上野殿母尼御前御書
上野殿母尼御前御書の概要 【文永七年十二月二十二日、富木常忍母尼、聖寿四十九歳、真筆−完存】 母尼ごぜんにはことに法華経の御信心のふかくましまし候なる事、悦び候と申させ給ひ候へ。 止観第五の事。正月一日辰の時此れをよみはじめ候。明年は世間怱怱なるべきよし皆人申すあひだ、一向後生のために十五日まで止観を談ぜんとし候が、文あまた候はず候。御計らい候べきか。 白米一斗御志申しつくしがたう候。鎌倉は世間かつして候。僧はあまたをはします。過去の餓鬼道の苦をばつぐ(償)のわせ候ひぬるか。 法門の事。日本国に人ごとに信ぜさせんと願して候ひしが、願や成熟せんとし候らん。 当時は蒙古の勘文によりて世間やわらぎて候なり。子細ありぬと見へ候。本より信じたる人人はことに悦ぶげに候か。恐恐。 十二月二十二日 日蓮花押 |