茶道具に銘はつきもので、銘については大体次のように分類出来ます。
「松島」 葉茶壷 「園城寺」 利休竹花入
☆ 物語・謡曲 「ふたりしつか」 宗旦茶杓 「俊寛」 長次郎黒茶碗
☆ 歌・句 「作物茄子」 茶入 (自作の歌もこの範疇に入る)
☆ 中国故事 「蟻とおし」 覚々斎茶杓 「回也」 藤村庸軒香合
☆ 季節 「しぐれ」 金森宗和茶杓
☆ 名所・旧跡 「有馬山」 小堀遠州茶杓
「猫の鼻」 山田宗ヘン茶杓
削った茶杓が長すぎたので寸をつめたいと考え、つめたい…冷たい…猫の鼻 と閃き銘となった。
「筒井筒」 井戸茶碗
秀吉の前で自慢の井戸茶碗が割れたのを見た細川幽斎がその場を取り繕って、「筒井筒五つにわれし井戸茶碗 咎をばわれに負ひにけらしな」と伊勢物語の歌をもじって詠んだことから。
☆ 所持者による銘 「珠光文琳」茶入 「三好粉引」茶碗
☆ 墨跡・消息などに与えられた銘 「破れ虚堂」掛物
その外に 発見(見出された)された場所
所蔵寺院名(真如堂・本能寺 等)
所蔵庵名(遠州の在中庵肩衝・転合庵面取 等)
また茶杓では製作年月・贈り主の名前・製作場所 などがあります。
所持者による銘には道具を所持していた人の名前(茶人・数寄者・数寄大名 等)をつける例が多く見られます。
○唐物茶入
肩衝 久我・宮王・松屋・日野・安国寺・佐伯・油屋・・
文琳 珠光・岩城・九鬼・田村・大文字屋・織田・・
茄子 国司・松本・宗悟・茜屋・京極・紹鴎・・
丸壷 利休・金森・土田・寺沢・青山・石河・・
○瀬戸肩衝 生駒・本阿弥・筒井・金森・浅野・・
歌銘について
小堀遠州(遠州が選定した名物を中興名物という)は本歌といって、先づ類例別に最もよいものを選定し、それに歌をつけて命銘し類例のものを何々手としました。 この歌を選ぶに当っては、形や釉からくる言葉を歌の語に合わせています。
遠州以前にも茶人はしばしば古歌を用いています。
参考文献
《原色茶道大辞典》 淡交社
《茶道具の基礎知識》 光村推古書院
《茶の道具》 読売新聞社