1999 第19回J24クラス全日本選手権大会 報告 [goto top]
11月20日から23日、神奈川県、佐島マリーナにて開催された「第19回J24クラス全日本選手権」に参加しました。
今回は「ミラクルSANTA」チームのメンバーとして参加。参加の感想をご報告させていただきます。この大会は昨年、敦賀にて敦賀港開港100周年事業プレイベントとしての開催に続く大会で、福井県勢として、笠原文和オーナーのSANTAブラック(吉田豊スキッパー、高木裕ヘルムスマン)、SANTAグレー(北山善夫スキッパー、ヘルムスマン)、乗員全員が福井県セーリング連盟所属のSANTAキッズ(矢部良昌スキッパー、ヘルムスマン)、ミラクルSANTA(中川和幸スキッパー、ヘルムスマン)の4艇が参加しました。
特に、SANTAキッズに関して、今大会に参加のための県勢スペシャルチームとして旧SANTAキッズのメンバー、出村氏を中心に県連から選抜されたメンバーにより構成されました。
また、ミラクルSANTAは敦賀在籍のJ24、3艇から雄志が集い、西宮に艇を在籍、J24関西フリートに1年間出向して練習を重ねてきました。
それぞれに、敦賀大会以来の雪辱、闘志を胸にこの佐島大会に臨みました。
両艇とも大会の2日前、18日に佐島入り。
前日夜より艇体の輸送(SANTAキッズ)、マスト立て等の艤装、受計測を行いました。
今回は敦賀大会と違い、フル計測は行わず、計測証明書のある艇はゼノアの重量計測(クラスルールの変更により、実施することになった。)とマスト計測のみということでした。
佐島マリーナの規模や、大会運営の効率化からの判断と思われますが、敦賀大会に際しての協会側からの強い要望等からすると、腑に落ちない部分があり、参加者の公平さを欠くことにも、疑問を感じました。
ともあれ、昨年の経験も生かされ、十分な時間的余裕でそれらの作業を終えました。
我がミラクルSANTAチームにおいては、その中でも冷や汗ものの計測項目がありました。
それは体重測定です。ご存じのとおりJ24クラスは、クラスルールによって乗員の総体重が400kを越えることが出来ません。大会1ヶ月前の時点で我がチーム乗員6名の総体重は420k超。全員5%ダイエットのノルマで極限状態の減量を経験しました。
最後に利尿剤と発汗で落とし、何とかぎりぎりクリア出来ました。
19日午後からは練習レースが実施されました。
参加47艇中25艇程度の参加で、県内艇は全艇参加。
はじめての海面、相模湾は広々し、フラット。しかしシフティーでパフっぽい、
掴みにくい風が特徴的でした。その中でも我がチームは西宮と同じような、確かな感触を得、明日からのレースが楽しみなくらいでした。
夜は艇長会議が開催されました。
会場のことについて触れてみたいと思います。
佐島マリーナは三浦半島、神奈川県葉山町にあります。福井から約500k、車で約6時間の距離です。横浜市から約1時間かかり、結構不便な場所に感じました。
近くは葉山マリーナ、逗子マリーナ、江ノ島ヨットハーバー等があり、周りは結構都会のリゾートっぽい雰囲気があります。
佐島マリーナの規模は、私の感覚から非常に狭く、バースのスペースはファーストハーバー敦賀よりも狭いほどでした。しかし、ホテルが併設され、そこにパーツショップや、会議室、レストラン等があるため、佐島マリーナホテルに宿泊すれば、全てがその中で完結できるため、非常に便利でした。ただし、すでに述べたとおり敷地が無いため、計測等の効率は非常な悪さでした。
明けて20日、いよいよレース開始。
風軸はおおよそ北。前日よりも強め風の中、定刻9:50に予告信号。
10:00にレースはオールクリアでスタートしました。
しかしスタート後から風はぐんぐん落ち始め、昨日の夕刻の強風を見て、吹き上がることを予測したリグ設定を施した我が艇は全く艇速が上がりません。
加えて、昨日のとおり、強烈な風のシフト。
20から30度は平気で振れまくり、時には60度近くも振れます。
悪いときはさらに悪くなるもので、振れを我慢して我慢しきれずタックの瞬間また振れ戻し、風を求めて返すと逆方向に風が…・。
事前に情報として得ていた物と全く違い、さらに西宮とも、敦賀とも違う風に翻弄されっぱなし。ようやくフィニッシュするも、順位はかなり不本意なものでした。
2レース目も風軸こそ大きく東に振り、マークを打ち直し、2回のゼネリコの後いきなり黒旗。さすがにその後はリコール艇無しでスタート。同様な風の中規則性の全くつかめない風の中で、ストレスが貯まります。
前レースよりもリグを弱風用に振ったことで、艇速が戻り、苦しみながらも真中程度。
順位よりも西宮での艇速、角度、クルーワーク等の感触がつかめず、悩んでいました。
21日はさらに風が落ち、この時期にしては異常とも思える暑さと共にまたまた辛いレースになりました。
スタート時点では北西方向の風。しかし振れまくり。場所によっては潮の流れの方が速く、バックするような艇がある状況。結局このレース、参加47艇中20艇がDNFとなるレースでした。
そのような中、我が艇もマークラウンド後しばらくしてから、潮に流されマークタッチ思想になったり、風が90度も振れ、行った道をまた帰ったりを繰り返しながらも、最後に一本のブローを運良く掴み、タイムリミット内にフィニッシュすることが出来ました。
この日は1レースのみ。レース後、パーティーがありました。
敦賀と手作りの雰囲気で、手前のオードブルやビールが振る舞われました。
ハーバーの一角で、狭いスペースペースに密集したJ24を見渡しながらのパーティーは、お天気にも恵まれ、良かったです。関東フリートのみなさんのホスピタリティーを感じ得る一時でした。
22日、前日のレースの内容からも、1レースでも多く消化したいレース委員会の配慮からか、この日はレースの開始時間を1時間繰り上げて8時50分の予告信号となりました。
1回のゼネリコの後、またもやいきなりの黒旗。
エンドより圧倒的有利のラインから、下側に艇団が集中します。
中抜け右左にしか風はなく、前日より左海面優位が囁かれていたこともあって、我が艇もエンド側にアクセス。アプローチが速すぎて、ラインを流したところで下から突き上げられ、さらに潮にも流され、数艇が団子状帯でラインから押し出されました。
その中には我が艇と、仲良くSANTAキッズも含まれ、いきなりのアウト。
ゼネリコとなり、読まれた艇は即失格。次のスタートも多くの艇が読まれ、ゼネリコ。結局14艇の大量BFD。次のスタートこそオールクリアで出た物の、またまた風は落ち、艇はストップ。
結局レースした艇も、24艇がタイムリミットにかかりDNF。フィニッシュ艇わずか9艇のレースでした。
この日はこのレース後、風は上がらず、1レースのみとなりました。
結局、即BFDの我が艇は、長い長いレースの観戦をすることになりました。
これもまた、大変勉強になります。
上位艇のコース取り、クルーワーク、ラウンディング・テクニックなどは大変参考になります。
特にフィニッシュ直前の1位、2位を分けた、シエスタ・コスモスと、SANTAグレーの攻防は、本当にワンジャイブのテクニックで勝負を分け、超微風でのコントロールの難しさと、重要性を感じさせる1幕でした。
23日、いよいよ最終日です。
実施要項によりこの日の午前11時30分以降のスタートは行わないとの項目があり、この日も繰り上げで8時50分の予告信号となりました。
前3日間はよく晴れていましたが、この日は曇り。気温もあまり高くなく、違う雰囲気でした。
前と比べてまだ安定した風の中、レースは定刻でスタート。1発オールクリアのスタートでした。
安定しているとは言いつつも、まだまだシフトは強烈です。また、前日までの傾向から、風は左右奥の2本。どちらが伸びるかは、博打的な要素が強いのです。
今までの学習から、左海面有利と踏んで、エンド寄りスタート、思い切って左に伸ばします。
ところが今日は、右側がグンと延び、1上は右から行った艇に次々回られます。
1上回航後、昨日と違って真ん中にもパフが残っていることを観察し、最短コースを選んだのが大正解。昨日爆裂2位のSANTAグレーにも追いつき、次々に左右の艇を交わし、良い位置まで浮上。
1下回航後もう一度左のばしで、周りはSANTAグレー、シエスタ・ローザ、SANTAブラック、クラリス等のトップ集団です。前方があまり良くなく、右海面が伸びてきていることに気付き、ヘッダーで周りより早めに返して右海面を取りに行くことの決めました。
ところが!!風は回るわ、途中中間のデッドポイントで艇は止まるわで、右側のブローに届くまでに相当なロス。右から左から先行かれ、とんでも無いことに!!
2下、3上で多少戻したものの、結果はさんざん。
レース委員会の意地とも言える11時に予告信号が上がり、6レース目が始まります。
いきなりの黒旗……。さすがにオールクリアでスタート。
風は多少落ちるも、1レースと同じようなパターン。
やはりいまいち艇速が上がらない我が艇は帆走りがさえず、また、良い風、海面を掴み切れずに結果は不本意に終わりました。
後で関西のクラリスチーム、中野誠選手に、「どうしたの?途中良い位置に来てて、頑張ってるなぁ、って思ったのに。」と言われる始末。この日2本とも、中野艇はトップでした。
総合成績は優勝シエスタ・ローザ(和歌山)、2位SANTAブラック、3位シエスタ・コスモス(和歌山)、4位サンラック(大阪)、5位SANTAグレーと上位5艇は全て関西勢。
各レースを見ると、10位以内の7艇程度を関東勢が占めるなど、地の利とも言える結果が多かったのですが、さすがシリーズともなると真に実力があるチームが残ると言ったところでしょうか。その中でも、SANTAグレーの5位は素晴らしいと思います。
通常の西宮で活動しているメンバーに関東メンバー2名を加えたとはいえ、基本的にオリジナルメンバーのままこの順位は驚異的です。
その他の福井勢はミラクルSANTA30位、SANTAキッズ40位。
西宮で1年間活動してきた我がミラクルSANTAチームにとって、最終的に西宮で仕上げた艇速や、展開を十分に生かすことが出来なかったとはいえ、前後の関西勢を見ると、やはり関西選手権の順位とほぼ同一。やはり様々な要素が絡むとはいえ、シリーズともなると順当に結果は出る物だと思い知らされました。
この大会の運営に関して述べさせていただきます。
敦賀に大会を運営した経験から、また、西宮KYCでのレースを経験してきたことから見て、ちょっとお粗末のような気がします。マークが小さく見にくいとか、運営のボート(本部艇、副本部艇)が小さく、フラッグが見にくいとか、そう言ったハードの面のみならず、風の振れに合わせてのマーク打ち換えや、コースの短縮などは全く行う気配はなく、スタートラインも公平とは言えない。さらにはいきなりの黒旗スタート等々の結果、9艇しかフィニッシュ出来ないレースがあったり。風の大きな振れや急な風の落ちなど、地元でも、この時期はあり得ない状態だったそうで、しようがないにしても、ちょっと疑問が残るところがありました。
そのような状況でありながらも、大会本部に対する抗議の数も、圧倒的に敦賀に比較して少なかったこともご報告すべきでしょう。
敦賀に続くこの19回大会に福井県勢が参加して、J協会に対する面目を保ちながら、敦賀での運営が誇りを持って語られることを実感しました。
その他の感想として。
J24クラスとなると、艇の輸送等々、準備が大変です。
艇体に関しても、十分な艇体コンディションを保つためにもメンテナンスにかかる時間と、費用は相当になります。
それら、レース以外にかかる部分を含めてキャンペーンを張る必要が出てきます。
今回出艇のSANTAキッズ、ミラクルSANTAは基本的にチームメンバーの持ち寄りにより運営されてきました。両艇ともに、全日本参加に十分なキャンペーンをおこなえてきたと思います。
今回の各参加艇、特に関西勢は再来年西宮で開催のJ24ワールド、世界選手権を見越したキャンペーンを始めています。私たちのチームの結果から見ても、自分たちのチーム力のみでレベルアップを図っていくことは難い状況下にあって、どのような方向でどのようなキャンペーンを行っていくかも、レース海面に意外の部分で、重要なこととなってくるでしょう。
しかし、何も上位に食い込むことだけがこのJ24クラスの楽しむではないことも付け加えておきます。
私自身、過去3回の全日本を経験していくうち、顔なじみになって、年に1度「お久しぶり!」の声を掛け合う仲間がいることは、大変楽しく、ヨットライフを有意義な物にしてくれます。
総合順位で丈夫に食い込まなくても、同じチームスタンスの仲間達と、それなりのレベルで勝ち負けを競うことも楽しみのひとつでしょう。
あらためてJ24クラスというヨットの、クルーザーレースのエントリークラスでありながら、実に奥深い、歴史あるクラスの魅力を堪能した4日間でした。武生ヨット連盟
ミラクルSANTA
竹沢 裕史