第8集 美山の地
第1章 美山の地
美山の高齢者
描けども尽きぬ魅力の美山杉百歳画家の筆は休まず
老画家が愛し続ける美山には四季折々の山里がある
この美山高齢社会の先進地30年後の日本の姿か
田に畑にやること多き山の村長生きできる環境がある
高齢者多いはずだが美山地区介護かからぬ達者が多い
母の外泊
肺炎で入院したる母なれど最新検査で他見つかりて
週末に外泊したる母見れば三週間の空白思えず
至急にて介護トイレを取り寄せる足腰弱りて歩けぬ母に
家戻り気持ちシャキンの吾が母は部屋のトイレを使わずにいる
帰宅してベッド離れぬ母だけど安心感の漂う吾が家
食事後に伸びたる母のつめを切る熱きタオルで指温めて
進まぬ短歌
異動にて多忙な日々に気疲れし短歌つづれる時間がとれず
短歌にて自分の気持ち出す前に次から次へと出来事起きる
2年間毎日つづった短歌でも環境変わって筆が進まず
原発に自分の異動に母のことどれをとっても大きな話
生活の根底揺るがす出来事に対処するだけ短歌に行かず
落ち着けば題材豊富なこの時期と楽しみ残して走る毎日
三月経ち
三月経ち溜まった疲れが溢れ出し夕飯あとはテレビに添い寝
久しぶり胃の古傷が痛み出すのどかな景色に似合わぬ課題
限界の集落奥の峠道二車線確保のトンネルがある
十年と使わず閉鎖する校舎十数億も掛かったはずの
山間の立派な施設晴れ舞台年に一度の村祭りだけ
母の歯医者
入浴の母を見守る吾が父をスリガラス越し静かに待ちぬ
かび生える急な階段よじ登りレトロな歯医者に母は通いし
歯医者にて入れ歯新調したる母入院重なり取りにも行けず
おぶろうか尻を押そうか思案する弱りし母の歯医者通院
すだれ掛け風を通した治療室古きパソコン人柄見える
先生が意図したわけで無いはずだ昭和が香る待合室なり
日曜の午後
気分良いこんなひととき久しぶり村の行事が済みし日の午後
豚肉をごぼうと煮こんだ佃煮で酒を飲みつつ一人満悦
気に入りの動画見ながら悦に入る自分で組みしパソコンつけて
気に入りのシンクパッド持ち出して打ち込むキーの心地良さかな
灯を落とし壁いっぱいのプラズマで北海道の旅紀行見る
病院へ母を送りしその夜にごぼうでひとり酒を飲みたり
気候変動
最近の気候変動すざまじき記録的やつ世界を襲う
洪水の伝説世界に数多しこの世の時代に見たくはないぜ
今生きる60億の人々は変化見るためここに居るのか
未来図が読めない時代の人生路慌てず騒がず静かに暮らす
宇宙的大異変というならば何処に居たとて安全はなし
どうせなら家族一緒の運命よそれしかないしそれが一番
林道大仏線
生活に使わぬ林道荒れ放題小石や雑草進路をふさぐ
見渡せば眼下広がる深き谷これも美山のひとつの姿
雨上がり天空近き林道の初夏の緑にナツツバキ見る
草刈のエンジン響く林道に老人マークの軽トラ並ぶ
未舗装の年月経った林道はひと雨降れば小川のごとし
蒸留器
ホーム店ヤカンとパイプ手に入れて手軽に作る蒸留器かな
ミント系ハーブの香りに包まれて給湯室にて一人格闘
蒸気管水で冷やせばポタポタと香りの水がペットに溜まる
杉の葉によもぎにハーブと挑戦も鼻が麻痺して匂いつかめず
癒しとは切っても切れぬ香り系若き女性に美山売り込め
惑星
あまりにも衝撃強き情報に仕事も何も気持ち入らず
職員にNASAが発した情報は家族で災害に備えよだって
巨大なる得体の知れぬ彗星が今秋地球とニアミスをする
破壊者と呼ばれた星が再来す三千六百年の周期を持って
古代史に残る大きな洪水は破壊星の周期に重なり
世紀末まさか九月に到来と誰が予想し誰が信じる
梅雨明け
7月の10日待たずに梅雨明ける今年の夏も猛暑の予感
作業前自治会長の長話強き日差しに日陰へ逃げる
猛暑日に10年ぶりの草刈機エンジン音がめまいを誘う
家戻りシャワーの前に扇風機強き風にて体を冷やす
節電もきびしき暑さ耐えがたく電灯消してエアコン入れる
2台のクルマ
秋までのこの世と思えば何乗ろう好きな車で日々過ごしたし
これからは優しく乗れるアルデオかレジアス乗って胸張り生きるか
いつまでも2台の車手放さず無駄と知りつつ離されもせず
豊田先生
豊田翁描き続けた足羽川豪雨襲いて見る影もなく
百態の杉を描きし老画伯筆にも身にも精が宿りし
老画伯杉百態に救われて命の絵画世紀を超える
夏の三連休
朝一の五龍ヶ岳に魅せられてあわてて画材とキャンバスを出す
雲かかり途中なれども絵をしまう記憶頼りは本意ではなし
車内にて妻の作りし朝飯を山を見ながら食べる幸せ
明るくて爽やかな風八ヶ岳ファンの多さも納得がいく
散歩道置かれし多嘉示の彫像が木漏れ日あたって心地よさそう
富士山が見えるはずだよ富士見原運転しつつは拝めずじまい
ゴンドラに乗って樹海を見下ろせばまるで空飛ぶ鳥たちのよう
すぐにでも足届きそうなリフトからお花畑を連続に見る
槍ヶ岳白馬岳に杓子岳齢重ねたわが身を震わす
三山を水面に映す八方池色とりどりの客で賑わう
子供らとふた昔まえ来た池に妻と二人で思い出ばなし
泣きべその登山途中の女の子帰り背負われ足ブランブラン
夏の草刈り
その強き生命力と格闘す高き日差しのくず茂る野で
草刈りの葛といえども命あり断ち切るつるに心が痛し
草刈りに慣れぬ機械と格闘もしばらくすれば腕笑いだす
吹き通る涼しき風に身をまかす手休めをする松の枝陰
風揺らぐ夏草たちの賑わいが迷いし吾の心を満たす
軽トラに置かれた熱いペット茶も草刈後は命のお茶よ
草刈を終えたる午後のお仕事は体動かず事務だけになる
現場立ち
豊田氏の絵を知りたくて現場立ち絵の具で描けぬ絵の意味探る
師が描く地点探して降り立てば息遣いまでわかる気がする
正確に描き写すだけでないような絵を描くという芸術手段
八月
M6の地震起こりし駿河湾原発安否が脳裏に浮かぶ
世の中はバランス取れているらしい憎まれっ子は世にはばからずか
八月に猛暑戻りて安堵感台風あとの冷夏続いて
コメリにて草刈鎌を手に入れる草刈りよりもサバイバル気分
画像にて判ったつもりの絵画でも実物前にて立ち尽くしたり
夏の草刈りその2
夏の日にプール裏の草を刈る強き日差しも夏の思い出
還暦の二人勇んで草刈りも小銭がなくてポカリが買えず
スケッチ大賞
スケッチで美山へはいる人多く山も川瀬も輝きいたり
眼前の美山の山を描けども画伯の描く美山にならず
今夏の暑さ耐えかね八ヶ岳高齢画家にも息抜きがいる
美山描く応募作品見るにつけ豊田画伯の大きさを知る
キャンパー補修
キャンパーも十年たてば傷みだす出来る範囲は自前で修理
休日は我が家の車の屋根上がり日差しで劣化のシールド修理
高架下日差しあたらず快適であぐらかきつつ作業が進む
通る人興味もちつつ見上げるも上から目線で優越感あり
思いより苦労少なく仕上がりて3年周期の雨漏り対策
エコ川柳
わがメタボ エコ生活も 変化なし
うちの猫 エコ生活か 昼寝する
心中で エコとエゴとが 喧嘩する
延ばせるか 地球の命 エコだけで
節電で エアコン止めず 灯火消す
慰霊碑参拝
戦から六十余年の月日経て慰霊碑参る人の少なし
そびえたつ慰霊の石碑こけむして参拝人をやさしく迎え
若き日にお国のためと散った霊 年に一度の供養で生きる
慰霊碑の周りに見える除草跡 地元の人の気持ちが見える
山沿いの集落にある慰霊碑は息も切れそな高台ばかり
砂金採り
夏の日に大人三人砂金採り麦藁帽子と長靴はいて
岩床の隙間の砂をかき集め選別皿を必死に揺らす
目を凝らし選別皿の黒砂鉄 中にキラリと光るものあり
光もの見つけた時の高まりは還暦男を中毒にする
単純な作業ゆえにて没頭す腰の痛さも時間も忘れ
見失うほどの小さな成果物 人に聞かれて見せられもせず
第2章 台風12号へ
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