もとの県鳥獣保護センター跡、いまのふれあい広場の横の山道を数十メートル登ると、そこはかたくりの群生地。
可憐なうす紫の花一輪。清楚で恥ずかしそうで、それでいて何ともいえない色気もある。こんな素敵なかたくりたちのおしゃべりがここでは聞ける。
花の時期は四月の中旬、花が咲いて1〜2日で色が褪せてくる。本当のみごろは年間を通じて2〜3日ではなかろうか。
片栗粉の名があるようにその根茎は良質の澱粉がとれるが、とても根を掘り返す気にはなれない。人に教えたくはない感動的なかたくりの群生地である。
朝倉氏遺跡の唐門前は、道路をへだてて武家屋敷が並ぶ。その下城戸側から道を山の方へ入る。約200メートルを進むとアスファルト舗装がきれ、そこから30メートルほど入ったところに登山道の案内板がある。
ここは山越えコースとしてよく利用する、八地谷道の入り口である。今日はここを登る。しばらくは薄暗い杉林の中を登る。傾斜が大きく赤土の登りだ。今日は問題ないが、雨の日に下ると滑りそうだ。脇を見ればショウジョウバカマの可憐な花を見つけることができる。
十五分も歩くと尾根の分岐点にでる。右に行けばアスレチックのある槙山へ、左に行けば少年自然の家だ。
左手に折れてほどなく右手に竹薮林が見えてくる。子供の工作には持ってこいの太い孟宗竹だ。竹薮のなかに、南山の集落へ下りる道がついている。いつかは下りてみたい。
さらに進めば赤松、杉、桧の林を抜け、右手に安波賀の春日神社に下りる分岐にでる。雨の日の山越えコースとして利用している。階段が切ってあり、歩きやすい。
さらにすすむと右手の小高い丘に、一本の枯れた松が見える。道から20〜30メートル離れているので寄り道にはなるが、180度の展望が開ける場所である。市民スキー場のちょうど真上にあたり、眼下には自然の家が丸見えとなる。ここら辺りでは一番の休憩場所である。
次第に道は下りになる。植林された桧はまだ小さく、見通しも良い。気分よく足を運ぶと、ほどなく安波賀駅への下りの分岐点につく。朝倉氏遺跡から約1時間強である。
この分岐を下れば10分ほどで自然の家につく。
世間が足羽山のさくらで賑わう頃、我が少年自然の家にも春が訪れる。
さくらの木はそれほど多くはないが、少ない分だけ注目度が高い。東郷、酒生に広がる田起こし真最中の水田を見下ろして、自慢げに咲く。満開の頃はそれはそれは見事なものである。
咲くのも見事なら、散るのも見事。退所式を待つ女子高校生のセーラー服に花吹雪が降りかかる。笑顔で花びらを追う女の子の姿がなんとも絵になる。
そんな、さくらも今は葉桜。さあ、忙しい夏のシーズンが始まるぞ。
話すことは誰でも苦手である。特に大勢の人の前で話すことは、恐怖に近いものがある。できるだけ慣れてもらおうと、朝の集いと夕べの集いに、生徒のスピーチを取り入れている。
学校によって違うが、だいたい5人程度が広場の前に並ぶ。事前の打ち合せは済んでいるので、誰が話すかはすでに決まっている。
今日は高校生だ。メモを手のひらに隠し持っている。上手にまとめたものを必死に読む。とても、聴衆の様子などはわからない。しゃべった経験をしたというだけ。
小学生だとメモもつくらない。昨日の感想などを話す。高校生だと自分を作って素直に話せないが、小学生だと思ったままにそのまま話す。表現力がまだ充実していないからたどたどしいけれど、聞いているほうは楽しい。
高校生の表現力で、素直に感じたことをそのまま話してくれると良いのだがそうもいかない。一度ではとても上達は無理。週に一回程度の話す機会があればベストかもしれない。大人でもなかなか自由に話せる人は少ないのだから。
砂利道からの雨水が、趣味の家の玄関先へ流れ込む。ここの側溝は泥がたまりやすい場所である。
晴れ間に時間を見つけて、ひとり黙々とスコップでほる。数年間の泥がたまっている。掻きだしては一輪車に積む。
砂と泥が程よく混ざって、畑ものには良い土だ。指導員の先生は花の世話が好きだから、今度花壇を作るときに使ってもらおうか。
側溝の中なのにみみずが生息している。どこから入ってきたのか知らないが、僕が掘りださないかぎり一生側溝のなかで生きていくはずだったみみずだ。
アスファルトと側溝の間の僅かの隙間に根を延ばして、雑草が伸びている。せっかく伸びたのに可哀相とは思いつつスコップの先で剥がしとる。
耳元にはさわやかな初夏の小鳥のさえずり。
ざわめきと煙草の煙のなかで悶々と仕事を進める人達には申し訳ないが、健康のために、そして精神的にもリフレッシュできる作業のひとつである。
自分の履物を自分で作る。こんな楽しみが草履作りにはある。では、手順から。
まず、直径7〜8ミリのポリロープを用意して、1メートル50センチの長さを6本作る。
本来はわら縄が適当なのだろうが、今の時代準備するのが大変だ。手に入りやすくて、編みやすいポリロープを使用する。
実際履いてみるとポリの方が足当たりはいい。しかし、長距離を歩くとなるとどちらが良いかは判断しかねる。
さて、前置きはそのくらいにして作りはじめる。座布団を用意して、その上に足を投げ出して座る。ポリロープを一本取り出し、二重の輪にしてそれぞれを自分の親指にかける。二本目から編み出す。最初四段くらいは中央の二本をまとめて通し、五段目からは一本づつ編みこむ。
手前が足先になるから徐々に幅を広げて、五センチぐらい編み込んだところで自分の足の大きさにあう広さにするといい。
堅く過ぎると小さくなるし、ゆるいと大きくなり過ぎる。適度の堅さで編み込んでいく。四本目が終わったところではなおを入れ、もう一本編み込めば終わりである。 まずは歩いてみる。自分で作って自分で履く。痛快である。飛んだり跳ねたりする。昔の飛脚にでもなった気分である。
もし、何もないサバイバルの状態になったら自分の履物だけは作れるという自信にはなる。子供達にもぜひ勧めたい。
キャンプの醍醐味。それは、やはり飯ごう炊さん。
説明を受け、かまど係はさっそく火起こしにかかる。薪を寄せあわせ、その中の新聞紙に火をつける。最近の子は恐くてマッチが満足につかえない。ちょこんとつまんでやっとの思いで火をつけた新聞紙はすぐ燃えつきる。めらめらと燃え上がるまでがかまど係の腕の見せどころだ。
飯ごう係といえば米をかしぐところから始まる。2〜3回かしぐ。たぶん、生まれて始めて米をかしぐのだろう。何回ぐらいかしいでいいのかわからない。神妙にかしぐ。その次は水の量だ。説明では目盛の1センチ上と聞いているのでその通りにしている。
しかし、水の量は経験を積めば積むほど悩むものだ。おいしいご飯がいただけるかどうかは、この判断でほとんどきまる。やっと火の勢いがついてきたかまどに、飯ごうを乗せる。吹き上がるまでしばらく一休みだ。
副食係は野菜の皮剥きだ。この子等にとって包丁はなれないものの一つ。危なくって見ていられないが、これも勉強の一つだと思ってあえて手は出さない。
今日は定番のカレーだ。大きく刻んだ野菜をかまどの大きい炎でいためる。肉もいためる。鍋から発する玉ねぎや野菜のこの匂いはまさにキャンプの匂いだ。良く火が通ったところで水を入れ、しばらく煮込む。
そろそろ先ほどの飯ごうが吹き上がる。木の枝で飯ごうの蓋を押さえてみるといい。ぐつぐつと振動が伝わってくる。5〜6分でこのぐつぐつが消えたらもう大丈夫。火の勢いが強いとあっという間にお焦げが出来るから、この引きぎわが勝負どころだ。
この間トマトやレタスのサラダが出来ているから、さあ盛りつけて、おいしいカレー定食いただきまーす。
自然の家にはちょっと不釣合な豪華なバーベキュー。800円の材料費で焼き肉と焼きそばが召し上がれます。
この料理の一番の難しさはやはり炭の火起しである。50キロ強もある側溝を4人ぐらいで目的地までよれよれと運ぶ。
炭は8人で約1.5キロ。側溝の目ザラの上に着火剤の固形燃料を置く。その上に炭を合掌形に置き、マッチで火をつけてうちわであおぐ。
炭にはなかなか火が付かない。上からあおいだり、横からあおいだりいろいろするがそれほど変わらない。時間が来ればまっ赤になるのだが、かまど係にはじっと待ってはいられない。
その内に副食係の切った野菜が届く。鉄板に油を引き、野菜を焼き始める。まだ、火が弱いので油がはじかない。うちわのぱたぱたが止まらない。
誰かが
「鉄板をとって火を強めたら?」 なんていうもんだから、野菜を乗せたまま鉄板を降ろして、またぱたぱた。気をきかせた係が杉の枯れ葉をとってきて入れるもんだから、ぱちぱち、そして、ぱたぱた。バーベキューはこの賑やかさがいいんだね。
肉と野菜に火が通ったころ、鉄板を囲んでつつきあう。この肉はどうだとかこの野菜はこうだとか、わいわいガヤガヤ。次第にお腹もふくれてくる。最後に残った野菜を使って焼きそばを作る。
お腹一杯、満足一杯のバーベキューでした。
独楽とはひとり楽しむと書く。今日は独楽作りに挑戦だ。見本を見ると竹串に紙テープを巻いてあるだけだ。たいしたことはないとたかをくくる。
簡単に説明を聞いて、早速始める。紙テープは赤、青、黄色、白等と種類は多い。まず、白の紙テープを選ぶ。先端に糊をつけて、串に巻きつける。上部は手の平で回転させる部分がいるから少し大目にあける。下は3センチほどあけて、巻始める。
締めあげながら巻く。あまり力を入れると串からはなれて回転してしまう。適度の力で巻く。きれいに巻く。ところが案外難しい。ちょっと油断するとゆるんでしまう。スピードを速めると雑になる。こんな調子だから初めの1センチぐらい巻くのにみんな大騒ぎ。
「子供の根気を育てるには良い活動だ。」
なんて言いつつ一生懸命巻く。適当なところでテープの色を替える。
「これだけ苦労したのだから、思い出深い独楽になるだろう」
などとも言って巻く。
やっと直径10センチぐらいになる。そっとまわしてみる。すこし内側を中に押し込み独楽らしくすると、形は良いが回りにくい。そのままの方が回りやすいようだ。 気にいった形が出来たら接着剤を薄く表面に塗る。塗だちは不透明だが数時間もすると乾いて透明になる。ニスを塗ったようにきれいになる。
これで独楽自体は出来上がりである。工程が単純だから独楽に差が出ないように思えるがそうではない。巻く固さ、丁寧さ、テープの配色等作った本人の性格が良く出る。読んで字のごとく大人でも独り楽しめる独楽作りである。