第11集 カメラ騒動





   第3章 地境

   地境

曽祖父が取り決めしたる地境に平成の吾右往左往よ

時経れば田圃いつしか住宅地記憶頼りは境にならず

業者にて擁壁造る気があれど肝心要の境判らず

ツルハシで何はともあれ行動と境を掘れば敷石がでる  

線引けば一直線の境あり世の中全て案ずることなし

地境は古今東西もめるもと一寸違えば合意がとれぬ

   下屋修理

別宅の親父囲いし古き下屋年月を経て垂木が朽ちる

雨どいを支える金具が付けられぬ垂木腐って釘打ち込めず

波板と垂木数本買い求めその日のうちににわか修理よ

始まれば小雨降っても止められぬ屋根無き下屋では中身が濡れる

夕暮れの小雨の中の作業では注意すれどもミスを連発

仕上がればミスはあれども満足よ一度直せば10年はもつ 

   秋終えて

秋終えて一息ついて親介護好まざるとも時は流れて

突然の母の骨折厳かり親父の介護もわが身にかかる

10月に2台も換えた冬タイヤ我が家色々事情がありて

事情あり外に出られぬみかん君出られぬ間に室内に慣れ

手落ちなく出来る仕事は二つまで親の介護と自治会業務

   東京へ

朝一で東京向かうと妻に告げ電子ピアノを車に積んで

東名か中央道で東京へ何処を通れど渋滞が待つ

お土産は4人で囲む居酒屋の娘ら二人の元気な姿

朝起きて搬入ピアノを組み立てる弁護士二人手伝いさせて

リンゴ売る晩秋長野のパーキング傷物なれど50円也

東京を往復したる古きレジ千キロ走れば本領発揮 

アル君と同じ経費のレジ君よ軽油価格の値下がり続き

何あれどわが身大事の我が夫婦周り気にせずわが道を行く

   初冬の短歌

使い込み下地露出の夏タイヤ雪まだなれど冬用に換え

晩秋の福井の天気荒れ模様休みなれども畑に入れず

雨の日も広き農舎でタイヤ換えラジオ流して遊び気分で

骨折の母が動けず一大事家事に通院わが手にかかる

自治会の会計事務の忙しき決算めがけて手間が集中

キャンバスの描き途中の白山は初冬なれども未だ紅葉

国産の10年選手の古ばかりわが所有車の数はあるけど

地境のブロック工事が延び延びよ相手と天気が自由にならず

ガーガーと床這い回る掃除機に迷惑顔で猫逃げ回る

定年後二年目なれど忙しきキャンパーあれど旅に出られず

   今年の家族短歌

写真では米寿祝いのちゃんちゃんこ車や絵画はいまだ現役  

着替え中思いもかけぬ骨折で一ヵ月ほど介護状態      

退職で畑や田圃に奮闘も時代の流れで近所へ委託      

朝夕の家事に頼れる味方あり床這い回る掃除機「ルンバ」

聡一朗来年からはランドセルこんな言葉に満面の笑み

   地境工事

話し合い付けどすでに十二月仕事になるか地境工事

ユンボーで境を掘れば石ばかり崩れはあれど元は石垣

唯一の晴れ間めがけて積み上げる 雨の日続くブロック工事

一直線此処しかないというライン昔引ければ諍い起きず

余りにも強き力のブロックが微妙な地面を二つに分ける

排水をついでに通す妙案で農舎の雨を水路へ流す

   年賀会

予想外地元の年賀に市長来る迎えるほうも市議会議長

年明けて一睡出来ぬ市長さん無理せぬようにと心で祈る

会長の卓を占めたる知り合いは還暦過ぎた同級ばかり

自治会の連合会長誰がするこの人以外に誰がいるのか

千円の会費で賄う年賀会缶のビールに寿司の弁当

   自治会仕事

年明けて公的行事が目白押し年始休暇が休みにならず

会館の古いコピー機動かして会長自ら総会資料

一月の土日すべてに予定あり何とかしてよ会長業務

年末に衝動買いした印刷機我が物顔で机に座る

三ヶ日済んでやっとの新年よ残ったおせちで一人酒飲む

   新年明けて

ストーブでまったり過ごす暇がない家事や地域の仕事続いて

左官屋が最後の仕事で評価落ち半畳ぽっちのモルタル打たず

こわごわと親の相続見てみれば資産ないので心配いらず

財産はあってもなくても苦労する程々なのが丁度良しなり

引き受けて次は息子へ渡すもの借りているだけ田んぼに屋敷

九十を目の前にした老親の介護いよいよ本格化かな

わが家も次のステージ入りたり親も自分も孫の坊主も

一生に一度はすべし村の役ここで受けねば男にならぬ

暖冬か年が明けたら春気分天気が良くて南風吹く

  臨時総会

総会の七日前から下調べ理事者ではなく質問マニア

後ろまで届く大きな声出せば頭の中の思考回らず

自治会の臨時総会無事終えて気抜けた夜は酒を飲むだけ

シベリアの寒気日本を襲いたり都電に高速混乱続く

雪降れどいつも元気なパン屋さん山の職場の胃袋満たす

役受けてご不幸すでに二件あり数珠と香典必須の品

週明けてやっと自分の散髪よ総会前では気持ちが行かず

初雪に何を思うかわが親父村道走って脱輪したり

早朝の降雪知らせる騒音は同級乗りたる除雪車の音

雪降れば雪に追われる北陸よ地域で除雪職場で除雪

   降雪

猛烈な寒波南下に大慌て沖縄の地にみぞれを降らす

一晩で40センチの雪降れば我が家一気に冬用モード

除雪車のエンジン音で目が覚める雪の降りたる静かなる朝

自治会が関係すること多かりし雪の降りたる忙しき朝

除雪だよ息子や嫁の車庫終えて最後は吾のダルマの車

自治会の除雪の補助も面白し除雪機追って村中まわる

実力と仕事で決まるこの世では旧家と言えど厳しき時代

差し入れのコーヒー缶で一休み還暦過ぎでは二時間限度

   年が明けて

三角部セメント打ちがやっと済み別宅工事すべて終了

養生にひと月掛かる冬工事本格使用は雪融けてから

楽しいな会長会と食事会外の会議は気楽なものよ

成人の式典済めど雪降らず福井人にはありがたき冬

年明けて平和な日々の日本だが世界各地は混乱続く

格安の徹夜運行スキーバス軽井沢にて山へ突っ込む

ストーブを焚いて眺めるみぞれ雨冬の楽しみこれに極まる

年末でキューブいよいよ車検切れレジ一台ですべてをこなす

テレビだけ暇持て余すわが親父デイサービスにお試しで行く

骨折は治れど腰がなお痛む母の病状改善期待

   如月の月初め

自治会の役を引き受け一箇月色々あれど軌道乗ったか

積雪をゼロで迎えた如月よ今年はやはり暖冬模様

快晴のぽっかり空いた週末は車飛ばしてアウトレットよ

忙しき日々の疲れが底にあるそぞろ歩きの専門店街

自治会と介護に追われる日々なれど傍から見れば吾も老後よ

信頼と見栄えに勝るレジなれど普段使いはたすきに長し

繁忙の日々に追われてキャンピング雪の中にて動態保存

   確定申告

年明けて確定申告本格化溜めた医療費集計をする

老親が通う医院の多いこと整理するにも一日がかり

農業の経費計算三年目用紙記入は手慣れたものよ

諸費用が売上金を上回る我が家の農は慢性赤字

下調べ終えれば後は記入だけ申告作業も最終段階

申告は親父と吾と妻の分三つ合われば飲み代が出る

  二月の出来事

病院で車を降りて手を引けば母の指先氷のごとし

二つ目の付き添い終えて昼を買う吾の休みのいつもの仕事

ツバメさえ巣立ち済ませば役終える定年過ぎれど我が荷は下りず

軽トラにカーナビ付けてツーリングマニュアル駆使し一人満悦

山間のちょっと素敵なログ喫茶幌付き軽で乗り付けたりし

    

   インフルエンザ

親父乗せ済生会の時間外マスクを付けた老人ばかり

高熱で指示が分からぬわが親父検査一つも二人掛かりよ

車からベッド入るまで半時間動かぬ父に途方に暮れる

両親の介護いよいよ本格化インフルかかってパニック模様

年休の連続取得を覚悟する自分で立てぬ両親診つつ

   親父のカローラ

免許歴六〇年の我が親父米寿過ぎれば手元が怪し

高齢の親父年貢の納めどき命の次の車を放す

買い物や母の通院あれこれと父の仕事がわが身にかかる

12年前のトヨタの大衆車感激ないけど乗ればそれなり

白色のセダンが似合う歳になるずっとワゴンで通せし吾も

   親父のカローラその2

老齢で乗れぬ親父のカローラを磨きまくって息子が使う

足腰の弱りし母の通院は背高ワゴンに乗り込み出来ず

小回りと無難が取り得のカローラで地域を廻って配達業務

山道や高速こなす万能車外装無難も中身優秀

洒落ていてプライド持てるその姿デザイン元はヨーロッパ発

自分ではマニア気取りで乗りたるも傍から見れば古い中古車

   カローラ君

アルデオに燃費2割は良いけれど満足2割落ちるカロ君

レジ君と軽量カロ君比べれば車重と燃費倍ほど違う

高速の安定性が段違いフィットに勝る熟成カローラ

ほどほどに何でもこなすカロ君はアイドルでなく糟糠の妻

エンスーのプライド満たさぬカロ君も最低限の用事は済ます

母親の通院仕様のカロ君よ低いシートで乗り降り自由

カロ君は10年走れる車だが熟年夫婦の気持ち満たすか


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