富士宗学要集第一巻
緒 言
一、本宗は大部の富士宗学全集中の要篇及びその他の古文書新文献の中より編集したものであるから時代に依り学匠に依り自然に醇雑相交わり正傍反の三編に大別すべきも、本集にはなるべく反系の書を省いた。
一、正系必ずしも完美でなく傍系亦大に依用すべきものもある。殊に史伝に於ては著しく其の傾向を見るが故に、薫蕕相雑なる書類では栴檀を採るが為に且らく伊蘭の林に入らねばならぬ、但し成るべく一々に天註を加えて幼学を迷はさぬようの指針に供しておいた。一、各文中に伝写の誤りと認むるものは此れを訂正するに吝ならざれど、正本に就いては縦容に附した所もある。 一、原本には句読点返り或は有り或は無し手爾波も亦完からざるもある。今は。、を附して句逗を明かにして、又漢文体のものは総て延べ書きに直した。 一、毎冊二三の正本写真を附して記念に供したが、正本存在せぬ分には最古の写本を用いた、又終編には各実物の写真を附することとする。 一、原本には多くの内容目録が巻首に明記して無いから索引に委する事にした。 一、引用の史料は初学に難解のものが多い故一章項毎に解説を加え、又間々訳文略註を施し最終篇には総索引を附して聊か啓蒙に供したが、編者は兼ねて富士宗学辞典の編修の企てありて良師を得ざる人の便に供しようと思うておる。 一、編入各書の解題と其の編者の列伝とは終編に索引と共に合録しよう。 一、大部の富士宗学全集は編者が半生の蒐集の中より麁雑を捨てて精正を採りたるもので、二三の篤志に依り三十数年を経て漸く完成に近づいておるが、量質共に門外不出で一般の繙読に能はず、今其の不便を補う為の要集出版であるが、底意は全く令法久住に外ならぬ。事に史料類聚以下には稍全集に漏れた断簡零墨もあるが其の意は同一である。諸賢此を諒せば又法宝保存の一助たらんか。 昭和三十年七月一日 編者日享耄沙弥病床に横たわりて富士大石が原の雪山文庫にて識るす。 |