漆はご存知のとおり茶道と深いつながりがございます。
茶器・塗蓋はもちろん、松風の音をたてる釜の鳴り(ナリガネと呼ばれる鉄片が漆で釜内底につけられています)、茶碗の金直し(漆で継いで金粉を蒔いてあります)、またお正月の島台茶碗(漆で金・銀箔を茶碗に接着してあります)等々。
漆は一般に黒いものと思われておりますが、本来は飴色で透明な物です。
顔料を漆に混入して黒・赤等の漆になります。
漆の主成分はウルシオール C21H34O2 と呼ばれる液体で、その他には水とゴム質・含窒素物などが含まれています。
漆は洗濯物とは違い雨の日のような湿り気があればよく乾きます。
これは漆が水に含まれている多量の酸素を吸入して、ゴム質に含まれているラッカーゼという酵素の働きにより酸化作用が起き、液体から固体に変化し硬化するためです。
漆はいったん乾いてしまえば化学的にも安定で、酸アルカリに強い耐久性を示します。
(とぎだしまきえ) 漆地のうえに漆で文様を描き、その漆の乾かないうちに金、銀、その他の金属の鑢粉(鑢です りおろした比較的粗い微粉)をまいて乾かす。 この状態を「蒔放し」という。その上をもう一度漆で薄く全面を塗り固めよく乾かした後に、 木炭で水研ぎして文様を研ぎ出す手法。 日本特有の蒔絵はこの手法をもって平安時代に始まり盛んとなった。
(ひらまきえ) 漆で描いた文様に細かい金属粉を蒔き、その部分だけを摺り漆固めをして乾かし磨き上げる 手法。 平安時代末期に始まり、鎌倉、室町をへて順次発達し流行した。
(たかまきえ) 平蒔絵の下を前もって漆や、炭粉、錫粉などで盛り上げた立体的、華麗な手法で、鎌倉から 室町時代に完成した。
(ししあいまきえ) 高蒔絵と研出蒔絵とを併用したものをいう。
(ふんだめ) 金や銀をびっしり地蒔きしたもので、平安期には沃懸地と呼ぶ。
(ひらめじ) 扁平の金銀粉をまばらに地蒔きして研ぎ出す法。
(なしじ) 薄く扁平の梨地粉を蒔きつめ、透明度の高い漆を何度も塗り込み、表面を研いで梨の肌を思 わせる仕上げとする。
透漆と漆用顔料を練り合わせたもので文様を描く。
(らでん・あおがい) 鮑貝が多いが、夜光貝、蝶貝などを文様に合わせてヤスリや小刀で切って用いる。 厚貝を埋め込んだものを螺鈿と呼び、薄貝を張り上塗りして研ぎ出したものを青貝細工と呼 ぶ。
(ちょうしつ) 漆を百回前後も塗り重ねて文様を彫刻したもので、日本では朱のものを堆朱、黒のものを堆 黒と呼ぶ。
(かまくらぼり) 木彫りの文様の上に黒や朱の漆を塗ったもので、珍重された中国の堆朱を模して鎌倉で作り 始めたという。
(ちんきん) 塗面に刀で文様を線彫りし、摺漆して金箔を押し入れたもの。
文様を線彫りして色漆を塗込み、乾かして磨き上げたもの。
参考文献
小田・中村・池田 共著「茶入・棗・茶杓」 主婦の友社
野村瑞典 著 「茶道具の基礎知識」光村推古書院
松田権六 著 うるしの話 岩波新書
淡交別冊 「漆の美」 淡交社