富士宗学要集第〇巻

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十五条問

四月廿八日富士門流の優婆塞天寂子象門欽んで書を大英傑先生の台下に上ぐ、蓋し聞く事・至当に帰する則は七歳の沙弥も仰いで均提を指南とすべし、言・聖説に洽ふ則は百歳の闍梨も遵って旧轍を改むるに憚ること勿れと、理固より然り、昔は吉蔵・玉泉に偃伏して肉橋の給仕を致し南京の六権・伝教に屈従して面縛の辱を忍ぶ、古今法を重んずるの人僉しからざるはなし、苟も株を守って大法を議し執を以って道を論せば又何の詮かあらん、啻た其の道法に益なきのみにあらず、抑も且っ阿鼻の獄底に沈淪して永く免脱の期あることなけん、然り而して吾が聖祖・世に興出して未曾有の法を日域界に飄揚してより以来、今に至るまで凡そ六百載・一味の祖道・派五七を別ち雑毒の異計・群生を塗炭にす、●に象門・生を謗家に禀け幸に蓮祖の法化に値遇し・長じて富士門流に入りて親く淳々の教を享け・漸く甘露の妙味を甜むといへども・天資頑駭にして識習昏柔なり、輙く幽邃寥廓たる祖文の奥旨を洞通することあたはず・茫々乎として多岐の門流何れが是れ聖祖の本懐なることを知らず、而るに門々に方円の規矩を底秘し・家々に最殿の妙義を誇厳す、●刀相ひ似て魚魯交参す虎班は見易く法班は見難し、今若し真正の門に入らずんば長夜に冥迷し三途に流浪せん、吁々無常日々に●き隙駒邁くこと疾し、徒らに時光を挫過して獲ることなくんば万劫亦いかんとも・することなし、是れ其の象門が耿々として席を安んじ寝られざるゆへんなり、伝へ聞く、先生・学徳泰山北斗の如く信心人を移す且つ身を軽んじ法を重んじ克く大法を護ると・豈に門が尋る其の人に非ずや、是れを以て今祖文の最も解し難き所の要文綱格五七条を撮録して台下に呈して明決を請はんと欲す、毫も名利の為にあらず、夫れ上求下化は入路の本志・去浅就深は一家の恒談・然れば則ち啻だひとり門が為のみならず、抑も亦字内群品の疑道を闢ひて覚路に進趣せしむる者か、若し大悲無くんば復た仏を得ること無しとは大丈論の確説・千人を化せんより一人の悪見を破れとは優婆塞戒経の聖訓なり、今や台下の慈悔の至当確一にして感ずること有るに至っては、旛然として旧習を一洗して則ち嘉祥の轍を履み六宗の跡を追ふべきなり、幸に鉛槧を労せば亦万幸ならん、象門恐懼頓首。
一、本門本尊の事
二、本門戒壇の事
三、本門事行の事
四、当家五箇宗教の事
五、当家血脈の事
六、当家主師親三徳の事
七、当家三衣の事
八、一部読不読の事
九、文底秘処の事
十、未発迹顕本(開目抄)の事
十一、種熟脱の事
十二、我内証寿量品(本尊抄)の事
十三、不識一念三千者(本尊抄)の事
十四、殆隔竹膜(本尊抄)の事
十五、第三法門(禀権抄)の事
内外の聖録愚意に発明し難き儀多端に候と●も、静に三省九思仕り候得ば右件の拾五条に過ぎず候、是れはこれ我が輩終焉の大事、須臾も緩怠仕り候時は大に成仏の要務を妨け申すべきの間、希くば一時の世務を閣いて貴論成し下され候得ば有り難く存じ奉る可く候。
編者曰く雪山文庫蔵本に依る、首より十五箇の問目までは写主を知らず、内外の聖録等の四行は象門の自筆なり、但し本書何人に呈せしや又其の復書を見ざれども、文意より之れを推せば高名の宗学者なるが如し。

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