパーにも勝てるグー”の研究が進み、そしてそういうデッキが見つかると皆さんそれしか使わない。これでは本来 M:tG という遊びは成立しないのです。

まあ Limited のみを遊ぶのであればまだ被害も少ないのですが、このセットの範囲で構築デッキ戦をやろうという声は間違いなく上がると思いますので。

 また“この後発売されるエキスパンションとの兼ね合い”も難しいところです。現時点で発売されているカードの中からカードを固定化するという事は、イコール今後発売されるエキスパンションからは収録される可能性が無いという事になります。実際日本でも「もうこれ以上新しいカードを作る事には無理があるのでは?」という意見が出ていますが、そうは言っても新しいエキスパンションの発売は、やはり M:tG の業界全体の維持/活性化には必要不可欠なのです。(ただし私は個人的には「やめちゃってもいいのでは? < エキスパンション発売」という持論の持ち主なのですが。)

 まあこの他にも「誰が収録カードを決めるのか?」「そのカードセットに致命的な不具合(どうにもできない最強デッキが見つかった etc. )があった場合にどう対応するのか?」等々、考えなければいけない問題は山積みです。正直言うとこの企画の“産みの苦しみ”は相当な物があるでしょう。でもそういう労力を費やすだけの価値は絶対にあるだろう、それが私個人の印象です。

● 固定化に対する私案

 という事で、私の方でこの固定化に関する私案を考えてみました。

  1. WoC/DCIで固定化カードセットの“叩き台”を提案する。
  2. デュエリスト個人やグループでそのカードセットを仮に作ってもらい、テストプレーをしてもらった上での感想を募集する。
  3. その意見を踏まえて最終的に固定セットの内容を決定して発売する。
  4. 半年に1度その内容を見直しし、場合によっては数枚程度のカードの入れ替えを行う。
    (追加されたカードについては、何らかの形で拡張セットとして発売する。)
  5. 新しいカードセット(エキスパンション)のカードについては、そのカードが Standard からブロック落ちする時点で「このカードは是非固定セットに取り入れて欲しい。」という人気投票を行い、その結果を基にカードの追加/入れ替えを行う。

 ・・・とまあ、こんな感じでしょうか。こういったカードセットって、我々のような個人レベルで提案してもまず絶対に広まらないです(笑)。特に日本ではそうでしょう。ですからWoCやDCIが「こういう企画を考えています。公認大会のフォーマットとしての採用も予定していますので、皆様テストプレーにご協力を。」とやれば、かなり大きな反響があるでしょう。多分デュエリストの多くが最近の Standard 辺りの“常に何らかの最強デッキがある”という状況には飽き飽きしているはずです。そういう状況を自分の提案で打破できるとなれば、多分熱心に取り組んでくれる個人やグループは大勢現れると私は考えます。

 あと「このカードセットの規模をどの位にするか?」という問題ですが、個人的な印象で言うと日本組の言う1000枚よりも Wakefield 氏の言う300枚の方が現実的な気がします。やはりこういったカードセットを遊ぶ際には“収録カードをすべて把握している”事が理想なのですが、そうなると流石に1000枚という数は厳しいのです。

● 今回は“言うだけモード”です(笑)

 最近特に Standard というフォーマットに、やや“行き詰まり感”を感じるようになってきました。継続する事に莫大な投資を求められ、しかも実際に使われるカードは買ったカードの中のごく僅かな部分でしかない。流石にこういう遊びを何年も続けられる方は、0とは言いませんがかなり少ないはずなのです。

 今回の案は別に「 Standard に取って代わろう!」等という大それた話ではありません。これは Wakefield 氏も書いているように“ M:tG 人口増加(メジャー化)のための1提案”なのです。ただこういう形で M:tG を広める事で M:tG を遊ぶ人が劇的に増えれば、自然に Standard といった競技 M:tG の人口もそのレベルも向上するのです。また日本でも M:tG のイベントにスポンサーが付いたり、それこそ M:tG が毎月のように全国ニュースを賑わせるような盛り上がりを生み出す事も可能なのです。

 私が今回この記事を書こうと思い立ったのは、何よりも「日本にもこういう提案を考えている人間が複数いるんだ。」という事を知らしめたかったからです。だって日本人って特にルーリングや新製品の開発に関しては受け身に回っていて、あまり貢献できているとは思えないのです。こういう話を書くと「じゃあなぜこの記事は英文じゃないのか?」と言われそうですが、でも英文で書いたからって読んでもらえるとは限らないし、第一日本人である私がなぜ自分の意見を英文にして、わざわざ不正確な内容にして公開しないといけないのか?、と私は考えています。ちなみに言われるまでもなく、必要を感じたらWoC宛に英文でメールを送りますよ。(翻訳は他の方にお願いしていますが。 (^^;;; )実際今までもそうしてるし。

こういう話をするといつも思い出すのですが、昔某ニュース番組で湾岸戦争を取り上げた際、メインのニュースキャスターに「英語も分からない奴に正確な情報が掴めているはずがない。」と食ってかかった方がいました。しかしそのニュースキャスターの答えは「今この戦争は英語圏の人間とアラビア語圏の人間が戦っている。なぜ英語が分かるだけで100%正確な情報が掴めると思えるんだ?」でした。もしWoCが少しでも日本での M:tG 普及を志しているのであれば、WoCの方から日本語の情報を取り入れようという姿勢を示すべきだ、というのが私の持論です。

 あと私はこの手の提案をする際、いつもですと「そういうことなら一丁自分で考えてみるか!」と行動を起こす事があるのですが、今回の件に限っては個人で動く事はやめようと思っています。さっきも書きましたが、こういうフォーマットの提案を個人ベースでやったところで、過去に日本での成功例なんて無いんだもん(爆)。これに関しては多分HJが1企業として動いたレベルでも駄目で、それこそWoC/DCIが発起人となって世界的な動きにしないとその実現は到底望めないと思います。ただWoCってこういう事には既に気が付いていて、その動きの一環として STARTER2000 を発売したのかな?、という気が私はしているのですが。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。