食物三徳御書
食物三徳御書の概要 【弘安元年、南条時光、聖寿五十七歳、真筆断存】 『たからとす。山の中には塩を』(以上字定本欠)たからとす。魚は水ををやとし、鳥は木を家とす。人は食をたからとす。 かるがゆへに大国の王は民ををや(親)とし、民は食を天とすとかかれたり。 食には三の徳あり。一には命をつぎ、二にはいろ(色)をまし、三には力をそう。 人に物をほどこせば我が身のたすけとなる。譬へば、人のために火をともせば、我がまへあきらかなるがごとし。 悪をつくるものをやしなへば、命をますゆへに気ながし。色をますゆへに眼にひかり(光)あり。力をますゆへに、あし(足)はやく、て(手)きく。 かるがゆへに食をあたへたる人、かへりていろもなく、気もゆわく、力もなきほうをうるなり。 一切経と申すは紙の上に文字をのせたり。譬へば虚空に星月のつらなり、大地に草木の生ぜるがごとし。 この文字は釈迦如来の気にも候なり。気と申すは生気なり。この生気に二あり。一には九界。 |