道祖神守護事

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道祖神守護事の概要

【建治二年十二月十三日、聖寿、真筆−完存】 
鵞目五貫文慥に送り給ひ候ひ了ぬ。
且つ知食すが如く、此の所は里中を離れたる深山なり。衣食乏少の間、読経の声続き難く、談義の勤め廃しつべし。
此の託宣は十羅刹の御計にて檀那の功を致さしむるか。
止観の第八に云く「帝釈堂の小鬼敬ひ避くるが如し。道場の神大なれば妄りに侵■すること無し。又城の主剛ければ守る者も強し。城の主■れば守る者忙る。
心は是れ身の主なり。同名同生の天是れ能く人を守護す。心固ければ則ち強し。身の神尚爾なり。況や道場の神をや」。
弘決の第八に云く「常に人を護ると雖も、必ず心の固きに仮て神の守り則ち強し」。
又云く「身の両肩の神尚常に人を護る。況や道場の神をや」云云。
人所生の時より二神守護す。所謂(いわゆる)同生天・同名天是を倶生神と云ふ。華厳経の文なり。
文句の四に云く「賊南無仏と称して尚天頭を得たり。況や賢者称せば十方の尊神敢て当らざらんや。但精進せよ、懈怠すること勿れ」等云云。
釈の意は、月氏天を崇めて仏を用ひざる国あり。而るに寺を造り第六天の魔王を主とす。頭は金を以てす。大賊年来之を盗まんとして得ず。有時仏前に詣で物を盗て法を聴く。
仏説て云く、南無とは驚覚の義なり。盗人之を聞て、南無仏と称して天頭を得たり。之を糾明する処、盗人上の如く之を申す。一国皆天を捨てて仏に帰せり云云。
彼を以て之を推するに、設ひ科有る者も三宝を信ぜば大難を脱れんか。
而るに今示し給へる託宣の状は兼て之を知る。之を案ずるに、難を却て福の来る先兆ならんのみ。
妙法蓮華経の妙の一字は、竜樹菩薩(りゅうじゅぼさつ)の大論に釈して云く「能く毒を変じて薬と為す」云云。
天台大師の云く「今経に記を得る、即ち是れ毒を変じて薬と為すなり」云云。
災来るとも変じて幸と為らん。何に況や十羅刹之を兼るをや。薪火を熾にし、風求羅を益すとは是なり。
言は紙上に尽し難し。心を以て之を量れ。恐恐謹言。
十二月十三日  日蓮花押 
道場神守護事御返事 

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