『日意目録』に「一 御筆双紙之分 守護国家論御草案 内」とあり、『日乾目録』には「一 守護国家論 十八紙(此外表紙一紙外題有之磨滅、表紙ノ裏ニ一行半文字有之)」とある
。 明治八年の大火で焼失。なお、千葉県大正寺に三行断簡がある由である(『定本』4巻2957頁)。但し当該部分は確かに「守護国家論」にあるが、『往生要集』の引文部分であり、必ずしも「守護国家論」の一部とは断定できない。 『日祐目録』(写本の部)にその名が見られ、日全の『法華問答正義抄』第十三・第十六・第十八に引文される。/ 冒頭「中昔邪智の上人有って末代の愚人の為に一切の宗義を破して選択集一巻を造る。名を鸞綽導の三師に仮て一代を二門に分ち、 実経を録して権教に入れ、法華真言の直道を閉じて浄土三部の隘路を開く、…予此事を歎く間一巻の書を造て選択集の謗法の縁起を顕し、名て守護国家論と号す。」と述べるように、法然浄土教の体系的破折を目的として著されている。 本書は大文七章より成る。 大文第一は宗教の五綱の内の「教」に焦点をあて、一代説法の中で『法華経』が最勝であり、浄土教は権経であることを明かしている。なお、「法華経・涅槃経・大日経」を了義経とするのは 番号10「一代聖教大意」と同様である。 大文第二は「時」に焦点をあて、末法濁悪の世を救う真実久住の経は『法華経』であり、浄土三部経は久住の経ではないとする。 大文第三は「機」に焦点をあて、浄土教は法華真言を聖道門難行道として末代悪機の衆生には不相応な経であり、浄土三部経こそ浄土門易行道であり相応の経であるというを破し、『法華経』こそ末代悪機相応の経であるとしている。 大文第四は弘教の方軌が述べられ、先ず国主に法を付嘱し、国主は威力を以って四衆に及ぼし謗法を退治する、所謂「涅槃経の折伏」が示される。 大文第五は依法不依人・爾前得道の有無・一念三千論が述べられる。 大文第六は「法華涅槃に依る行者の用心を明かす」とて、「国」及び修行論が述べられる。 大文第七は諸宗の破折で、華厳宗・法相宗・浄土宗・禅宗について、問答を想定しその対応について述べられている。 本書は 番号24「立正安国論」の理論的裏付けというべき論文であり、ことに大文第四に示された国主の「涅槃経の折伏」は、「立正安国論」幕府上申の理論的根拠となるものであって、その確信乃至期待によって具体的行動となったものであろう。 |