Chaos Orb(AL-UL) とは Magic の初期に登場したアーティファクトで、その能力の凶悪さから(!?)現在は Type-I ですら(アンティカード以外で)禁止カードになっている数少ないカードの1つです。その能力ですが・・・
Chaos Orb
2
Artifact
1: Flip Chaos Orb onto the playing area from a height of at least one foot. If Chaos Orb turns completely over at least once during the flip, destroy all permanents it touches. Put Chaos Orb into its owner's graveyard.(2001.2.1時点の最新のORACLEより抜粋。)・・・となっています。本来ORACLEは日本語に訳すべき物ではないのですが、この能力のテキストをあえて日本語訳してみると・・・
1: Chaos Orb を1フィート(約30センチ)以上の高さから場に向かって弾く。投げられた Chaos Orb が空中で少なくとも1回転した場合、これと触れたすべてのパーマネントを破壊する。その後 Chaos Orb をオーナーの墓場に置く。 (あいせん個人による私訳)・・・となります。一般に Chaos Orb の起動コストは「(1)(T)」と言われているのですが、こちらで公認ジャッジの方などにお伺いしたところ「ORACLEに書かれている以上 (1) が正しい。」そうです。それと多くの人達が Chaos Orb を“投げる”物だと思われていると思うのですが、正式なルールでは“弾く”ようです。
あと“turn over”とはひっくり返るという意味なので、そのまま意味を取ると「カードの表裏が入れ替わるように360°ひっくり返らないといけない。」と解釈できます。ですから Chaos Orb をプレーする場合は、狙ったパーマネントにぶつけた Chaos Orb が最終的にはテーブルから落ちるように落とすのが正解かと思われます。
Chaos Orb に関しては「大きな公認大会でビリビリに破ってばら撒いた。」という話があり、これが公認大会で禁止された理由であるという話が一般的です。ただ、私が聞いている話では「 Chaos Orb 投げのプロフェッショナル(ブーメランのように飛ばして相手の場を一掃してしまう)が現れた。」事が禁止になった最大の理由だとも伺っています。
確かに Magic のルールには「大会中にデッキ内のカードを破ってはいけない。」とか書いてない訳ですが、だからと言って「破って撒けばいいじゃん。」って思い付くか、普通?。しかも Chaos Orb が全盛だった頃には色々な逸話があって、例えばデュエリストが相手が使う Chaos Orb を警戒してガラス板を持ち歩いた(相手に使われそうになったら場に被せてしまう)とか、コルクボードにピンでカードを打ち付けてデュエルしてたとか。だから昔の絶版カードの中には、時々ピンの穴が残ったカードがあったりするのですが。
では更に Chaos Orb に関する見識を深めるために、CRSを紐解いてみましょう。ただしCRSは特に最近は公式な物という位置付けでは見られないので、参考資料という事で読んでみる事にします。1.場のカードの置き方
CRSには「 Chaos Orb が場に出たらカードを並べ替える事ができない。」と書かれているのですが、多分これは可能ではないかと思われます。 Magic のゲーム中に場のカードを並び替える事は禁止されていない訳ですし、また Chaos Orb 自身に(場にある事で)それを禁止する能力もないですから。ただし Chaos Orb に触れるのを避けるために場のカードを重ねたり不必要に広げて並べる(=対戦相手から名前が見えない位遠くに置く)のは、 Chaos Orb 絡みのルールとは無関係に駄目なようです。2.破壊される物
これは“ Chaos Orb に触れたすべてのパーマネント”と書かれているだけで、この能力は対象を取っていません。あと昔のドキュメントに「破壊された物は再生できない。」と書かれた物があるのですが、これは多分間違いというか誤訳ですね。またカードスリーブはカードの一部なので、スリーブに入れてあるからと言って破壊を免れる訳ではありません。ただしパーマネントの上に目印代わりのおはじき等が乗っていて、それが邪魔をして Chaos Orb が触れなかったパーマネントは破壊を免れるようです。それ故CRSでは「パーマネントの上の目印等は Chaos Orb を落とす際には取り去っておくように。」と書かれています。あ、この“目印代わりのおはじき等”というのは、いわゆるカウンターとは別物です。
あとCRSには以前「静止した時点で触れていた物のみ破壊される。」という記述があったようなのですが、今は無くなっています。
3.対戦相手の妨害工作
では、対戦相手は Chaos Orb のプレー中に、例えば息をフ〜フ〜拭いたりして妨害できるのでしょうか?。答えは「No」です。少なくともCRSには「物理的な手段で干渉してはいけない。」と書かれています。ですから物理的な手段でない干渉、例えば念力で干渉する分には問題無しです。あ、そういえば「 Magic で超能力は合法。」というのは皆さんご存知ですよね?。例えば Mana Clash(DK/4E-5E) のコイントスで、空中のコインを超能力で操作して勝つのは何ら問題ないのです。まあ今は Standard に Mana Clash は無いですが、 Extended なら全試合1ターンキルで世界チャンピオンになる事も夢ではありません。
あと最近の解釈では「 Chaos Orb の能力が起動されてから、ルールで許される範囲でカードを並べ替える事はできる。」となっているはずです。ただこの記事の内容すべてに言える事なのですが、最終的なルーリングの判断はその大会のヘッドジャッジの裁量に任されていますから、ここに書かれている内容とは違う裁定が下される可能性は0ではありません。
さて、十分な予備知識を得たので(!?)実際に Chaos Orb を使ってみましょう。ただし、そのためにはあなたは2つの大きな試練を乗り越えなければ行けません。その1: Chaos Orb を入手しましょう。
まあもったいなければ代理カードで構わないのですが、本気で欲しくなったらご一報下さい。何とかしてみます。ただし一番安いアンリミの物でも最低¥5kは覚悟して下さい。いや、今だとそんな値段じゃ買えないかな?。その2: Chaos Orb が使える大会を開きましょう。
実はこっちの方が大問題だったりします。何しろ Chaos Orb は Type-I ですら禁止カードなので。まあ手っ取り早いのは「アンティカード以外は使用可!」といった変則フォーマットの大会を自分で開く事でしょう。あ、ベータとかアンリミのシールド戦を開いて自力で引き当てるという手もあります。ただ、今ベータとかアンリミのパックから Chaos Orb を引き当てるのは、はっきり言っちゃうと“負け”なのですが(核爆)。しかもこの後「破れ!」とか言い出す訳だし。以上の2つの難関をクリアしたら、さあいよいよ実践です!。
最初はオーソドックスに“上から落とす”パターンです。やはり自分で1フィート以上の長さの物差しを持参するのがマナーでしょう。あと本番前に何度か落下試験をして「どういう方向に落ちる傾向があるか?」を見ておくとベターです。
落とす際には必ずジャッジを呼んで、空中でちゃんと1回転回ったかどうかを見てもらうようにします。利き腕ではない方の手で Chaos Orb を持ち、破壊したいパーマネントに狙いを付け、1フィートギリギリの高さから指で弾いて落とす。簡単ですね。
ただし世の中そんなにうまく行く訳がないので、墓場からアーティファクトを回収する手段を用意しておき、繰り返し使ってあげると対戦相手に喜ばれるでしょう。
さて、単に落とすのでは満足できなくなったら、今度はより効率の良いパーマネント破壊を目指してブーメラン戦法を覚えましょう。原理は簡単。対戦相手の場に横から滑り込むように Chaos Orb を流し込み、相手のパーマネントを根こそぎ一掃しちゃおうという事です。 Chaos Orb は落とした時に1回転しなければいけないのですが、要するにブーメランのように飛ばしてテーブルから落とせば、ほぼ間違いなく1回転するのです。
ただ注意しなければいけない事があります。 Chaos Orb は1フィート以上の高さから落とさなければいけません。これは横から投げる場合でも同じです。つまり“斜め上から投げ下ろす”形になるのです。しかも Chaos Orb は弾かないといけない訳ですから、意外と難しいのです。
流石にこれはぶっつけ本番でうまく行く物ではありません。あと投げた Chaos Orb がテーブルの側面にぶつかってマークドに・・・という悲惨な事例も過去にはあったようです。本番前に余った土地等を使って練習しておきましょう。ほら、これで余剰カードの有効活用が(なんか違う)。
さあ、いよいよ Chaos Orb 使いに取って最大の至福の時(!?)“ちぎって撒く”をやってみましょう。Chaos Orb を使う場合、デッキはスリーブに入れる事をお勧めします。スリーブはカードの一部になるので、 Chaos Orb が見かけ上大きくなるのです。もちろん普通に落とす際にも有利なのですが、 Chaos Orb をちぎって撒く際にはスリーブごとちぎる事になるので、紙吹雪(!?)の量が増えるのです。ただし、スリーブごと手でちぎるのは流石に重労働なので、あらかじめハサミを用意しておく事をお勧めします。
Chaos Orb を起動したらジャッジを呼びます。そしてまずジャッジにこう告げます。
「これから僕のデッキのカードが破損するので、代理カードの発行をお願いします。あ、スリーブは同じ物を用意してあるのでご心配なく。」こうしておかないとデッキ内のカードに過不足が生じてしまい、場合によっては失格になるのです。
カードを裁断し終えたら、やはり1フィート以上の高さから(多分)対戦相手の場をめがけて撒きます。利き腕でない方の手のひらに Chaos Orb の破片を集め、反対の手の指で弾くように撒きます。この時対戦相手が息を吹きかけて破片を自分の場に撒こうとしていないかどうか、ちゃんと監視しましょう。
処理が終わったら、ジャッジに代理カードをもらって(スリーブに入れて)墓場に置きます。更に卓上掃除機を出してきてスマートに後片づけ。ここまでやってこそ“真の Chaos Orb 使い”です。
さて、では Chaos Orb を使われた対戦相手は、自分のパーマネントの上に紙吹雪を撒かれるのをただ手をこまねいて見ているだけなのでしょうか?。そんな事はありません。Magic の一般的なルールでは「カードを重ねてはいけない。」「カードを対戦相手から見えないような位置に置いてはいけない。」といった事が決まっているようです。つまり逆に言うと、この条件を満たす Chaos Orb 対策なら取っても構わないのです。それでは、実際過去に実行されたアンチ Chaos Orb 対策を見てみましょう。
その1:コルクボードにピンで打ち付ける
コルクボードを用意して、カードを場に出す度にピンで打ち付けます。で、要するにそのコルクボードを90°立ててデュエルをするのです。こうすれば万が一 Chaos Orb を起動されても被害を最小限に食い止める事ができます。なお、アメリカ人はこれをカードスリーブ無しでやります。いや「ピンで打ち付けられてカードに穴が空くのとどっちが良いんだ?」という話は忘れて下さい。昔のアメリカンな人達はそんな事気にしないんだから。実際“穴の空いた Black Lotus(AL-UL) ”なんて物が世の中には出回っているらしいし。
その2:アクリルボードを被せちゃう
要するに“対戦相手からカードが見える”&“カードスリーブとは認定されない”方法で場のカードを保護すればいいのです。そこで、場を覆ってしまうような大きなアクリルボードを持ち歩き、対戦相手が Chaos Orb を使ってきたら「ちょっと待っておくんなまし。」と言って場に被せちゃうのです。昔からカード資産が多い濃ゆいデュエリストの事を“ミスター・スーツケース”等と呼びますが、要するに昔のデュエリストはデュエルの際に必要となる荷物が多く、そのためこういう呼ばれ方をした物と思われます。(あ、嘘です、真に受けないで下さい。 (^^;;; でも実際アクリルボードを持ち歩くデュエリストはいたらしいけど。)
さて、実際に Chaos Orb が大会に投入された場合、多分最も大変な思いをするのはジャッジだと思います。ジャッジは Chaos Orb の能力が起動される度に呼ばれ、空中の Chaos Orb がちゃんと1回転したかとか、飛行中の Chaos Orb がどのパーマネントに接触したかといった確認、そしてカードがマークドになった場合の代理カードの発行と忙しい業務が待っています。
しかもそれが Chaos Orb を細かくして撒いた場合は更に複雑で、すべての破片が1回転以上回ったかを見極め、更に破片が1つ残らず片づいたかどうかを細かく確認しなければいけません。場に破片が残っていると、その次に撒かれた Chaos Orb の物と区別が付かないからです。
ですから自分で Chaos Orb を使うための大会を開いた場合は、ジャッジは他の人に(騙して)やらせるのが正解です。
いやあ、この手のカードがあると話題には事欠かないのでよい感じです。で、この記事はシリーズ物です。大体想像が付くかと思うのですが、今のところ2回目が Coalition Victory(IN) で3回目が Goblin Game(PL) の予定です。(ただこの他に Goblin Bomb(WE) とか Ashnod's Coupon(UG) 等のリクエストもあります。)まあこれ以外に何かリクエストがあれば下さい。 m(__)m