bP2 焼物の傷・欠点


茶碗で銘「東海道」というものがあります。
そのこころは「五十三次」…「五十三継ぎ」それほど多くの破片を寄せ集めて修理した呼び継ぎの茶碗で秋の茶会にはおもしろいものです。
いかに物を大切にしたかよくわかります。

◎傷のいろいろ

ホツ    … ごく小さなカケ(何ミリ単位)。                 
ソゲ    … 口縁など原形をこわさないほどに薄くカケ落ちている。       
ハマグリ  … 磁器などのソゲで同心円状の段が見える。             
釉ハゲ   … 釉薬部分だけが剥がれていて胎土はそのまま。           
ニュウ   … 釉、胎土ともにヒビ割れている状態。                       
釉のみのヒビ割れは「貫入」「地貫」といってキズとみなされない。 
トリアシ  … 胴央や底などに中心から放射状に出たニュウ。           
シミニュウ … ニュウに沿ってシミの拡がったもの。               
内ニュウ  … 器のエッジに出ていないニュウ。                 
Y字ニュウ・クマデニュウ・?ニュウなど…各々の形をしたニュウ。        
ハナレキズ … 器体の一部がいったんはなれてまたつなげられている。ともつぎ。  
マド    … 胴央などがポッカリ空いたキズ。                 
水ヌキ穴  … 底部にあとから穴が開けられている状態。                     
カセ    … 長い間土中、水中などにあってで釉の表面が風化し、艶を失ってガサガサした状態。スレ・スリキズ…砂などで陶磁がこすれた時に表面にできる。 
虫喰い   … 釉薬と胎土との収縮率が違うため起こる釉ハゲ。厳密にいえばキズではない。   

◎先天的な欠点
山キズ   … 窯の中または窯へ入れる前に受けたヒビやカケ。       
(窯キズ・窯ワレ・山ワレ)
底ワレ   … 山キズの中で特に多く見られるもので、壷、瓶の底、茶碗、鉢、皿の高台の中などが裂けているもの。
フクレ   … 胎土の中に入っていた空気が、熱で膨張してせんべいのコブのようになった状態。 フリモノ  … 窯の中で灰や土の粒や窯の天井の一部などが、壷の肩や碗皿の見込みに降った状態。
クッツキ  … 窯の中でくっついた他の器物の一部。
ケムリ   … 釉薬もの、特に青磁の青い釉面や磁器などで白くあるべき器肌に、黒みを帯びた色が霞のように表れているのをケムリが入っているという。


◎他の欠点
二度窯   … ニュウを消したりカセを隠すために、もう一度窯の中に入れて焼き直したもの。   あと絵   … 色絵などの上釉が剥落したものを、後代再び色釉をのせ窯に入れて焼き付けたもの。
アワセ   … 蓋物などでちょうど径の等しい別の物を探し、上下を合わせること。  
スリオトシ … 口縁部や高台部分などにキズが目立つ場合、そのキズの深さまで全体をスリならすこと。


伝統的な直し・繕いの種類

 
<陶片で補うもの>
共継ぎ ‥ 欠けてしまった部分そのものの陶片を接着して直す方法。
呼継ぎ ‥ 欠けた部分の陶片がなくなっている場合、似たような陶磁片をカケ部分の形に整えて補う方法。

<他材で充填するもの>
◎漆直し  
金直し・銀直し・蒔絵直し・漆色直し・漆共色直し
<その他> 
☆鎹直し   ‥特殊な直し方で直接磁器に鎹を打って止めてあります。
☆焼継ぎ直し‥ニュウなどに低火度で溶融する透明ガラスをかけて接着したもので、きわめて堅牢である。 
☆近代手法による直し‥エポキシ樹脂などの各種合成樹脂を使い共色直しをしている。
この手法による一番の弱点は経年変化である。
紫外線による塗料の褪色や変色、下地の縮みによってできる隙間など、これらの状態は漆直しがやつれたときのように自然な風情がなく、著しく美感を損ねる。
鑑賞陶器のようなもので傷が邪魔して鑑賞の妨げとなる場合に共色直しは有効である。
しかし化学的な塗料を使用するので食器類、抹茶碗、煎茶碗など直接口に付けるものには漆直しを施すほうが良い。                 


 参考文献

 《原色茶道大辞典》      淡交社
               出川直樹著  「やきもの蒐集入門」  新潮社
               


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