真言天台勝劣事の概要

『日祐目録』(写本の部)に「真言天台勝劣事」とあるは本書を指すか。『日朝本目録』『平賀本目録』『刊本録内』等所収。
 本書は真言宗破折の書である。冒頭『法華経』は『大日経』に対し七重八重勝れることが示される。 第一に『法師品』の文により、『法華経』は一切経の中最勝であること、第二に『無量義経』の文により、『無量義経』は『法華経』を除くすべての経々に勝ること、第三に『涅槃経』の文により、『涅槃経』は『法華経』・『無量義経』 を除き他の経々より勝ること、第四に『華厳経』の文により、『涅槃経』の次に勝れること、第五に『般若経』は『蘇悉地経』の文により、『華厳経』より劣り『蘇悉地経』より勝れること、第六に『蘇悉地経』の文により、『般若経』に 劣り『大日経』に勝れることが示され、以上『法華経』に対すれば『大日経』は七重劣り、法華本門からすれば八重の劣であるとしている。本書が「真言天台勝劣事」と称される所以である。次に弘法の『十住心論』の「法華三重劣」説に対 しては、安然の『教時義』に見られる『十住心論』への五箇の破折を紹介している。また真言師の@大日如来は無始無終の法身であることA『大日経』は法身説法であることB真言宗には印真言があることC真言経は事理倶密であることD真 言経は釈尊一代五時以外の経であること等の主張に対し、@大日法身は『法華経』の報身法身に及ばざることA大日の法身説法は『法華経』の他受用身にあたることB所詮印相・尊形は権経の所談にして実経の所談に非ざることC『法華経』 は真言に分絶えたる開権顕実の理と久遠実成の事を備えていることD真言経は方等部であること、等一々に破折している。