第5集 猛暑日





    第1章 選挙事務

   選挙の事務

下見する開票場の狭きこと暑さ覚悟も酸欠心配

タクシーに投票箱積み身をまかす責任重くも安堵感あり

慌てきて記録差し出す事務の人急ぎながらもチェックは慎重

政党と候補者名が入り混じる参院比例区開票泣かせ

日本にも文字の書かれぬ人多し疑問票の文字見て思う

なぜ早く出来ぬとせかす新聞社気持ち分かるがミスはできない

比例区は疑問の票のパレードで帰宅につくのは明け方3時

帰宅時の車の中でラジオ聴き開いた票の勝敗を知る

新党首甘く見たりし消費税逆鱗ふれて議席を減らす

   はやぶさ

散歩中逃げ惑うハトに驚きぬ上空見れば一羽のハヤブサ

風上に高度を上げたハヤブサが風下の鳩一気に狙う

張り詰めた時間過ぎ行く日暮れ時ハトとハヤブサ命の攻防

   拓郎

若き日のたまりし不安やエネルギー代弁したる吉田拓郎

聴衆にぶつけるような歌ギター心の奥のたましいを見る

拓郎の歌詞に綴れる青春に我が青春を重ね合わせり

嬬恋の朝まで続くコンサート拓郎やがて伝説となる

嬬恋に30年の月日経ち若者たちにも老いの一文字

かぐや姫拓郎歌う嬬恋に白髪交じりがふたたび集う

プラズマの大画面前正座して息も忘れて拓郎を追う

人生の幾多の経験積むほどに味わい深まる拓郎の歌

不幸にもがんをわずらう拓郎の声は落ちても力は落ちず

ステージをDVDに編集し我が青春を手元に置きし

   目医者

小坊主を見慣れぬ眼科に連れ行くもジーパンはいた若き女医なり

受付のロビーに置かれた本おもちゃどれがいいかと逆に勉強

幼児連れ目医者行くにも気を遣う見知らぬ人が愛想をしたる

小坊主がチャイルドシート嫌がりて胸の当てもの足でけりやる

子どもには身体動けず親見えずくるまの移動はつらきものなり

   最近の孫

腕の中動きやめない幼な孫ひとりで遊ぶと自己主張する

一歳のチャイルドシートのおさな児が胸当てかじって抵抗をする

味噌汁の大きなワカメ入れられてしばらく進まぬ孫の朝食

ばたばたと2階の廊下這い回る孫を寝かせる時間過ぎても

孫が押す手押しぐるまの響く音玄関先まで聞こえて来たり

押し車押しているのか聡一はその足を見れば引きずられている

1歳の誕生ケーキ切り分ける孫の目プリンに釘付けとなり

風呂上り二人がかりの大仕事裸の孫にあの手この手で

チョロQで遊びが出来る歳になるそっと押し出しその後を追う

そろそろと足からベッド下りる知恵何度か落ちて覚えしものよ

   ご不幸

近所にてガンで逝きたる人ありておれは元気と父はいきがる

短歌には楽しいことのみ記録する隣の葬式短歌にならず

今までの人生模様浮きでたるお通夜に来たる人の名見れば

お経にて送られるまでの人生と知れば自然とやさしくなりし

   夏の旅

海の日の連休二人の休みとれ妻と奥飛騨出掛けてみたり

梅雨明けて連日猛暑の日々続く車中泊なら高原あるのみ

バイクやら遊びの車数多く夏の奥飛騨賑わいたりし

梅雨明けの乗鞍岳や上高地一年中で一番輝き

せせらぎの街道沿いの木々達もここぞとばかり輝き居たり

乗鞍の頂上登る準備なく遠くの眺めもちょっと悔しい

キャンパーのメッカとなりし乗鞍の高原来れれば文句は言えず

ほおのきは一晩過ごすにゃ文句なし無料の上に広くて涼し

コース良く混雑避けて楽しめりこの時期の旅暑く混むのに

1000円の高速代と燃料費主な経費は食事の御代

   明宝の岩魚

せせらぎの街道にある道の駅岩魚焼く火が年中絶えず

囲炉裏端すわり見上げる天井のあまりの黒さに言葉失う

串刺しの岩魚ぐるりと取り巻きて囲炉裏の薪が赤々と燃ゆ

腰曲がるおばちゃん無心に岩魚焼く見ているだけで満ちたる気分

養殖は骨やわらかく美味しいと意外な言葉に納得したり

何本の岩魚焼いたか聞く吾に万の単位と答える主人 

山積みの薪は何かと尋ねればナラと答える深き山間

丁寧に焼きたる岩魚口にするもったいなくて頭まで食う

   日差し

キャンパーで寝ていた妻が文句言う車内の日差しで日焼けしたって

窓開けて風を通した思いやり日差しの移動考え及ばず

   せせらぎ街道

せせらぎの流れに沿いし街道はドライブできる上高地のよう

せせらぎにバイク仲間が集まりて 知る人ぞ知るバイク街道

標高が千メートルの峠ありバイク停めれば夏でも涼し

道沿いの白樺林に魅せられてカメラ取り出す人も多けり

名物のドレッシング美味なりて手に持ち味を想像したり

知らぬ間に無料になりしトンネルはせせらぎ街道身近にしたる

   ほおのき平

穴場なるほおのき平スキー場登山の客と宿泊したり

乗鞍の直行バスが発着し朝の四時から賑やかなりしも

施設よくオートキャンプも顔負けで日帰り風呂やトイレ使えて

ほとんどの旅慣れしたるワゴン車は始発のバスまで車内で過ごす

お隣のバスキャン家族おおらかでタイヤ溝入れそのまま寝入る

除雪車で引きずり上げるバスキャンのオーナー片手に幼児抱きたり

キングにて食事にトイレ着替えしてホテルのごとくにチェックアウト

   乗鞍高原

乗鞍の頂上みえる高原は猛暑なれども気温爽やか

乗鞍の頂上めざすシャトルバス白き帽子が乗り場に並ぶ

雪渓の残る乗鞍眺めつつテラス腰かけソフトをなめる

林間は子供やペットの遊び場であちらこちらでキャンピングする

涼しくて眺めも良くて広場ある夏のこの時期キャンパー天国

夏の避暑冬のスキーと客を呼ぶ 素敵なペンション林間に立つ

   ベビーカー

ベビーカー隣に置きて食事する身重の母いる家族づれあり

見えずとも宙に浮きたる手首みて障害持つ子と吾は知りたる

両親も姉も気丈に振舞うもその気持ち知る手にとるように

両親のひめたる想い見る思い大きくなった母のお腹に

これからの家族の苦労眼に浮かびその場去れども涙がにじむ

   旅の食事

白鳥に洒落たカレーの店ありて本格味に客足絶えず

明宝の岩魚の塩焼き名物よ囲炉裏で焼いた味は格別

せせらぎのシフォンケーキ美味しくてふんわり味にコーヒーが付く

モヤシ入れ豚と炒めた味噌のモツほおのき平のメインデッシュ

奥飛騨のメープルパンとオレンジで爽やかな朝満喫したる

乗鞍の山頂眺めてソフト食う高原気分を味わう一つ

飛騨牛と五平餅に草のもち地元を味わい小腹を満たす

小矢部にてネギトロ丼に熱いそば旅に出るたび太る理由あり



第2章 週末へ

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