継命新聞二月十五日号8面より
「日蓮聖人の世界展」に高まる評価
識者の声
 
 正信会の立宗七百五十年記念事業として全国に巡回展覧されている「日蓮聖人の世界展」には、内外よりより多くの方々が観覧。日蓮聖人の時代と実像、門下の法義伝承の姿、そして御書システムの高い機能にふれて感動が広がっている。
 なかでも、歴史や思想・文化に関心のある人々や研究者から、充実した企画と豊富な内容、公平公正な展覧姿勢に高い評価が寄せられている。千葉大学・佐藤博信教授が『歴史評価』(2月号)にその見学記を寄稿されたので紹介したい。
 
 歴史研究者の専門書『歴史評論』(2月号)の「文化の窓」欄に「『図録日蓮聖人の世界』をめぐって――「日蓮聖人の世界展」見聞記――と題した評論がある。ここでは、はじめに昨年のNHK大河ドラマ北条時宗の放映に併せて鎌倉時代に関する歴史書物が種々出版されたことをまず紹介。
 その上で立宗七百五十年を迎える日蓮宗関係の書として『図録日蓮聖人の世界』『日蓮聖人の御生涯』『日蓮が道』の三書が取り上げられている。
 この三冊を挙げて史実伝説の狭間で生き続ける大聖人を、門下が今どのように捉えようとしているのかという問題にも視点が向けられているが、ここでは筆者が見聞された「日蓮聖人の世界展」に関する評論を抽出して紹介する。
 
 【五部構成の企画】
 はじめに『1鎌倉幕府と蒙古襲来、2日蓮聖人の世界、3御書を心肝に染め〜その護持と伝承、4生きている御書の心〜日蓮信仰者の群像、5これからの御書〜データベース型・御書システム、の五部構成となっている』と説明。
 
 【博物館展示を想起】
 その特徴は、『予想されるような日蓮遺文(御書)・聖跡(寺院)のみの紹介ではなく、新出の御真蹟三幅(断片)、関東御成敗式目(天文五年写本)六条八幡宮造営注文、安房妙本寺所蔵日本図、文房四宝、録内御書、鎌倉時代の生活用具、日蓮佐渡一谷謫居復元など、さまざまな歴史関係の資料と法華経に生きた著名な人物の書籍を多数掲載展示している点である。また生活用具、謫居復元、題目板碑などの文書以外のものや資料に着目し、見事な復元や展示となっている点は、一見博物館展示を想起させるにたりるもの』と感想をのべている。
 
 【学問的な刺激】
 ついで各コーナーに置かれた解説シート(たとえば「御所を写す僧達」「宮城県の題目板碑と日興門流」など)について『近年の歴史研究の成果を前提になされており、学問批判に耐えうるものとなっている』と評価している。
 ことに安房妙本寺所蔵の日本図は『このたび初めて世に紹介され、これを機に関係する研究者間で種々注目されるに至った古地図である。期せずして学問的な刺激を与えた貴重な一例である』としている。
 
 【御書システムの高い機能性】
 さらに教授が注目されたのは『日蓮遺文のデータ・ベース化を目指した「御書システム」の編集と実演である』とし、『さまざまな検索によって瞬時にして映像化される御書に、新しい時代の到来を見たのも、私だけではあるまいIT時代にふさわしいデジタル版の御書の編集と喧伝されるとおりである。四月の完成が待たれるが、これによって、御書の真偽判定の次元だけでなく、文献史学、古典文学、国語学などの諸分野の交流が一段と進み、御書理解=日蓮理解が一気に進むのではないかと大いに期待される』と極めて高い評価をしている。
 また、『「御書システム」の完成が宗祖日蓮に帰れというメッセージのように聞こえるのも不思議である』という。
 
 【本来の修学の成果】
 これらが『「宗旨・修学の研鑽」の具体的な成果とすれば、それは従来の宗門とか門流とかいう狭い枠から一歩歩み出ることによって新しいというよりも本来備わっていた宗門としての宗学の側面が全面的に打ち出された結果ではないかと、宗門外の人間には不遜にも思われる・その点で、とかく閉鎖的して排他的と言われた宗教界(とくに日蓮正宗)の世界にあっても、他分野・他門流との人的・知的(書籍)交流を通じた新たな展開が予見される』としている。
 
 【まさに果報】
 最後に『もちろん、この企画展自体の準備と運営は、信徒の方々の献身的奉仕で行われた。その意味では、僧俗一体の成果であった。それこそ、本来のあるべき姿と確信した次第である。東京展には、昨年十月二十四日に急逝された石井進氏(東京大名誉教授・前国立歴史民族博物館館長)も、九月十六日に見学され、その感激を感歎を持って関係者に述べられたと聞く。私も東京展に二度足を運んだが、その都度、従来にない充足感を味わう事が出来た。まさに果報であった』と評論を結んでいる。

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