第12集 親父のカローラ





   第1章 親父のカローラ

   親父のカローラ

免許歴六〇年の我が親父米寿過ぎれば手元が怪し

高齢の親父年貢の納めどき命の次の車を放す

買い物や母の通院あれこれと父の仕事がわが身にかかる

ひと昔前のトヨタの大衆車感激ないけど乗ればそれなり

白色のセダンが似合う歳になるずっとワゴンで通せし吾も   

   インフルエンザ

親父乗せ済生会の時間外マスクを付けた老人ばかり

高熱で指示が分からぬわが親父検査一つも二人掛かりよ

車からベッド入るまで半時間動かぬ父に途方に暮れる

両親の介護いよいよ本格化インフルかかってパニック模様

年休の連続取得を覚悟する自分で立てぬ両親診つつ

   親父のカローラその2

老齢で親父が乗れぬカローラを磨きまくって息子が使う

足腰の弱りし母の通院は背高ワゴンに乗り込み出来ず

小回りと無難が取り得のカローラで地域を廻って自治会業務

山道や高速こなす万能車外装無難も中身優秀

洒落れていてプライド持てるその姿デザイン原案ヨーロッパ発

自分ではマニア気取りで乗りたるも傍から見れば古い中古車

   カローラ君

アルデオに燃費2割は勝るけど満足の質2割は落ちる

レジ君と軽きカロ君比べれば車重と燃費倍ほど違う

高速の安定性が段違いフィットに勝る熟成カローラ

ほどほどに何でもこなすカロ君はアイドルでなく糟糠の妻

エンスーのプライド満たさぬカロ君も最低限の仕事はこなす

母親の通院仕様のカロ君よ低いシートで乗り降り自由

カロ君は10年走れる車だが熟年夫婦の気持ち満たすか

   カローラ君その2

遠乗りで20は走るカローラは車古いが燃費は今風

室内の品質感がピカイチよプリウスさえもこの真似できぬ

優秀な空力数値に助けられ高速燃費は最新セダン

先進のプラットフォームが生きている軽き車体で走り爽快

乗るほどに吾の心を和ませるアルで馴染みのベージュのシート

ちょうど良いエンジン車体に低燃費車体古いが使える車

知らぬ間にファーストカーに居座りて擦り傷だらけの白きカローラ

乗るほどにシックリ馴染むカロ君よさすが世界のベストカーなり

   先見えず

節目終え一息つくも予定外自治会仕事に親の介護よ

お預けの海外旅行やくるま旅時間なくては絵に描いた餅

出番なく雨に打たれる旅車七年前に夢託せども

インフルで親の介護が本格化継続可能か再任業務

生き方の見通し利かぬ日々続き吾に似合わぬ酒に溺れる

遠乗りも発散できぬわが車丈夫なだけのディーゼル貨物

市議会や市長思えば軽いもの町内会の仕事なんぞは

誰だって明日の命は知らぬもの人事尽くして天命を待つ

人のため我が身を削る覚悟なりこの歳なれば欲得消えて

   介護百人一首

4年前親父が求めしカローラは知らぬ間に小傷だらけよ

老親の安全運転不安あり前方不注意判断遅れ

運転を諦めきれないわが親父辛い思いは息子も同じ

転んでも一人で起きれぬわが親父運転業務は無理の判断

通院に温泉巡りに買い物と運転業務は全てわが身か

筆談で意思を伝える会話だけ耳の聞こえぬ親父を前に

高齢の親父の説得ひと苦労耳が聞こえず書いて動かず

週一で済まぬペースで付き添いよ老親二人が通院すれば

病院の待合室が井戸端よ普段会えない近所仲間と

一人では自立が出来ぬ両親に再任用ももはやこれまで

レジアスと軽トラ共に不適用老親乗れず車いす載らず

   乗り味

アルデオと基本車体が同一で乗り味同じ家のカローラ

室内の広さ質感同様で乗ってる限り元のアルデオ

行動の範囲に合わせセダン型カロ君アルの還暦仕様

5人分軽いはずだよカロ君は燃費が良いし動き軽快

複雑なプリウスよりもカローラか枯れた技術は信頼厚し

これ以上わが身にあった車なし最新鋭より古いカローラ

久々にフィット乗ればゴツゴツとハンドル重いしこれはもう無理

以前には足に使いし軽トラもカロから見ればトラックの味

   アルデオ譲り

通院の母が乗るならそれでよし 定年後の車選びは

セダンとかワゴンだとかを言う前にそこに在るのは古いカローラ

千キロを走り込めども不足なしさすがカローラ世界の足よ

路面とかタイヤの種類気にせずに普通に走るカローラ偉大

カッコ良くTOYOTA E120と呼んでくれ世界をかけるトヨタカローラ

MCのプラットフォームに不足なし走りの質はアルデオ譲り

現行の軽量セダンに意見あり原型全てマーチやヴィッツ

意図せずに手元に来たるカローラにこれは旨いと舌鼓打つ

   カローラマジック

乗るほどに味が深まるカローラよ親父の車と高を括れど

カローラは王者トヨタの好企画維持費ヴィッツで中身プレミオ

これ以上何も要らぬと悟り切る車歴重ねた還暦男

歴代の銀行マンが足にする信頼第一白のカローラ

   山陰路再び

山陰路二泊三日の車旅多忙な日々の隙間見つけて

自治会に親の介護に家のことすべて忘れてハンドル握る

美しき宍道湖畔が今日の宿ビールとウナギで腹を満たして

朝一に杵築神社に礼参り娘と家族の幸せ祈願

天空にそびえる姿目に浮か神々集う朱色の大社

松江から2時間かかるアクアスよ島根も遠いが浜田も遠い

新鋭の水族館が大人気他で見られぬイルカのリング

灰色の若きイルカの新芸はあっと言わせるミラクルリング

出雲そば海鮮丼に丹波牛行く先々で舌鼓打つ

還暦を過ぎた体に厳しいぜ重い車で走りっ放しは

絵画描き短歌を詠んで地元酒そんな旅など夢見ていたが

   父と母

わが親父時間があれば菓子つまむ九十なれば自制も切れる

朝と夕親父がたまに間違えるテレビばかりで現実離れ

何回も便意もよおすわが母よ整腸剤と梅干欠かせず

水やりの後は水道止め忘れ九十親父のいつもの仕事

飛び出した猫に向かって怒鳴りつけ父のやること唯のそれだけ

耳遠く一周遅れで口挟む家族の話題に乗れぬ父なり

家族よりテレビが大事父の目は食卓囲めど画面離れず

疲れたぜ親父の気ままや母の愚痴息抜きせねばこっちが呆ける
   
   キャンプ仕様

給油まで600走るカロ君よ車歴重ねど燃費一番

遠乗りに威力発揮のレジアスは車重二トンで油も倍よ

15キロ走ってくれるカロ君はエコの時代に胸張り乗れる

1週間構想練って図面描き組み立て仕上げ半日がかり

トランクにミニキッチンが誕生よコンロに鍋に食器を装備

車停めバックを開けて一息よミニ卓あればワゴンに負けぬ

小さいがキッチン機能とテーブルでカローラセダンがキャンプ仕様さ

   美山再び

時を経て再度美山で働きぬ定年終えて再任用にて

建物も場所も以前と変わらぬが立場代われば別の職場よ

この職場自分で選びし場所なれど良いか悪いか時が判断

春うらら山の新緑目に入れど吾の心は複雑模様

   トランクテーブル

ワゴンにてハッチを上げて一休みこのひと時がセダンで出来ず

収納と兼用テーブル作り付け セダンで遊ぶにゃこれで十分

椅子出してテーブル倒せばダイニングあっという間に寛ぎ空間

収納にコンロと食器水ボトルこれだけあればすでにキッチン

本来は缶コーヒーを置くだけに作り付けたる兼用の卓

付加価値のぐっと上がりしカローラは他に見られぬキャンパーセダン

   セダン系

ワゴンなくセダンで憩う山の中トランク開けてミニ卓出して

ハッチなく帽子一つで屋根代わり小雨が来たら即退散よ

軽量のセダンが良いのは燃費だけ何するにしろ不便が残る

親父からどうせもらった白セダン使い倒すに気遣い要らぬ

トランクを改装しようがセダンではワゴン系には絶対負ける

   四月の出来事

春耕の候となれども我が家では田圃委託で春起こしなし

お彼岸に植えし我が家の馬鈴薯が陽気に誘われ新芽を出せり

新緑と淡きピンクの山桜 パステル模様の四月の美山

新入の孫の大きなランドセル担ぎ上げれど背中に載らず

毎週の楽しみだったパン屋さん今月末でやめるんだって

試しにとカローラだけで過ごすならワゴン軽トラ双方要らず

支所長を務めし職場で再任用割り切りあれど微妙な立場

   古いカローラ

Cセグの普通のセダンで日々過ごす生活するには過不足のなし

ワゴンとかSUVって何だろう余計な装備に無駄な空間

カローラの欠点一つ薄いキャラどういう顔で乗ったら良いか

省エネの尺度で見れば悪くなしハイブリッドを持たぬプリウス

先進も寛ぎ得られぬプリウスと内装自慢の古きカローラ

   トランクの奥

ちょっとした小棚欲しくて自作するトランク奥のデッドスペース

調味料カップスプーンお箸など置けど所詮はトランクの中

奥行きがきっちり決まるティッシュ箱 悪くはないが小棚が泣くぜ

テーブルとトレイ取り付けご満悦 セダン使いに期待膨らむ

工夫せど所詮安物セダンなり過度の期待は大けがの元

   マイクロテーブル

小さめの四角い板の切れ端がトランク端でテーブルになる

弁当や缶コーヒーの置き場所よトランク開けて憩いの時に

3点の小物そろったトランクで椅子を取り出しアウトドアする

   ピーカンの朝

ピーカンの朝に植えたるサツマ苗曇りの日までじっと待てずに

昼過ぎに萎れた姿のサツマ苗今年の植え付け失敗模様

植え付け後いつも気落ちのサツマイモ多少消えても数で勝負だ   







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