第4集 旅の車
第1章 短歌趣味
短歌趣味
日曜の朝6時前のテレビには「心の時代」と「短歌教室」
あまりにも自分に合いし番組と五十路の自分に失笑をする
短歌にて場面場面を記録するこの歳なりて知りたる道具
スケッチもメモもカメラも持たなくてパソコン前で短歌に残す
思い出す作業がいいと本にある 回想法は若さを保つ
思い出をつづり集めて眺めれば意外にこれが自分史になる
昨年の夏からはじめた短歌だが一年経たずに三冊になり
ホテルのランチ
郊外のファミレスでよいと妻言うがハンドル自然と街中向かう
格式の残るホテルのレストラン応対も良く熟年に合う
椅子座りランチのメニュー眺めれば手の込みたりし料理が並ぶ
牛肉のワイン煮込みに魅力ありスープにサラダコーヒーがつく
めずらしいサラダが並ぶバイキング居ずともわかるシェフのプライド
柔らかきワイン煮の肉とろけたる二人で過ごす至福の時間
オリーブ油各種ハーブに粉チーズ、パン塗る品とは思えぬ脇役
ケーキ付く本格的なデザートは二人の食事に華を添えたる
特級の満足得ても支払いは郊外店とかわらぬ値段
穴場なる老舗ホテルのレストラン満ちた気分でそっと離れる
ぶらり休日
白峰の小さな店でお昼買う賞味期限が今日までのパン
白峰の緑の中でパンかじるこの時期の飯これがいいんだ
手取り湖に雪解け水が集まりてエメラルドグリーンで満たされる
とっておき吉野谷の「花悠々」村なくなりて競売に出る
熱帯の森に出会える「花悠々」今は記憶の中だけとなり
白山は優雅な姿浮かびしも活火山にて温泉多し
一本のタオルが俺のパスポート手取り付近の温泉まわる
少々の無駄遣いしたくブックオフ目指すはいつも百円の本
不人気の本の中にも宝ありそれ面白くコーナーのぞく
古本は誰かが一度は買った本 枯れた本ゆえ評価がわかる
海風に吹かれて本読む贅沢さ穴場知ってか車も多し
国立と国定公園ひとりじめ人には教えぬ定番コース
実用短歌
俺流のスナップ短歌でどこ悪い芸術でなく家庭の記録
短歌とは写真と同じようなもの凝る人もあり凝らぬ人あり
ファミリーの写真アルバム宝もの家庭の短歌は文字のアルバム
名声も評価も特にいるでなく家族の幸せ綴る毎日
短歌とは作って作れるものでなく湧きだす気持ち綴るだけなり
俳句とか川柳いいが短くて自分にとって容量不足
五七のリズムが奏でる心地よさ万葉の日につかいしことば
スサノオが始めて詠んだ「八雲立つ」これが短歌のはじめとは
古事記記す神代があるかわからぬが神の作った歌は残れり
自転車の旅の2(若き日の)
自転車をきちっと整備する自分 構わずにのる楽な相棒
旅に出て1日目には修理するラフなやり方B型気質
高校の若さがなせる力わざ180キロ初日に走る
山ばかり走った記憶の但馬道印象残るは眼前の坂
冗談かここが神話の舞台とは半信半疑の白兎海岸
砂丘にて写真撮るため跳び上がる仕上がり見れば絵にはなるけど
大山を横目で眺めて走りぬく二人の脳裏に山陰焼き付け
秋吉の台地横切るチャリ二人方眼状の小石踏み付け
原爆の展示されたる資料みて若き学生戦争を知る
道端で呼び止めあるも避け抜ける危険感じる広島の道
大阪の万博会場すぐ横を行かずに抜ける気骨持ちたり
京都では銀閣いって見てるはず写真残るが記憶に薄し
まごの風邪
薄着する孫の鼻かぜ治らずに家族みんなで心配したり
6時まで保育頼むにゃきつ過ぎるじいじ休んで子守受けもつ
孫からの咳と鼻風邪もらいたり幼き児だと油断をしたる
鼻かぜといえどかかればつらきもの鼻水止まらず仕事にならぬ
背広着て近くの医院へ駆け込むも何の用事と聞かれる始末
やぶ医者と思えどほかにすべはなくもらった薬欠かさずに飲む
体力を消耗させる風邪なりし一日寝入るも夜また眠る
祖母のこと
戦時下で披露もなしに籍入れし祖母は新保へ嫁入りしたる
恋愛の旦那帰らぬ人となり残されし子も風邪で亡くして
整然とならびし山の戦没碑遺族によりて手入れ途切れず
片隅に祖母の彼氏の戦没碑23にて逝きしと刻みし
長引きしシナの事変で戦死する雲南省の名もなき町にて
子に孫にひ孫育てた祖母の目に亡くした吾子の姿映らん
アルの小さな魅力
肘おきに無意識に置く腕先にピタリと収まる開閉スイッチ
雨ぬれず頭ぶつけず荷物出すこれが出来ないハッチも多い
飲み水にテーブル椅子にコンロ鍋すべて納まるアルの床下
やさしくて包容力あり威厳あるアルのデザイン秀逸なりし
Cd値0、3は優秀で100キロ出しても余裕の走り
背高も車高の設定絶妙で立体地下と場所を選ばず
アルほどの後席重視のワゴンなく古くなれども買い替えできず
カローラと変らぬ維持費に満悦すタイヤも電池も並みの大きさ
窓少しあけて走るも気持ちよく優しき風がほほをなでたる
空力が練ってなければできぬわざ多くのクルマは風と騒音
見た目には胴長スタイルアルデオも雪道かえって走り易しと
古くてもわびしくならないアルデオは数ある中の名車の一つ
冷夏の予感
六月の季節に合わぬさわやかさ暑き夏にはなれない予感
六月の強き日差しに肌寒さ植えた茶苗の育ちが悪い
連休を外して植えたコシヒカリ弱き夏では実りを案ず
北欧の涼しき夏を思わせる過ごしやすくも農家は不安
イチゴ狩り
初めての保育園のイチゴ狩り1歳の児らも帽子かぶりて
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