真蹟十一紙完(但し、第八紙〜十一紙は裏に記される)、千葉県中山法華経寺蔵。『信伝本』静岡県北山本門寺蔵。『日常目録』『日祐目録』『日朝本目録』『平賀本目録』『刊本録内』等所収。 冒頭真言宗・華厳宗・法相宗 ・三論宗・禅宗・浄土宗が簡略に破折され、それら謗法の諸宗を破折する日蓮は日本国の人々にとって主師親であることが示される。また『涅槃経』の文に依れば三逆の当世日本国は十方の土、日蓮は爪上の土であるとし、道隆が一党・良観が一党 ・聖一が一党と三類の徒は経文の如く現前し、若し法華経の行者たる日蓮が存在しなければ釈尊等十方の諸仏の未来記は虚妄となるであろうと記すところ「開目抄」と同じである。最後に法華経の行者が何故大難に値うのかとの設問が設けられ、 @あまりの大悪に諸天善神の力では及ばざる故A先業の未だ尽きざる故、としながらも、心の固きにより竜ノ口の虎口を逃れたのであると述べられている。本書は「日本法然誤之、以天台真言等入雑行」とあり、「開目抄」と同じく未だ天台宗の立場 であることがわかる。しかし、諸天善神の力が及ばぬと述べる段では、「但非地涌千界大菩薩・釈迦・多宝・諸仏之加護者難叶歟。」と述べて、法華経の行者守護という意味ではあるが、地涌千界の末法登場を思わせる記述が見られることは注目す べきである。 |