方便品
(ほうべんぼん
) 関連語句 開三顕一。開権顕実。十如是。二乗作仏。 『法華経』方便品第二のこと。『正法華経』巻1・善権品第二にあたる。 迹門正宗分の中核であると共に、本門正宗分の寿量品と相対して、『法華経』の二大中心をなす教義的にも極めて重要な一章である。 まず釈尊は無量義処三昧より出定して、舎利弗に諸仏の智恵は甚深にして難解難入と仏智を称賛し、その仏智の内容としては諸法の実相である如是相・性・体・力・作・因・縁・果・報・本末究竟等の十如是を示して、それを仏のみが究め尽くす義で二乗の及ばざるところと断じた。これを聞いた舎利弗等はかつて釈尊は声聞・縁覚・菩薩の三乗は皆同一の解脱を得ると説いたにも関わらず、ただ今の仏智は二乗の理解不能との言は領解できないと深い疑惑を懐いた。 そこで舎利弗はその疑惑を晴らすために釈尊に真意を説いてほしいと三度懇願したが、三度制止された。この三止三請の儀式の後に釈尊がまさに出世の本懐を明かさんとした時に、五千の増上慢の人々が席を立って退出した。 ここにおいて、釈尊はこれまでの四十余年の三乗の教えは一乗真実の法に導き入れんがための方便の教えであると宣言した。諸仏が世に出現するのは一切衆生を仏の知見に開・示・悟・入せしめる一大事因縁のためであり、衆生が修行すべきはこの一仏乗の教法のみである。はじめに三乗方便の教えを説いて後に一乗真実の法を説示することは三世十方諸仏の説法の儀式であると述べて、開権顕実・開三顕一の義を明かしている。そして、最後に衆生が種々の福徳を修して仏道を成ずることを説き、特に小善成仏が強調されている。 このように、本品の主要テーマは開三顕一の法にあり、三乗が一仏乗に開会されることにより二乗作仏が成立する。また、仏智の内容として示される十如実相は十界互具と共に一念三千義を構成し、最終的には宗祖によって末法衆生成仏の原理へと昇華されていく。『南条兵衛七郎殿御書』〔13645〕などに見える。 |