当世念仏者無間地獄事の概要

『日朝本目録』『平賀本目録』『刊本録内』等所収。
 題号が示すように浄土教破折の書である。本書はおよそ三部で構成される。第一に法然の『選択集』を十六の科段に沿って紹介しつつ破折し、その謗法の現証として当世の念仏者及び檀越の 臨終の相が悪く、それに対し法華真言の行者は臨終正念であることが示されている。第二に念仏者が、浄土三部経・竜樹の『十住毘婆娑論』・曇鸞道綽善導の釈等により、法然が主張する諸経諸仏を捨閉閣抛せよとの主張は正当であると述べる。そして第三に それに対し、竜樹の『十住毘婆娑論』には『法華経』を難行道として嫌う文はなく、浄土三師には難行・雑行・聖道門の中に『法華経』を入れる意は窺えるものの法然の如き放言はないことが示され、日本国は本来霊山八年の如く一向法華経純円の機であるの に、念仏者が権教の国とするその失は甚だ大きいといわなければならぬと警告されている。なお、文中「法華・涅槃・大日経の極大乗経」とあり、「守護国家論」「唱法華題目抄」と同じく、台密の五経教判的であることが窺える。袖書によれば、安房花房蓮華寺 において、浄円房に対して記されたものである。 宗祖清澄寺退出時同様、法然浄土教がかの地に根付いていたことを窺わせる。